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2016年 議事録

2016年 議事録


 

第192回国会 農林水産委員会 第4号   平成二十八年十二月十三日

○畠山委員
日本共産党の畠山和也です。
本題に入る前に、水産庁に一問伺いたいことがあります。水産業共同利用施設復興整備事業について確認いたします。
この事業は、東日本大震災で甚大な被害を受けた水産業の復興へ、水産業の共同施設や加工流通施設などの整備に国と市町村で八分の七を補助する仕組みになっています。そのような交付金事業です。中小企業庁のグループ補助金もそうですけれども、この事業も返済の時期を迎えてきている中で、震災前と比べて売り上げが戻っていない業者さんも少なくない中、返済猶予の声が上がっています。これは要望をしておきたいと思います。
聞きたいのは、金融機関からこの業者さんなどが運転資金を調達する際に、この事業で整備した施設が担保となるのかどうかということです。
石巻市で聞いた事業者からは、基本、八分の七が国費なので、補助残部分、つまり八分の一で、自分で投資したところでしか担保できないと聞いているということでした。ただでさえ、今述べたように販路が回復しておりませんし、サンマなども例年より小さくて、魚価も高くて、魚の確保にも苦労しているという実態を聞きました。その上に必要な運転資金を借りられないということになれば、返済どころか、経営への深刻な懸念も予想されます。
そこで、補助とされているこの八分の七の部分は本当に担保とできないものだったのかどうか、この点を水産庁に確認したいと思います。
○佐藤政府参考人
お答えいたします。
今、畠山先生の方からお話ございました事業でございますが、国の補助事業等によりまして施設を整備した場合に、その施設を担保に供する場合については、これは補助金等適正化法に基づきまして、農林水産大臣による財産処分の承認が必要となっております。
それで、この農林水産省の承認基準でございますが、従来は、補助目的の遂行に支障を及ぼさない観点から、最低限必要となりますいわゆる補助残融資の場合のみを認めていたところでございますが、平成二十五年十二月に当該基準を改正しまして、補助部分についても、補助目的の達成を図る観点から、事業の継続のために必要な運転資金の融資を受ける場合についても、本来の補助目的の遂行に影響を及ぼさないことを条件といたしまして、担保に供することを認めることとしたところでございます。
今後とも、関係市町村から承認の申請があった場合には、この承認基準に沿いまして適切に対応してまいりたい、こんなふうに考えているところでございます。
○畠山委員
今答弁がありましたように、きちんと申請がされて、大臣許可を受ければ可能であるという答弁です。今述べたように、現地は返済も含めて大変御苦労されている状況にありますので、この周知をさらに徹底していただきたいと思うんですね。必要な運転資金の確保には相当御苦労されています。
ただ、こういう補助金で建てた設備をこのように担保とするには許可でやれますけれども、税金は容赦なくかかってくるということもありますので、私もこれはさらに調べて提起したいと思いますが、改善をぜひしていただければということを求めておきたいと思います。
それで、本題である畜産、酪農に関して質問を行います。
二〇〇八年度に配合飼料価格が上昇しました。このときに飲用向け、加工原料乳向けともに乳価の引き上げが実施されて以降、プール乳価は上昇基調で推移してきました。二〇一五年度ではキロ当たり百・八円という状況です。
朝、議員会館の方に六日公表の農業経営統計が入っていまして、これも見てきましたが、一経営体当たりの農業粗収益及び農業所得とも増加しているんですね。
乳価の上昇はもちろん酪農家にとって喜ばしいことではありますが、この同じ期間、二〇〇八年から二〇一五年の間に、乳用牛の飼養頭数は百五十三万三千頭から百三十七万一千頭へ十六万二千頭減少、マイナス一〇・六%となりました。同じように、飼養戸数は二万四千四百戸から一万七千七百戸と六千七百戸の減少、実にマイナス二七・五%という大幅な減少です。
乳価は上昇してきているのに、必ずしも経営の安定や継続に結びついていない現状があるかと思いますが、この原因を、大臣の認識はどうかということを伺いたいと思います。
○山本(有)国務大臣
まず、乳価上昇にもかかわらず離農が進行しているという点でございますが、酪農経営からの離脱要因に関する二十七年度調査というのを行いましたところ、高齢化、後継者問題が四〇・五%、これが最も多かったわけでございます。次に、経営者の事故、御病気等でございますが、一六・八%、他畜産部門への転換一二・三%、負債問題七・〇%、将来不安六・四%、こうした問題がのしかかり、離農が進行しているという調査の結果でございました。
そして、飼養戸数、飼養頭数が減少しているという点でございます。この点につきましては、先ほど御指摘いたしました高齢化、後継者不足でこうした経営からの離脱が進行し、飼養戸数が減少しておりまして、これに伴い飼養頭数も減少しているというような状況になっているというように思っております。
○畠山委員
経営のところにちょっと視点を当ててみますと、先ほど、朝いただいた統計で見ると、推計家計費は逆に減少しているんですね。ですから、一定の高乳価が安定して必要であることは間違いないですし、再生産可能な補給金単価になっていなかったのではないかということも考えられます。加えて、日豪EPA、TPP、そして日・EU・EPAなど将来不安を増すような現実を前に、後継者などについても、先行きが不透明ということを背景として減少が続いているのではないかと思います。
そこで、内容に入りますが、加工原料乳生産者補給金の算定方式について、その見直しの中身を伺います。
今回見直しでは、補給金の対象を生クリーム等まで拡大して、これまで加工品ごとに分かれていたものを、単価を一本化するということになります。その補給金単価算定方式の検討会を読みますと、見直しの初年度となる来年度については、加工原料乳の生産地域における、ここなんですね、生乳の再生産を確保するという観点から、生産コストと取引価格との差を埋める不足払いで行って、まずそれを基準にして、翌年度以降は今行っているようなコスト変動率の方式で行うなどの検討がされてきた。
この再生産の確保がやはり重要な点だと思いますが、これは事務方で結構ですけれども、検討会でどのようにこの点は議論がされてきたか、紹介してください。
○枝元政府参考人
お答え申し上げます。
御指摘ございましたとおり、補給金制度、二十九年度から制度対象に生クリーム等の液状乳製品を追加して補給金単価を一本化することとしておりまして、生産者また乳業、学識経験者等から構成されます補給金単価算定方式等検討会で御議論また御検討いただいてまいりました。
御指摘がございました再生産の確保という観点からいたしますと、補給金の単価につきましては、加工原料乳生産者補給金等暫定措置法第十一条の二におきまして、「生産される生乳の相当部分が加工原料乳であると認められる地域における生乳の再生産を確保することを旨として定める」というふうに規定されておりまして、同検討会におきましても、この法律の規定に則して、初年度単価につきましては、生産コストから乳製品向け乳価を引くということを基本として設定するということが確認されました。
○畠山委員
初年度の設定において、かつてコスト変動率方式の前にやっていた不足払いの中身で基準をつくるということは、私は大事なことだと思うんですね。やはりそういう再生産できるだけの生産コストを賄うという基本的な考え方が必要だと思いますし、それを通じて、その検討会での委員からも、持続的な酪農経営を行うこと、つまり設備投資が可能な水準であるかどうかということを指摘もしているわけです。きちんと投資が引き続き行われるような設定が求められるわけです。
そこで、先日、実際に十勝地方に私も行きましたが、酪農家から聞いたときに、きょうも議論に出ましたけれども、家族労働費について安いんじゃないかなという指摘は受けました。御存じのように三百六十五日働く酪農家で、その実態をしっかり算定してくれという要望ではあるんですが、つまり、生産コストの評価に当たって、これは実態にそぐわないということにならないかという声が多数あるんですね。
これはちょっと大臣の方に確認したいんですが、家族労働費を単価の算定に当たって十分に踏まえる、こういう観点が必要だと思いますけれども、見解はいかがでしょうか。
○山本(有)国務大臣
御指摘のとおり、家族労働費、これは、酪農が長時間労働あるいは休日出勤が常態化していることも十分考慮しなければなりません。
新たな算定方式やこれに基づく補給金単価等につきましては、今後これらの現場の意見も踏まえて、食料・農業・農村政策審議会の意見も聞きながら適切に決定をしたいと思っております。
家族労働費につきましては、これまでも、補給金単価の算定に牛乳生産費統計の結果をそのまま用いていくというのではなくて、酪農労働の質、強度、経営規模等に着目して、酪農経営の実態に即したものになるようにしなければなりません。そこで労賃単価を評価がえしてきたところでございますので、引き続き酪農の労働実態を踏まえた対応をして、統計の数字ではありますけれども、できるだけ高い単価を打ち出すような環境を整えたいというように思っております。
○畠山委員
ぜひお願いしたいわけですけれども、酪農家に十勝で聞いたときに、ちょうど二十二歳だというヘルパーさんがいたんですよ。それで、いろいろなお宅をこうやって回れるから非常に勉強になるんだという前向きな意欲あるお話だったんですね。では、今後独立して頑張る気はあるのかいと聞いたところ、少し間があって、大変ですからねということをやはり一言言って、なかなかその先の言葉が出てこないんですね。非常に印象的でした。
機械化とか外部化とか、いろいろな過重労働の解消は政府として推奨していますけれども、同時にやはり、先ほど冒頭に所得の問題を述べましたが、それに見合う収入をきちんと確保するということも大きなポイントだと思います。過重労働を解消しようとして機械化を進めて、それが負債の返済のため労働強化になったら、これぞもとのもくあみとなってしまうわけですから、十分な補給金単価となるよう改めて求めておきたいと思います。
乳価の決定について、あわせて伺います。
この間、北海道を中心に、根釧地域あるいは十勝を含めた家族経営の酪農家の皆さんのお話を聞いてきました。乳価がキロ百円を下回ってくると再生産がやはり難しくなるというお話で、ある酪農家は、乳価が五円下がれば夫婦二人の年間の生活費の方が全て消えるというお話でもありました。
それで、改めて経過を調べましたけれども、二〇〇六年から二〇〇七年に飼料価格が高騰して、当時、平成の酪農危機と言われるほどとなって、乳業メーカーが一リットル当たり乳価を十円引き上げを行ったことがありました。その際、小売側が猛反発したという報道も当時のものを見受けました。
それで、乳業メーカーと小売側、とりわけ量販店との価格交渉力の差をどうするかということは課題だと思います。量販店などの不公正取引については徹底した監視が必要であると思いますし、この点は求めておきたい。
そこで、私が聞きたいのは、売り手側の方の価格交渉力の問題です。その強化が重要であるし、指定団体制度の役割という点でも改めて議論が必要だと思います。
指定団体制度が乳価の交渉においても大きな役割を発揮していると思いますが、大臣の認識を伺います。
○山本(有)国務大臣
現在、指定生乳生産者団体に指定されております農協、農協連は、農業協同組合法に基づき、スリム化、効率化、共同販売の実を上げる乳価交渉の強化、こうしたものを図りつつ、今後とも機能を適正に発揮するということが重要でございます。
競争力強化プログラムにおきまして、補給金の制度改革とあわせて乳価交渉についても規定しておりまして、「真に生産者のためにあらゆる手段を尽くした交渉へと改革する。」あらゆる手段を尽くして交渉しろ、交渉経緯や結果についての生産者に対する説明責任を十分果たすように、透明性をここの価格交渉においては確保しなさいという改革の指針が合意されております。さらに、酪農関連産業の構造改革や酪農家の働き方改革等を進めるというようにしております。
総合的なこうした措置によりまして、生産から流通までの各段階において真に酪農家のためになるよう各般の課題に対応して、酪農家の所得向上と酪農業の成長産業化につながる改革をしていこうという合意でございます。
そんな意味で、交渉力、こうしたものを逆に指定生乳団体の皆さんが存分に発揮することを期待しておるところでございます。
○畠山委員
現在、これまでにやりました指定団体制度の役割、価格交渉力の意義ということをお尋ねしたつもりではあったんですけれども、大臣、その点、先にそういうことを今後進めるんだという話でありましたが、これまでの役割について、もう一度ちょっと明確に答弁していただけますか。
○山本(有)国務大臣
指定団体と乳業メーカーの交渉で、生乳の需給状況、生産コストの変動をおおむね反映することによって生乳の取引価格は決定されております。そうした近年の酪農家の受取乳価というのは、平成十九年からの御指摘の配合飼料の価格高騰を受けまして、二十年度に飲用、乳製品向けとも生乳の取引価格は引き上げられております。その後も上昇傾向であることは御存じのとおりでございます。
現行の指定生乳生産者団体たる農協、農協連が、中間流通コスト、物流コスト、こうしたものの削減策とあわせて乳価交渉力を強化していただいて、今後ともその機能を適正に発揮していただけることが生産者にとってかなり重要なウエートを占めていくだろうというように思っております。
○畠山委員
質問があるので、先に進みたいと思いますけれども、機能の発揮ということを引き続きさらに強めてという答弁ではありますが、一括集荷、多元販売という形で生産者側が組織されているからこそ交渉力を持つことができたということは確認しておきたいと思うんですね。
しかし、今般の指定団体制度の見直しでは、一定の条件のもとで、補給金を支給する交付対象を拡大するとしています。それでは生産者側がばらけるということになりはしないのか。つまり、指定団体制度の今ある価格交渉力が結果として弱まることにならないのか、疑問があります。いかがでしょうか。
○山本(有)国務大臣
いわば生産者が、全量買い取りに集荷、出荷するよりも、さらに一部分だけ自分で創意工夫した商品をつくるなど、生産者の一つの経営判断みたいなものを重要視することによって、ひいては、指定生乳生産者団体も、それに呼応しながら新しい酪農の経営のあり方というものに進んでいくことによって成長産業化できるのではないかということを期待するところでございます。
○畠山委員
ちょっと、私の疑問、懸念に対して、なかなか正面からの回答になっていないような気はするんですけれども。
このように指定団体で価格交渉力ができたのは、この間の日本農業新聞でしたかにフランスから来られていた方のインタビューもありましたけれども、組織化された生産者がいるからこそ価格交渉力があるということだろうと思うんですね。ですから、それが結果として分散するようなことであるならばどうなるのかということは、根源的に疑問を持つわけですよ。
ですから、ちょっと交渉力の問題から引き続き議論をしていきたいと思いますが、あわせて、需給の関係からも指定団体の役割をきょうも確認しておきたいと思います。
現状では、生産される生乳の量については、需給の状況等を勘案して、全国及び地域ごとに生乳の目標数量が設定をされています。その達成を図る仕組みによって、生乳生産量は自主的に管理がされています。こうした自主的な計画生産を通じて需給を安定させて、乳価も安定を図っている側面が指定団体にはあると思います。
改めて、見直しでは、拡大される交付対象団体にも、飲用、加工用の年間販売計画あるいは年間販売実績を国に報告するような仕組みを求めることになっているようです。それは、国が販売計画や販売実績に関与するということになるのではないのか。国が計画生産に関与するということになるのか。
ちょっと理論的な問題にもなるかと思いますが、それでは、先ほど述べた現行の自主的な計画生産の仕組みとの関係はどのように整理されるのか、この点の答弁をいただけますでしょうか。
○枝元政府参考人
お答え申し上げます。
今回の農業競争力の強化プログラムにおきましては、今御指摘ございましたとおり、補給金の交付対象が広がりますけれども、年間の販売計画の仕組みが飲用向けと乳製品向けの調整の実効性を担保できるようになるものということを考慮して、補給金を受給しようとする個別の生産者、また、生産者が例えば農協等の指定団体等に委託を行う場合にはその農協等が、飲用乳と加工原料乳の年間の販売計画や販売実績等を国に報告するということでございまして、これはあくまでも飲用向けと乳製品向けの調整の実効性の担保という観点でございます。
これ自体は、生産者または指定団体が現在自主的に行っている取り組みについて言及しているものではないというふうに考えてございます。
○畠山委員
いずれにしても、見直しの内容が具体化されるとすれば、いわゆるアウトサイダーが増加し、指定団体制度の機能が結果として弱められていく危険があるのではないか、そのような懸念を持ちます。
生産者側の価格交渉力が低下して、かつ需給調整まで混乱するような見直し自体、するべきでないということを強調しておきたいと思います。
時間の関係もありますので、畜産、酪農とTPPあるいは日・EU・EPAとの関係を最後に伺います。
TPP協定と関連法案が先日参議院で可決されましたが、御存じのように、トランプ次期米大統領からは協定からの離脱が宣言され、発効が見込めない現状となっています。
そこで聞きたいのは、牛・豚マルキン関連法案です。
参議院で、総理が審議の中で、国内対策の執行停止は想定していないという答弁をしています。そうであるならば、この牛・豚マルキンについては直ちに実施できる、すべきでないかというふうに思います。TPPの発効を施行日とするということではあるんですが、TPP発効を待てば、新たな拡充ができないという縛りに逆になってしまうのではないでしょうか。
現場ではこの牛・豚マルキンの充実は言うまでもなく求められていることでして、施行日をTPP発効日ではなく、直ちに実施すべきであるということを求めたいと思いますが、大臣の見解はいかがですか。
○山本(有)国務大臣
御案内のとおり、体質強化策と経営安定策に分け、そして、TPPの関連政策大綱、つまり国内対策におきましては、この牛・豚マルキンの制度拡充、こうしたものは、TPP協定による関税削減の影響に対する措置として制度設計されております。仮に国内産の牛肉、豚肉の価格の低下が生じた場合でも長期にわたる経営安定が図られるように措置するという制度、仕組みでございますので、実際にその影響があらわれる協定発効日から実施するということに対して、我々は、TPPの発効をその条件とするということに変わりは今のところありません。
しかし、予算措置で今まで八割でございます。そんな意味で、今後、いかような環境変化や、畜産、酪農農家の皆さんの経営の状況が変化するかもしれません。それを今から断定的に申し上げることはできませんけれども、今の現状におけます政策の整理としましては、TPP発効の日ということでございます。
○畠山委員
野党四党では、TPP特別委員会で、ここの部分をTPP発効の日とはしないということでの法案も出しました。改めて、そういう立場での転換を求めておきたいと思います。
EUとのEPAについても一言伺っておきます。
年内の大枠合意に向けた報道がされていますが、これも総理が、TPPの承認意義について、日本がTPP並みのレベルの高いルールをいつでも締結する用意があることを示していくための批准なんだということを繰り返し参議院では述べていました。
そこで伺いたいのは、EU側が日本に対して、チーズ、乳製品ですね、豚肉などなど、加工品も含めた関税削減が要求されて、一部でTPP水準を超える市場開放を要求しているとも伝えられています。日本の基本的なスタンスが、きょうも議論がありましたが、わかりません。特に農水省の立場が全然わかりません。農産物分野の市場開放でいえば、総理が言うような、今、EUとの交渉はTPPレベルがスタートラインになっているかどうか、明確に答弁していただけますか。
○山本(有)国務大臣
日・EU・EPA交渉の具体的な内容につきましては、現在交渉中でありまして、お答えは差し控えさせていただきたいと思いますし、また、農林水産省の立場でございますが、これはあくまで、貿易、生産流通実態を一つ一つ勘案して、そのセンシティビティーに配慮しながらしっかりと交渉に取り組んでいくこと、これを念頭に頑張っていく所存でございます。
また、総理がTPP並みのレベルの高いルールとおっしゃるわけでございますが、これは、TPP協定において結実いたしました労働や環境などについての高いレベルのルール、これが今後の通商交渉におけるモデルとなることが期待されるという御答弁だというように思います。
一方、関税の分野、特に農林水産物、農林水産品について、それぞれの品目の貿易、生産流通実態等を一つ一つ、先ほど申し上げましたように、勘案しつつ、センシティビティーに配慮しながら交渉するということを常に念頭に置きながら、厳しい交渉をしてまいる所存でございます。
○畠山委員
配慮するというのであれば、聞きたいわけですね。TPPでいえば、除外や再協議がないという答弁でもありました。これまで日本が結んだ二国間協定では除外や再協議は確保されてきたわけでありまして、今回、では、乳製品や豚肉などは重要品目として除外や再協議扱いとして交渉されているのか、または農水省としてそのようなことを述べているのかどうか、答えられますか。
○山本(有)国務大臣
現在の日・EU・EPA交渉、どのようなやりとりを行っているかというその交渉の具体的内容についてはお答えは差し控えさせていただきますが、繰り返しになりますけれども、農林水産品につきまして、貿易や生産あるいは流通実態、一つ一つ勘案しながら、センシティビティーに配慮しながら、しっかりとした交渉になるよう取り組んでまいりたいというように思っております。
○畠山委員
時間ですので終わりますが、国会や、とりわけ農家、国民に対して、必要な情報や、今、除外や再協議を含めたことの態度もはっきりしない中で、TPPをベースにした譲歩を進めるような交渉は認められないということを述べて、質問を終わります。

第192回国会 決算行政監視委員会 第2号 平成二十八年十一月二十五日

○畠山委員
日本共産党の畠山和也です。
二〇一三年度、平成二十五年度決算にかかわり、そのときに行われていました木材利用ポイント事業とTPPの関係について伺います。
木材利用ポイント事業についてきょうは伺っていきたいわけなんですけれども、御存じのように、丸太の関税ゼロの時代から、林業においては苦難の時代が続きました。近年は国産材供給の努力が強まりまして、二〇一五年の木材自給率は三三・二%まで回復してきています。ですが、輸入材の比率は七割近く、依然として高いということになりまして、輸入上位三カ国を見ればカナダ、マレーシア、アメリカで、これはいずれもTPPの参加国ということになります。
そこで、この事業にかかわる質問の前に、二つ大臣に確認したいと思います。
まず、仮にTPPが発効するとして、このような輸入上位三カ国が上位を占めているわけですから、日本の林業は守れるとお考えでしょうか。まず確認いたします。
○山本(有)国務大臣
林産物につきまして、累次の貿易交渉の結果、現在の関税率は一〇%以下となっておりますが、今回のTPP交渉によりまして、合板、製材等につきまして長期の関税撤廃期間の設定ができました。そしてまたセーフガードを確保したことでございまして、TPP合意によります国内への影響は限定的というように見込んでおります。
そのような交渉結果でありますけれども、長期的に見ますと、国産材の価格の下落、その懸念もなしとしないものですから、まず大規模、高効率の加工施設の整備を進める、そして原料供給のための間伐、路網整備、こういったものを進めることによりまして、川上から川下に至るいわゆる体質強化策を講じていくこととしております。
このような、交渉で獲得した関税撤廃期間とセーフガードの措置、さらに体質強化策、こういったことで、生産コストの低減効果によりまして採算性が確保され、国内林業の生産活動や合板等の国内生産量は維持されるというように見込んでおるところでございます。
○畠山委員
そこで、今大臣の答弁もありましたセーフガードについて一言、これも確認しておきたいと思います。
ただ、改めてカナダやアメリカなどを見れば、カナダとは二国間林業委員会という機関がつくられるんですね。その点検項目に日本のセーフガードの必要性とありますから、この議論で廃止が向こうから言われる可能性も否定はできないと思います。
また、何より、輸入第三位であるアメリカとはセーフガードはありません。これで、今大臣が述べたような、国産材について維持できる保証があるのかということがやはり問われるんですね。
そこで、もう一つ確認します。
アメリカとの関係では、なぜセーフガードはなかったんでしょう。要求したんでしょうか、しなかったんでしょうか。
○山本(有)国務大臣
合板等に係るセーフガードの設定の有無につきましては、まず輸入量の多いカナダ、マレーシア、ベトナム、ニュージーランド、チリに対してはセーフガードを措置する一方で、それ以外の国につきましてはセーフガードをいたしませんでした。したがいまして、御指摘のアメリカもございません。というようなことでございまして、この交渉過程、さまざまあると思いますけれども、輸入量等、総合的判断の上で、これに対してはセーフガードを措置しなかったというように考えておるところでございます。
○畠山委員
国産材などの利用に当たっては、これまでもですけれども、米国などからさまざまな圧力があったことが反映していると思うんですね。
そこで、冒頭に述べました木材利用ポイント事業制度について触れたいわけです。これは、平成二十五年四月一日から募集が始められて、一年半もの間に募集がされた期間のものでありました。
その目的は、次のように書いていました。関係者による地域材の需要拡大の取り組みを促進し、地域材需要を大きく喚起する対策として、地域材の利用に対してポイントを付与し、農山漁村地域経済全体への波及効果を及ぼす取り組みへの支援を行うとあります。ポイントがたまれば地元の農林水産物や商品券などとも交換できるということで、実績も聞きましたけれども、かなり評判がよかったというふうに聞いています。
ですが、地域材促進を目的と掲げていながら、年度途中から外材も対象材として見直されていました。これはなぜか。理由をお答えください。
○今井政府参考人
お答えいたします。
今御指摘がありましたように、木材利用ポイント事業ですけれども、平成二十五年から、地域材の需要拡大の取り組みを促進し、農山漁村の振興に寄与することを目的として実施した事業でございますけれども、その対象となる地域材につきましては、まず一つは、資源量が増加しているものとしてあらかじめ定められました杉、ヒノキ等の樹種のほか、本制度を運営する委員会において、資源量が増加しており、事業の目的に照らして適切と認められる、そういうものも追加できるというふうにされておりまして、当初から国産材、外国産材を問わず本事業の対象となっていたものでございます。
そういう事業の枠組みの中で、事業の開始後に諸外国からの樹種追加の申請がありまして、審査の結果、米国産のベイマツ、オーストリア、スウェーデン、フィンランド産のオウシュウトウヒ、スウェーデン、フィンランド産のオウシュウアカマツ、そしてニュージーランド産のラジアータパイン、これが対象樹種に追加されたという経緯があるというものでございます。
〔委員長退席、石関委員長代理着席〕
○畠山委員
途中からそのようなさまざまなものが出てきたのは、二〇一三年十二月三日の日本農業新聞にも経過が断面的に書かれているんですね。WTO物品理事会でカナダとEU、米国などから外国産材を差別しているとの主張があって、それを受けてのことというふうに書かれておりました。ただ、制度設計も、今答弁がありましたように、その他の木材も最初から対象とするような書きぶりをしているというのは承知しています。
このポイント事業なんですけれども、効果検証の結果の中で次のように書いてあります。事業のために設立された地域協議会等を通じ、木材流通の川上から川下までの関係者が一堂に会して地域材利用を議論する場が生まれ、意見交換が活発になった。非常に前向きな評価をしています。
森林・林業基本計画二〇一六年では、豊富な森林資源を生かした産業の育成を図り、山村などの地方活性化に結びつけるとしています。国産材の供給量も、現在二千五百万立米から二〇二〇年には三千二百万立米、二〇二五年には四千万立米にと目標を持っています。ですから、この実現に向けて、今述べたポイント事業は有効な施策ではないかというふうに私も思うんですよ。それがこのような形で終わっていくというのは、非常に残念なことだとも思います。
ただ、このような国産材を活用する事業に対しては、内国民待遇に反するからと外国から意見がつけられるのが現状でありまして、しかも、今度はTPPとなれば、USTRが二〇一五年外国貿易障壁報告書でも、このポイント制度について、外国の製品を差別的に扱う補助金ではないかとの懸念が示されていて、かなり雲行きが怪しくなるわけです。
そこで、山本大臣に伺いたい。
TPPが発効したらこのような国産材を活用する事業ができなくなるとなれば、非常に私は残念なことだと思います。いかがでしょうか、どうしましょう。
〔石関委員長代理退席、委員長着席〕
○山本(有)国務大臣
御指摘の木材利用ポイント事業というのは、地域におきまして流通する木材であれば、国内産あるいは輸入材を問わず事業の対象としてきましたことは御案内のとおりでございます。WTOの協定におきます内外無差別の原則に基づいているというように考えられるところでございます。
TPP協定におきましては、このWTO協定上の内外無差別と同様の規定が置かれております。TPP協定が発効した場合でありましても、木材利用ポイントのような事業を実施することは問題ないというように考えているところでございます。
○畠山委員
USTRが、先ほど紹介したように、ただ差別的に扱う補助金ではないかと言われることはもちろん考えられると思うんですね。ですが、当時の新聞なども掘り返してみますと、与党の議員からも、そのようなことも考えた上で制度設計してきたから堂々と来年度もやったらいいという意見が、新聞紙上でも紹介はされておりました。
本当に地域材の活用は地元にとって強い願いでもありますし、政府の持っている計画を実現する上でも大事なことだと思います。ただ、米国は虎視たんたんと狙っているということだけは最後に一言述べておきます。
米国商務省の国際貿易局ホームページには、日本の木材製品の関税が全品目で即時撤廃だと堂々と掲げておりました。ですから、TPPで、今どうなるかわかりませんが、仮に発効すれば、木材輸入が進み、基本計画に逆行することは明らかでもあります。そもそも米国の離脱で発効見込みがない条約を国会が承認するのは国会の権威にかかわることではないかということはこの場からも述べておき、TPP承認案は断念すべきであることを一言述べておきたいと思います。
農水大臣、結構でございます。
後半は、JR北海道について石井国交大臣に伺います。
きのう通告していなかったんですが、きょうの記者会見でですか、八月から九月にかけての台風や大雨で鉄道施設に大きな被害を受けたJR北海道に対して、国土交通省は復旧費用を実質的に全額補助することを決めたというふうに報じられておりました。この中身について御説明ください。
○石井国務大臣
ことしの夏の台風により被災をいたしましたJR北海道の各路線の災害復旧につきましては、JR北海道から、被災状況の調査が終了していない区間を除き、災害復旧の総額は約三十八億円となる見通しとの報告を受けました。このうち、鉄道軌道整備法に基づく災害復旧事業費補助の対象となる事業費は約三十五億円となる見込みであり、その四分の一の約八・六億円を国で支援することとしたところであります。
また、これに加えまして、平成二十八年度から三十年度において実施予定のJR北海道の安全投資と修繕に対する追加支援の対象を拡充いたしまして、今回の台風等の災害に係る復旧に関連した設備投資の支援を行うことといたしました。
これによりまして、JR北海道が、補助制度の自己負担分や、規模が小さく補助制度の対象とならない工事も含め、災害復旧に必要な資金を確保できるように措置することとしたいと考えているところでございます。
○畠山委員
この後質問しますが、路線維持にかかわってJR北海道が厳しいことを述べておりますが、まず前提として、復旧は今あるスキームももちろんありますし、国が述べられたような支援で最優先に復旧されるということは当然のことであります。
そこで、本題のことで質問に続いていきたいと思います。
十八日、JR北海道は、十路線十三区間、キロ数にして千二百三十七・二キロメートルを自社単独では維持できないと発表しました。全路線の営業距離の約半分に当たります。通学や通院はどうなるか、観光にも打撃になるではないか、貨物輸送は大丈夫かなど、道内では多くの心配の声が上がっています。
JR北海道や北海道庁から国に対して、事前に相談や報告はありましたか。
○奥田政府参考人
お答え申し上げます。
JR北海道や北海道庁との間では、今回のJR北海道による業務範囲の見直しに関する問題に限らず、業務上の必要に応じて、日ごろより連絡をとり合っております。
そのような中で、十一月十八日にJR北海道が公表した内容については、JR北海道から公表前に報告を受けたところでございます。
○畠山委員
現状については、さまざまな形で国交省は把握できていたはずなんですよね。
それで、今ありましたように、八月から九月にかけての台風と大雨の被害で、相次ぎJR路線が崩落などを起こしました。町全体が浸水した南富良野町にある幾寅という駅は、映画の「鉄道員(ぽっぽや)」の撮影でも使われた駅でありました。交通拠点だけでなく、このように観光資源でもある根室本線のこの駅も含めて、今回の困難な対象に入っているわけです。
町長さんに我が党としてお聞きしたことがあるんですが、お父さんが国鉄の職員だったというんですね。北海道にとっての鉄道の役割は大きいし、今回のJRの発表はおかしいと述べられておりました。同じような声が全道各地にあふれています。
先ほど述べたように、困難と呼ばれる路線が全区間の半分にまで至る状況をこのまま認めていいのか。国としてどうするか、石井大臣に伺います。
○石井国務大臣
JR北海道は、地域の人口減少やマイカー等の他の交通手段の発達に伴いまして、路線によっては輸送人数が大きく減少し、鉄道の特性を発揮しづらい路線が増加している厳しい状況に置かれていると認識しております。
そのような中、JR北海道は、現状のままでは安全に必要な投資や修繕が行えず、鉄道の運行が困難となりかねないという問題意識のもと、単独で維持困難な線区については、当該線区の地域における持続可能な交通体系の構築のために、地域の実情に即して地域と協議を行いたいという意向を明らかにしておりまして、十一月十八日に、相談を行う具体的な線区について社長より説明が行われたところでございます。
国としては、今後、地域の皆様にJR北海道の置かれている厳しい状況について御認識していただけるよう、JR北海道に対し、各地域に丁寧な説明を行うよう指導してまいりたいと考えております。
また、こうした検討を行う中で、国といたしましても、北海道庁と連携しながら、JR北海道と地域との協議に参画をいたしまして、地域における持続可能な交通体系の構築のために何ができるのか、検討してまいりたいと考えております。
○畠山委員
協議会に国が参画されていくということですけれども、どのような立場で参画されるかが大事だと思うんですね。
地方自治体任せにしないで、国が根本的な総括を持ってそれに参加していくということが私は大事だと思います。なぜなら、このような事態に陥ったことはやはり分割・民営化のころからさかのぼって考えるべきだという声が北海道では広がってきていますよ。
三十年前から、赤字路線を北海道では抱えることは確実でありました。だから、国も経営安定基金を出して、その運用益の約五百億円で支援するということにしてきましたが、当初の利率の見込み七・三%から、政府の低金利政策もあって、だんだん運用益が減っていってしまったわけです。人件費、安全費用、設備投資などにそのしわ寄せが行ってしまったことが、この間の安全問題でJR北海道が国からも指導を受ける要因となってきたのではありませんか。そして、ことしの台風被害での追い打ちです。
大臣にもう一度伺います。政府が思い切った新しい枠組みを示さなければ進まないと私は思います。新しい支援の用意はありませんか。
○石井国務大臣
国は、JR北海道に対しまして、平成二十八年度からの三年間で総額一千二百億円の支援を行うこととしております。これにより、当面は必要な安全投資や修繕を行いながら事業を続けていくことができる見通しであります。
今後、JR北海道と地域との間で持続可能な交通体系のあり方について協議が行われる中で、まずはJR北海道から各地域に対して丁寧に説明を行い、各線区が置かれた実情に関する理解を得た上で、地域における持続可能な交通体系のあり方について関係者がともに考えていくことが必要であると考えております。
こうした検討を行う中で、JR北海道が置かれている状況を地域の皆様に認識していただくとともに、国といたしましても、北海道庁と連携しながら、これらの協議に参画をいたしまして、地域における持続可能な交通体系の構築のために何ができるのか、検討してまいりたいと考えております。
○畠山委員
同じような答弁になるので、では質問の角度を変えましょう。
なぜそのような形になっていくかといえば、これまでのスキームを続けてきた理由、前提として、目標が完全民営化にあるからではないのでしょうか。
JR北海道は、御存じのように、厳しい経営状況があるからこそ今の実態に置かれているわけで、それでも、先日JR九州が株を上場しましたけれども、JR北海道については完全民営化、株式上場をまだ国として追い求めるということなのでしょうか。だからこそ、そのようなスキームにこだわらざるを得なくなるのではありませんか。
○石井国務大臣
JR各社については、国鉄改革以来の累次の閣議決定に基づきまして、経営基盤の確立などの条件が整い次第、できる限り早期に完全民営化することを基本的な方針としております。
JR北海道につきましても、できる限り早期に完全民営化をする基本的な方針に変わりはありませんが、厳しい経営状況にあるため、これまで、経営安定基金の実質的な積み増しや設備投資に対する助成や無利子貸し付けなどの支援措置を講じているところでございます。
こういった状況のため、まだ上場が可能となるような段階には至っておりませんが、引き続き、国鉄改革の趣旨を踏まえ、JR北海道の完全民営化に向けた取り組みを進めてまいりたいと考えております。
○畠山委員
完全民営化の旗をおろせないから、今、自縄自縛になってきていると思うんですよ。
完全民営化へ、JR北海道に任せて経営状況を改めようというんだったら、今回みたいに独自で維持できない区間は廃線にしても構わないということになりはしませんか。それは政府の立場だということで確認してよろしいんですか。
○石井国務大臣
重ねてのお答えになりますけれども、JR北海道は、地域における交通手段の確保を前提に、鉄道を持続的に維持するための方策も含めて、地域における持続可能な交通体系のあり方について今後地域と相談を行っていく意向であると承知しております。
今後、JR北海道から各地域に対して丁寧に説明を行い、各線区が置かれた実情に関する理解を得た上で、地域における持続可能な交通体系のあり方について関係者がともに考えていくことが必要であると考えております。
こうした地域との相談を通じまして各地域の実情に適した持続可能な交通体系を構築することによりまして、鉄道が、その特性を発揮しながら、他の交通機関とも適切に役割を分担して、必要な公共交通サービスを提供できるようにしていくことが重要であると考えているところでございます。
○畠山委員
否定しませんでした。持続可能な交通体系を地元で議論していただきたいということの繰り返しだったと思います。
それこそ私も繰り返し述べますが、完全民営化の旗を掲げ続けるから、このように自縄自縛の状況に国が陥ってしまって、JRに対しては、経営状況の改善が必要だし、そのためには廃線もやむなしということにならざるを得ないのではありませんか。
ですから、もう新たな枠組みを考えるときだと思うんです。国鉄も、来年で分割・民営化から三十年になります。一方では株式上場をしているJRがあり、一方ではこのように路線切り捨てかもしれないというJRがあります。
ことしの五月にも伺いました。本当に分割・民営化がよかったのかという総括や見直しを政府としてやるべきときではありませんか。
○石井国務大臣
国鉄改革におきましては、全国一元的な経営体系を改め、適切な経営管理や地域の実情に即した運営ができるようにするとともに、旅客の流動実態に適合し、地域的に自然な形の分割となるよう、旅客流動の地域内完結度に配慮いたしまして、旅客部門は全国六社に分割をされました。
国鉄の分割・民営化によりまして効率的で責任のある経営ができる体制が整えられた結果、全体として鉄道サービスの信頼性や快適性が格段に向上し、経営面でも、JR本州三社に続いてJR九州も完全民営化されるなど、国鉄改革の所期の目的を果たしつつあるものと考えております。
一方、現在JR北海道が置かれている問題は、地域の人口減少やマイカー等の他の交通手段の発達により、路線によっては輸送人数が大きく減少し、鉄道の特性を発揮しづらい路線が増加している状況に起因するものでありまして、国鉄の分割・民営化によるものではないと認識をしております。
いずれにいたしましても、国といたしましては、国鉄改革の趣旨を踏まえまして、JR各社による鉄道サービスが引き続き各地域において求められる役割を果たしていくことができるよう努めてまいりたいと考えております。
○畠山委員
時間ですので終わりますが、独立採算を鉄道行政でやっている国は日本ぐらいなもので、ほかは、ヨーロッパなんかは特に公的補助などが強くされていて、それは根本に国民の移動権を保障するということがあるからですよ。
鉄道行政の抜本的な転換が必要な事態に今陥っているということを指摘して、私の質問を終わります。

第192回国会 農林水産委員会 第3号   平成二十八年十一月二十二日

○畠山委員
日本共産党の畠山和也です。
きょうは、野生鳥獣による農作物被害の現状と対策について質問を行います。
この五年間の農作物被害についての政府の統計では、最大二百三十九億円から直近は百九十一億円と、大体二百億円前後で推移してきています。金額以上に、農家にとっては、営農意欲の減退などにもつながる重大問題であることは間違いありません。
そこで、まず農水省に伺います。被害が拡大してきた要因をどのようにお考えですか。
○佐藤(速)政府参考人
お答えいたします。
鳥獣被害が深刻化あるいは広域化している要因といたしましては、近年の、雪が少なくなっていること、少ない雪による鳥獣の生息域の拡大、さらに、狩猟者の減少ですとか高齢化によります捕獲圧力の低下、さらには、農山村における過疎化、高齢化の進展によりまして耕作放棄地の増加が見られます、そういった要因が複合的に関係しているというふうに考えてございます。
○畠山委員
今答弁がありましたように、複合的な要因によって被害が拡大してきたということです。
そこで、まず取り上げたいのが、狩猟者の育成、確保の問題です。過去二回、特措法において、技能講習の免除が行われてきました。特定鳥獣被害対策実施隊員は当分の間、それ以外の被害防止計画に基づく対象鳥獣の捕獲等に従事している者は二年間という内容です。
これは、講習負担が重くて、その機に免許更新を行わない人がふえるのに歯どめをかけることを目的の一つとしてきました。
そこで、確認します。これらの延長などによって減少が食いとめられてきたのか、狩猟者の現状について答弁してください。
○佐藤(速)政府参考人
技能講習でございますが、鳥獣被害対策実施隊員等に対します技能講習の免除措置につきましては、平成二十四年の鳥獣特措法改正によって設けられたものでございます。
この措置を導入して以降、捕獲等の対策を行う鳥獣被害対策実施隊を設置する市町村が大幅に増加をいたしております。平成二十三年四月末に八十七市町村だったのが、二十八年四月末には一千七十三市町村まで増加しております。この結果、鳥獣被害対策実施隊員以外も含めて、技能講習が免除され得る捕獲従事者数は約五万三千名余りとなっております。
鹿やイノシシの捕獲頭数につきましては、平成二十三年度に四十五万頭でありましたが、二十六年度には七十四万頭にまで大幅に増加をしているところでございまして、この技能講習の免除措置は、捕獲従事者の確保を通じた捕獲の推進に相当程度寄与している、かように認識をしております。
○畠山委員
技能講習の延長が貢献してきたことの答弁がありました。とはいえ、講習でありますから、その免除をなし崩しに拡大することには一般的に不安が残るのは当然です。
そこで、きょうは警察庁にも来ていただいています。銃刀法にかかわることですので、確認いたします。
猟銃免許にかかわる講習の意義と、過去もこのように延長してきたわけですが、免除しても構わないとしてきた理由について述べてください。
○鈴木政府参考人
お答えいたします。
銃刀法におけます技能講習は、現に猟銃を所持し、その更新を受けようとする者等に対し、所持している猟銃の種類に応じて、都道府県公安委員会が行う猟銃の操作及び射撃技能に関する講習を受けさせることにより、猟銃の基本的な操作の不徹底や射撃技能の低下に伴う事故の防止を図るものでございます。
警察庁といたしましては、技能講習は事故の防止を図る上で重要であると考えておるところでありますが、一方で、免除措置につきましては、深刻な鳥獣被害の現状を踏まえた政策判断によりなされるものであると承知をいたしております。
なお、免除の対象とされております鳥獣被害対策実施隊員及びいわゆる特定従事者につきましては、有害鳥獣捕獲等のため、猟銃を使用する機会が一定程度確保されているとともに、猟銃を適正に取り扱っているものと考えられるところであり、現時点において、免除措置によりまして、直ちに安全性の確保に問題が生じているとまでは言えないというふうに考えております。
以上でございます。
○畠山委員
調べていろいろお聞きしたときにも、講習の有無にかかわらず、頻度はそもそも少ないんですが、因果性も認められないというお話も伺っております。
いずれにしましても、安全性や高い倫理を伴うことは必要でありまして、特例的に延長してきたことが常態化して講習自体が形骸化することがあってはならないということは指摘しておきたいというふうに思います。
それで、鳥獣被害をどうするかなんですけれども、このように広がってきた被害に対して農水省として各自治体に鳥獣被害対策実施隊の設置を進めてきたのは、先ほど答弁でもあったとおりでした。捕獲活動あるいは防護柵の設置などへの対策とそのための予算措置も拡充してきたと説明も聞きました。施策の拡充は言うまでもありませんし、関係省庁や市町村の現場での連携が大事であることも当然です。
そこで、問題は、現場での担い手をふやさなければいけないことですし、中長期的に、きょう私が取り上げたいのは、緩衝帯になる農地や山村の復旧、再生について、一言、大臣にも伺いたいと思っているんです。
和歌山県に行ったときにミカン農家からお話を聞きました。ミカンの生産をふやすために、かなり条件の悪いところも含めて開いていったということで、同時に、そういう地域ですから、ミカンとあわせて林業でも経営を成り立たせてきたという歴史を伺いました。
ですが、その一方の林業は、御存じのように、木材の関税がなくなったことも契機にして成り立たなくなったために、この間、ミカンなどを含めて、オレンジ自由化のことなどでさんざんな苦労はしてきましたけれども、そのように開いていった山間地域になればなるほど、だから今限界集落になってきているんだというようなお話でした。
ですから、そこを窓口といいますか入り口として、鳥獣もどんどん畑などに入ってくることになったのではないかということは推測できます。現状は、ただ、余りにもふえ過ぎてしまったために、適正な管理を基本方針に捕獲などを行ってきたわけです。同時に、今述べたような中山間地域での対策が求められているとも思います。
そこで、大臣に伺いたいのは、鳥獣被害対策の側面から、中山間地対策としてどのようなことをお考えになっているか、お聞かせください。
○山本(有)国務大臣
御指摘のように、中山間地域は、傾斜地など、条件不利でございます。さらに、鳥獣被害の増加の影響で厳しい状況に置かれている地形的な特色がございます。そういったことからして、中山間地域の活性化対策と鳥獣被害対策、これは両方をあわせて進める必要がございます。
今年度補正予算で、中山間地域所得向上支援対策によりまして、鳥獣被害防止施設等の整備を含め、中山間地域の所得向上に向けた取り組みを支援しておりますし、被害対策の実施に当たりましては、野生鳥獣の生息環境を適切に管理することが重要であるというように考え、耕作放棄地の放牧利用可能な鳥獣被害防止のための緩衝帯、これを利用することに、鳥獣被害防止総合対策交付金等による支援を今現在行っております。
今後とも、中山間地域において生産者が安心して営農できるように、中山間地域における農業振興と鳥獣被害の軽減に向けた取り組みを実施してまいりたいというように思っております。
○畠山委員
今、緩衝帯に触れて答弁していただきましたので、現場の努力の例を紹介したいと思っています。
国会図書館の「レファレンス」二〇一三年十二月号で、山口県での現地調査を踏まえた報告があります。これによれば、山口県では、鳥獣被害対策の一環として、耕作放棄地等での和牛放牧技術の研究が進められて、それが山口型放牧と命名されるに至ったとのことです。牛が雑草を食べることで鳥獣の隠れ場所をなくすなどの効果があるとされて、二〇一二年度では、県内二百八十八カ所、約三百四十ヘクタールで、延べ千二百二十頭の牛が放牧されているとの内容です。
これは、私もその後も調べてみましたけれども、実証実験の結果、このような耕作地と山林との間に放牧する区間を帯状に配置することで、より高い効果が期待できるとのことでありました。最近の資料で見ても、放牧面積はふえているんですね、しかも。ただ、因果関係は明確でないけれども、山口県での被害は減少傾向との報告もありました。もちろん、さまざまな手間や高齢化などの課題は残されています。
鳥獣被害の対策は、当面は、地方自治体での実施隊など、体制を厚くすることなどの施策が必要です。同時に、少し長いスパンで見れば、中山間地域のこのような支援拡充、あるいは林業などとの複合経営が成り立つような環境づくりなどなどが必要と思います。地方自治体や環境省など関係省庁との連携も強化すべきでしょう。
ですから、最後に大臣にもう一言伺います。
このように、きょう、入り口は鳥獣対策としての質問をさせていただきましたけれども、農政にかかわる総合的な対策として位置づく内容であると思います。大臣のイニシアチブが必要だと思いますが、いかがですか。
○山本(有)国務大臣
御指摘の鳥獣被害は、農作物への直接的な被害だけではなくて、生産意欲の減退を招くという原因となります。離農のきっかけにもなるという重大な問題でございます。この農山漁村の暮らしにかかわる極めて重要な問題に対しまして、決然と取り組みたいと思っております。
今後とも、農林水産省が率先して、環境省等の関係省庁と連携しつつ、農業者が安心して営農できるように、鳥獣被害対策に万全を期すつもりでございます。
○畠山委員
連携強化をぜひ強くお願いしたいんですね。環境省と農水省でそれぞれフィールドが違うということもあるでしょうが、現場においては、関係する自治体においては一つのところでやっているわけですから、しかも、出てくる場所は、山奥だろうが、田んぼだろうが、畑だろうが、出てくるものは一つであるわけでして、そういう点で、環境省、農水省とともに、関係自治体における連携強化を心からお願いするものです。
県ごとのかなり成果のばらつきもあるというふうに聞いているのは、今言ったような中身によることというふうに思います。
狩猟者や農業従事者、あるいは地方自治体の職員が減る中で、現場では被害対策に懸命となっております。現場を後押しする施策と予算の拡充を求めまして、質問を終わります。

第192回国会 農林水産委員会 第2号   平成二十八年十一月十七日

○畠山委員
日本共産党の畠山和也です。
山本大臣が就任して、きょう所信質疑を行うということになりましたので、一言、やはり冒頭に、二度にわたる暴言については申し上げなければなりません。
大臣という行政府に身を置く者でありながら、立法府に踏み込み、強行採決を促すような発言が一回目でした。それを撤回、謝罪しながら、あの発言は冗談だったと言ったあげく、パーティー参加の農業関係者に対して、農林省に来れば何かいいことあるかもしれないと利益誘導まがいの発言をしたのが二回目でした。
農水大臣として容認できない発言であり、改めて断固抗議いたします。
本題に、質問に入ります。
大臣は、所信の演説で、TPP発効を前提に、攻めの農政の展開をまず掲げました。総合的なTPP関連政策大綱を着実に実行すると述べたわけですが、ここでは、交渉で獲得した措置とあわせて、経営安定、安定供給へ備えた措置の充実等を図るとしています。
ここで書かれています交渉で獲得した措置というのは、政府がこの間言ってきましたセーフガードや長期間にわたる関税削減などと思います。しかし、TPP特別委員会で私からも、これらの措置は協定発効直後から見直しの対象とされるのではないかと指摘してきました。TPPは関税撤廃が原則だからです。
そこで、大臣に聞きます。
交渉で獲得した措置はすぐにでもなくなっていく、そうであれば、経営安定や農産物の安定供給に向けた対策を図るという政府の言い分の前提が崩れることにはならないのでしょうか。それでも大臣としてTPPへ引き続き固執するのか。まず初めに御答弁ください。
○山本(有)国務大臣
御指摘のTPP交渉におきましては、国家貿易の堅持、セーフガード等の有効な措置を獲得したわけでございます。
委員御指摘の協定の見直しというものがもしある場合に、ここに不安が残るというところであろうと思いますが、TPP協定に限らず、通商協定におきましては、発効後の見直しとか再協議に関する規定が設けられていることが一般的でございます。
TPP協定に設けられております七年後の再協議規定につきましても、他の通商協定と同様に、協議が調わなければ約束内容を変更する必要はないというように承知しておりまして、双方が合意しなければ見直しは行われないことから、また、我が国に不利な形での改定は行われることがないというように認識しております。
○畠山委員
参議院で審議もしておりますし、きょうはこれ以上のことは問いませんけれども、ただ一つだけ指摘しておけば、参議院の委員会でもありましたが、TPPの機構として、TPP委員会が附属書二―Dの表を検討することを任務としていることが先日取り上げられているはずです。それは、わざわざ括弧書きで、「(関税の撤廃時期の繰上げによる修正に限る。)」ことがTPP委員会の任務として書かれています。
ですから、政府は、国益に反する交渉はしないとか、総理も、コンセンサス方式だから、今大臣が述べたように、一致しなければそれは議論として成り立たないというふうに答弁をしてきましたが、TPPの機構上、それは許されないのではないか。TPPからの撤退をこの場でも改めて表明しておきたいと思います。
きょうの質問の中心的なテーマですが、私は、先ほどから議論がありましたように、やはり、十一月十一日に規制改革推進会議農業ワーキング・グループが出した農協改革に関する意見について問います。
読みましたけれども、改革先にありきの暴論です。高いボールを投げたどころか頭を狙ったビーンボールで、野球でいったら退場物の中身だと私は思います。今後しっかり議論したいと思いますが、今は、北海道を中心に行われている組合員勘定制度、通称組勘制度について確認します。
ワーキンググループの意見では、この組勘制度を廃止すべきとしています。
大臣に確認します。この組勘制度とはどのような制度で、どのように始まったのか、経緯を御説明ください。
○山本(有)国務大臣
組勘制度は、組合員が営農計画を立てることで経営の自己管理機能を高めるということを目的に、農協との取引を通じて経営の発展を図るということを目指しておりまして、昭和三十六年から北海道独自の決済制度として発達したと承知しております。
仕組みといたしましては、先ほど申しましたように、組合員が作成しました営農計画書に基づきまして、農協が貸し越し限度額を設定し、その限度額の範囲で、組合員に対し、営農資金や生活資金がいつでも引き出せる、いわゆる当座貸し越しであるというように認識しております。
○畠山委員
そこで、十四日の参議院のTPP特別委員会で組勘制度の認識を問われたときに、山本大臣が、農協を利用しない販売がしづらいとか、畜産などは少々利用しづらい、改善に向けた方策を模索したいなどとの答弁をしています。議事録を読みましたが、質問にかみ合っていない答弁だと私は思いました。
そこで、きょうは質問時間もないので、ずばり聞きます。
山本大臣は、ワーキンググループが提言している直ちに廃止という考えとは同じでしょうか、違うのでしょうか。
○山本(有)国務大臣
北海道の方々の御意見、あるいはそのほか現場の方々の不安、そうしたものを体して考えていきますれば、規制緩和会議ワーキンググループからの意見、この意見はそれはそれとして、また独自で、地についた、農家不安のないような改革案というものも他方あるならば、それを模索しなければならないというように考えております。
○畠山委員
ワーキンググループが直ちに廃止をすると提言している理由を見れば、組勘制度によって農家の自由度が奪われているというものです。全く歴史も現場もわかっていないと言わざるを得ません。
北海道は、冬が長い、農閑期が長い地域で、自然条件が厳しいのは言うまでもありません。市中の金融機関から借りていた農家もありましたが、バブル崩壊などの影響もあり、融通がきかなくなった農家もいます。その中で、安定的に資金を調達し、計画書もつくって、営農指導と一体に進めてきたのが組勘制度でした。これが今の北海道での効率化や大規模化を進めてこられる土台にもなってきた経過はあると私は思います。
ですから、組勘制度を廃止することは、北海道の農家を潰せと言っていることと等しいと私は受けとめました。大臣、そう思いませんか。
○山本(有)国務大臣
七割の北海道の農家の方々が活用し、安定的な農家経営をされておられるということの機能の大切さ、重要さというのは、これは変わるものではありません。
また、農協だけに販売しなければならない、こういう契約、約定というものに対する現代的な疑問というのも他方あるのかもしれません。
そんな意味で、調和点が図られることを希望しております。
○畠山委員
調和点というのが何を意味するか私は理解できませんが、ただ、直ちに廃止ということには大臣は今同意していなかったことを確認しておきます。
昨年二月の予算委員会や農協法等の議論をした本委員会で、私は、組勘制度が廃止されようとする動きを告発してきた質問を行っています。
去年の二月の予算委員会でも、私は、在日米国商工会議所が、JAグループの金融事業を制約せよ、さらに、日本政府及び規制改革会議と緊密に連携し、成功に向けてプロセス全体を通じて支援を行う準備を整えているとまで向こうは書いている。政府がいろいろ言おうとも、向こうの側はそういう形で来ているということを私は予算委員会でも取り上げました。
営農指導と金融事業が一体化して農家の暮らしを丸ごと支えている組勘制度へのくさびを打つがための提言ではないか、私は到底こういうものは許されないということを強調しておきたいと思います。
残りの時間で、指定生乳生産者団体についても伺っておきたいと思います。
農業ワーキング・グループは同日、牛乳・乳製品の生産・流通等の改革に関する意見も出していて、その冒頭の「改革の原則」として、「生産者が自ら自由に出荷先等を選べる制度への改革」が掲げられています。
これは事務方で結構ですが、今の制度で生産者は出荷先を選べないのでしょうか。
○枝元政府参考人
制度について御説明いたします。
現在、酪農家は、指定生乳生産者団体への出荷以外でも、みずからが販売業者を介して乳業メーカーへ販売するなど、自由に生乳の出荷先を選択することは可能でございます。
ただし、現行制度では、指定生乳生産者団体に生乳を出荷しなければ加工原料乳生産者補給金を受け取ることができないものですから、このような出荷先の違いによりまして補給金の交付、不交付が決まるのは不合理であるという意見があることは承知をしてございます。
○畠山委員
今ありましたように、現状でも自由な販売先があることを確認しておきます。
それで、今答弁にありましたように、補給金をめぐることでワーキンググループが問題にしているんですよね。飲用乳はもちろん夏場に需要が、消費がふえて、冬場に消費が減る。そこで、供給過多を防ぐために加工へ回す。しかし、飲用に比べて価格が低いために、指定団体を経て生産者へ補給金が渡る。指定団体がこの交付を受けられるのは、加工を通じてこの需給調整を行う役割があるからであることは先ほど来議論もされてきたことです。需給という全体のリスクを指定団体が背負っていると言えると思います。
しかし、規制改革推進会議では、出荷先の違いで補給金が出る、出ないというのは不公平だという議論になっている、おかしい話だとなっています。それなら補給金を受ける団体は同じように需給調整の全体の責任を背負わなければいけないことになるはずで、だから、ワーキンググループの意見を読んでいくと、新たな補給金を得ようとする生産者は、飲用、加工の年間販売計画などを国に報告することともしています。一体、今の制度と何が変わっていくんだろうかと理解不能になってくるような中身なんですが、そこで大臣に認識を確認したいんです。
この補給金交付の現制度とワーキンググループの提起するこの制度で、一体、一番の違いは何だと思いますか。
○山本(有)国務大臣
このワーキンググループの意見からしますと、まず、意欲ある生産者に公平に交付したい、あるいは条件不利地域の生産者からも確実に集荷されるようにしたい、あるいは一定の要件を満たす場合は補給金の加算もしたい、また、労働条件が過酷な場合にはそれも改善したいというような意見を言っているわけでございます。
生乳の特色からすると、すぐに傷みやすいわけでありますし、生産調整が必要でありますし、北海道の皆さんの酪農と本州の酪農との違いも伊東さんの御意見からよくわかるわけでございますし、ここにつきましては、生産者の皆さんの生産に対する不安がないような形での意見の取りまとめ、さらに将来の合意というのを地道に求めたい、農林省としてはそう思っておる次第でございます。
○畠山委員
多くの酪農家はみんな意欲を持って頑張っていますし、一番現場を不安にさせているのはこの意見、提言ですよ。
それでも、この議事録やワーキンググループの意見を読むと、農水省側の意見に全くかみ合わせていない支離滅裂な意見ばかりで、何でこうなるかといえば、結論先にありきだからだと私は思います。
指定団体を選ばせているのは強制だと決めつけて、「農協利用を誘導・強制する法制度は、農協改革の趣旨にもとるものである」と書いています。さきの組勘廃止についても、意見書のタイトルで改めて見れば、「農協改革に関する意見」という冠です。つまりは、農協を目のかたきにして、農協改革したいということが出発点になっていて、もう支離滅裂な中身になってきているのが私は本性だと思います。
最後に、大臣に聞きます。ワーキンググループの言うような組勘の廃止や指定団体の改革は、本当に農協改革と大臣は思っていますか。認識を伺います。
○山本(有)国務大臣
組勘廃止、あるいは指定生乳生産者団体制度の改革、この規制改革の委員会の御意見は御意見として、私どもは農家収入の向上という意味で捉えていきたいとは思っておりますが、しかし、何より、生産者が不安に思い、また将来の営農について懸念を抱くことへの不安の方が私どもとしては非常に大事、重要でありますので、できれば、地についた改革、そして、今の生乳生産者団体、こうしたものの皆さんが安心感をなお持てるというような改革を進めさせていただければというように思っております。
○畠山委員
繰り返し述べますが、この規制改革推進会議ワーキンググループの出した意見を拒むことが一番の安心であるというふうに思います。
昨日も、北海道の農家から要請も受けました。現場の実態を踏まえないで急進的に物事を進める規制改革推進会議への不満の声は相当強いと思います。この場に参考人として呼んで問いただしたいぐらいです。
また次の機会に、これらの問題をじっくりと取り上げたいと思います。
以上で質問を終わります。

第192回国会 本会議 第10号      平成二十八年十一月十日

○畠山和也君
私は、日本共産党を代表して、環太平洋パートナーシップ協定及び関連十一法案に断固反対の討論を行います。(拍手)
何よりまず、TPP特別委員会における質疑打ち切りと採決強行に厳しく抗議するものです。我が党は、結党以来、強行採決をしようと考えたことはないと述べた安倍首相の目の前で、国会ルールを踏みにじり、慎重審議を求める国民多数の声に背く暴挙が行われたのです。
そもそも、山本農水大臣の二度にわたる暴言は、国会と国民を愚弄するものです。辞職は当然です。にもかかわらず、政府・与党から事態の打開についてゼロ回答とはとんでもありません。
その上、米国では、TPP離脱を明確に口にしたトランプ氏が次期大統領に選ばれました。TPPによって雇用が奪われることへの米国民の怒りと不安が反映したものです。米国のみならず、日本でも各国でも反対や批判の声が広がる中で強硬に採決へ突き進むとは、まさに愚の骨頂ではありませんか。
国民への説明責任は果たされていません。国会で問題点を明らかにするべく責任を投げ捨てる、自民、公明による強引な運営に対して、満身の怒りを込めて抗議するものです。
委員会質疑を通じて、TPP協定の重大な問題点が明らかになりました。
第一に、TPP協定の原則は関税撤廃であり、国会決議に真っ向から反するということです。
決議は、農産物の重要五項目を除外または再協議とし、十年を超える期間をかけた段階的な関税撤廃も認めないことを求めていました。しかし、TPP協定には除外も再協議もなく、重要五項目のうち三割で関税が撤廃され、残り七割でも、関税率の引き下げなどにより、無傷な品目は一つもないと政府は認めました。乳製品や林産物、水産物の中に十年を超える段階的な関税撤廃品目があることも認めました。
政府がかち取ったというセーフガードなどの例外も、発効七年後の再協議規定で撤廃に向けた協議が約束させられています。小委員会や作業部会などで協議の対象となることを政府も否定しなかったではありませんか。
決議では、交渉により収集した情報については、国会に速やかに報告することも求めています。しかし、交渉経過は黒塗り文書でやり過ごし、審議を通じても、交渉の中身については言えないとの一点張りで、国会にも国民にも限られた情報しかもたらされていません。
さらに、SBS輸入米での価格偽装疑惑によって、政府試算の前提は覆りました。再調査も再試算さえもしない政府の姿勢に、米農家の怒りや不信が広がっています。
これがTPP協定の紛れもない結果であり、国会決議違反であることは明白ではありませんか。
第二は、TPP協定が、食の安全を初め国民の暮らしと命、健康を脅かすことです。
TPP発効で、輸入食品や遺伝子組み換え食品の急増は明らかです。輸入食品の九割以上が無検査のまま流通し、残留農薬基準違反でも消費されている驚くべき実態がある現状で、政府は、食の安全を守れる保証を示せなかったではありませんか。
日米二国間の交換文書で将来の保険制度の協議を約束し、国民皆保険制度が崩される危険があります。米国の製薬企業が薬価決定に影響を及ぼし、薬価が高どまりする懸念は否定できません。助け合いの精神で始まった共済事業が、民間保険との競争のもとで制度の見直しが議題になる可能性も政府は認めました。極めて重大です。
第三に、TPPの効果は、日本の企業の圧倒的多数を占める中小企業には、恩恵が及ぶどころか、取引先の多国籍企業による海外展開につき合わされ、国内の産業空洞化が一層ひどくなることです。
政府は、技術力などを持った中小企業がいながらにして海外へ展開することの後押しになると言いますが、現在、海外展開している中小企業はわずか〇・九%にすぎず、九割は海外展開の必要性さえも感じていません。
また、安い農林水産物の輸入によって、農林漁業を基幹産業とする地域では、食品加工や流通、運送などの中小企業に打撃が及ぶことは、火を見るより明らかではありませんか。
第四は、多国籍企業や投資家が損害を受けたとして、投資先の国を訴えることができるISDS条項が盛り込まれていることです。
質疑で明らかになったように、米国政府が訴えられても敗訴した事例は一つもないなど、米国とその多国籍企業に有利な仕組みとなっているのが実態です。最低賃金の引き上げや原発ゼロ政策などに対してまで訴えが起こされているのが世界の現実です。濫訴の歯どめとなる保証は全くないばかりか、各国の経済主権が侵害されることは明白であり、断じて認められません。
加えて重要なことは、政府自身が生きた協定と述べてきたように、各種小委員会や規制の整合、TPP委員会などの仕組みによって、発効直後からTPP協定そのものが変えられていくということです。
政府は、国内の制度は変更を迫られないとか、国益に反する再交渉はしないなどと述べてきましたが、何の保証にもなりません。TPPの本質は、あらゆる関税と非関税障壁の撤廃にあるからです。
その上、政府調達、公共事業、環境や労働にかかわる論点は審議さえもされていません。国民の暮らしと命にかかわる問題について十分な審議をせず質疑を打ち切るというのでは、国民に問題点を明らかにすべき国会の責務を果たしたとは到底言えません。
最後に、国民の暮らしや命よりも多国籍企業の利益のために日本の経済主権、食料主権を脅かすTPP協定は断じて認められません。
今、世界では、行き過ぎた貿易至上主義に対する反対の声が沸き起こっています。
○議長(大島理森君)
畠山君、時間が来ております。
○畠山和也君(続)
各国の経済主権を尊重しながら、民主的で秩序ある経済の発展を目指す平等互恵の貿易と投資のルールづくりこそ、世界の流れです。日本が進むべき道は、TPPではありません。
日本共産党は、引き続き、TPP協定の全容と問題点を明らかにするとともに、国民の世論と運動とかたく結んで批准を阻止する決意であることを表明して、反対討論を終わります。(拍手)

第192回国会 環太平洋パートナーシップ協定等に関する特別委員会 第10号 平成二十八年十月三十一日

○畠山委員
日本共産党の畠山和也です。
共同通信による世論調査の結果が一斉に報じられました。TPPについては、今国会にこだわらず慎重に審議するべきだと答えた方が実に六六・五%です。依然として、慎重審議を求める声が根強いことは明らかです。
先週は、北海道と宮崎県で地方公聴会を本委員会は行いました。私は北海道の会場に行きましたけれども、中小企業の役員さんからも、さらに勉強会が必要だという表現や、また、農業に関しても、北海道にとっては死活的問題で、慎重な議論をしてほしいとの言葉もありました。
さらに地方の声を聞く必要はあると思いますし、昨年の安保法制の特別委員会でも中央公聴会は行われてもおります。あわせた開会なども必要ですし、さらなる参考人の質疑なども私たちは理事会でも要求してきました。
改めてこの場でも主張、表明しておきたいと思いますし、委員長、理事会での協議をよろしくお取り計らいください。
○塩谷委員長
理事会で協議して対応いたします。
○畠山委員
それで、きょうは、TPPが医薬品の価格、薬価制度にどのような影響を与えるかについてじっくりと聞きたいと思います。
十月六日の参議院予算委員会で、我が党の小池晃参議院議員が、抗がん剤オプジーボについて、高い薬価の問題を質問しました。オプジーボは、一昨年九月に薬価収載されております。薬価収載というのは、大臣はもちろん御存じですけれども、新しい薬が保険適用されることであり、当初は、百ミリグラム瓶で七十三万円という薬価でしたが、適用範囲が広がったために対象者も広がったことにより、薬価を本当に引き下げるべきではないかという質問でありました。
本来、薬価は二年に一度改定を行います。先日、厚生労働省は、このオプジーボで最大二五%の引き下げを行う特例の報道がありました。薬価の引き下げは、患者にとっても保険財政にとっても、もちろんいいことであります。その際、これは特例で引き下げるというふうに報じられていましたが、それは具体的に何を指しているか、まず御答弁ください。
〔委員長退席、菅原委員長代理着席〕
○塩崎国務大臣
今、畠山委員から御指摘のございましたオプジーボでございますけれども、これは、もともと京都大学の本庶先生がつくり出した我が国発のもので、世界で最初に日本で上市をされた。しかし、それが最初はメラノーマ、皮膚がん、約四百七十人ぐらいを対象とする予定でございましたが、それが肺がんにも適用になるということで、これが一万五千人まで広がった、こういうことで大幅な市場の拡大が見込まれたわけでございます。
こうした状況を踏まえて、国民負担軽減の観点から、医療保険財政に与える影響を考慮して、今御指摘のあった、二年に一度の薬価改定の年ではございませんけれども、緊急的に薬価を引き下げるとともに、より効果的な使用を徹底することを、現在、中医協、中央社会保険医療協議会において検討してございます。
従来、薬価算定のルールには、市場が大幅に拡大をした場合に適用する市場拡大再算定というのがございますが、これに加えて、その特例というのを既に導入いたしております。この仕組みがございますので、その仕組みを含めて、どういう適用があり得るのかということについて、緊急的に薬価を引き下げる方法について、現在、中医協において検討をさせていただいているということでございます。
○畠山委員
きょう午後の質疑でも、この市場拡大再算定制度については取り上げられております。その是非についてはきょうは私の方からは触れませんが、ともかく、明らかに高いであろう薬価の引き下げにかかわる根拠となる国の制度であるということを確認しておきたいと思います。
ところが、この制度が米国から目のかたきにされてきたことに心配があるということです。例えば、日米経済調和対話、二〇一一年二月ですが、「市場拡大再算定ルールが企業の最も成功した製品の価値を損なわないように同ルールを廃止もしくは少なくとも改正」ということを要求しております。
ですから、日本の医療業界でも心配の声が上がっています。医療系の専門サイト、メディファクスでは、ことし二月に、日本医師会今村副会長が次のように述べております。「米国が以前から年次改革要望書などで、新薬創出加算の恒久化や市場拡大再算定の廃止などを要求していることも懸念材料。」と、業界でも心配の声がこのように上がっています。
そこで、大臣に伺います。
日本の薬価制度にTPPは何の影響も与えないと言えるのでしょうか。
○塩崎国務大臣
これは何度もお答えを申し上げておりますけれども、そもそも、医療などの社会保障分野については、将来留保をまず大きな意味でかけているということでございまして、まさに今申し上げたように、医療保険財政そのものに大きな影響を与える、それをどう守っていくかということに関しては、国家主権において我が国がTPPのもとでも守り切れるというふうに考えているところでございます。
〔菅原委員長代理退席、委員長着席〕
○畠山委員
それでは、なぜ心配の声が上がるのかといえば、根底には日本とアメリカの薬価制度の違いがあるからだと思うんですね。
日本では、新しい薬価を決める際は、先ほどからありましたように、製薬企業からヒアリングを行って、中医協で算定案が了承されるという手続となります。いわば公定価格というふうに言えると思います。
一方で、米国にはこのような仕組みはありません。基本は、製薬企業とそれから保険会社の協議による、間にいろいろなものが入るときはありますけれども、いわば自由価格と言えると思います。ですから、製薬業者が薬価の設定には大きな力を持っているわけです。
基本的には、日本とアメリカの薬価の仕組み、このような違いということで、大臣、よろしいですね。
○塩崎国務大臣
おっしゃるとおりでございまして、薬価につきましては中医協で決めるということになって、事実上の公定価格というふうに表現されましたが、基本的にはそうであり、米国の場合には市場で薬の価格は決まるというふうに理解をしております。
○畠山委員
そのことを確認した上で、この違いが浮き彫りになっているのが日米間のサイドレターだというふうに思います。
保険等の非関税措置に関する日本国政府とアメリカ合衆国政府との間の書簡というサイドレターがあります。その「透明性」という項があります。ここでは、中医協も該当するであろう「審議会等」という表現がありますが、そのあり方については次のように書いています。「外国の関係者を含む全ての利害関係者に対し、審議会等の会合を傍聴し、又は審議会等の会合に出席し、若しくは意見書を提出することを認めること。」とあります。
それに続けて、サイドレターでは、透明性の確保とはこういうことだと言わんばかりに米国のことが紹介されています。例えば、諮問委員会の設置の事前の通知、予定されている会合の事前の通知、諮問委員会の記録への同時のアクセス、情報提供の機会などなどが列挙されています。
結局、中医協や日本の薬価制度も、透明性の名のもとに米国のルールに合わせよとサイドレターでは示しているということになっているのではありませんか。違いますか、塩崎大臣。
○塩崎国務大臣
いわゆるサイドレター、交換文書でございますが、ここに、今少しお話をいただきましたが、審議会等の設置及び運営に関する透明性の重要性を確認するとともに、外国の利害関係者が審議会等を傍聴する、または審議会等へ出席をし、もしくは意見書を提出するということを認めることが、おっしゃったように、記されているわけでございます。
御指摘のこの交換文書というのは、これはもう何度も答弁を申し上げてきているところでございますけれども、法的拘束力があるわけではない文書であるということ、そして、本件は、日本政府と米国政府が、それぞれの審議会、諮問委員会等の設置、運営等について、国内法令に従った透明性の確保を確認したものだというふうに御理解をいただきたいというふうに思います。
我が国の中央社会保険医療協議会、中医協は、既に内資、外資を問わず、関係者は出席は自由でありますし、意見を表明する機会も与えられるわけであり、また、希望があれば当然会議の傍聴、これはもうフルオープンでやっていますので、そういうふうになっています。
中医協の運用を見直す必要はないわけでございますので、御指摘の交換文書によって新たな義務が発生するものではないということでございます。
○畠山委員
サイドレターの性格については、二十八日の本委員会で私も質問で取り上げさせていただきました。二〇一六年外国貿易障壁報告書に対する日本政府のコメントの中に、概観で、TPPについては、途中省略しますが、いわゆるサイドレターに従って着実に実施していく考えということが盛り込まれていました。
しかも、私、きょうつけ加えたいのは、このサイドレターは、協定本文の第二十六章、透明性を受けてのものだということがきちんと書かれているんです。第二十六章に、では、何が書いてあるか。その第二条四項には、規則の案に対して製薬企業が事前に物言える仕組みが書かれているのではないかと私は思います。
意見提出、今言われたような、意見を出す前の期限日の六十日前、または、利害関係者が規則の案を評価し、並びに意見を作成し、及び提出するための十分な時間を提供するものの間に公表せよと書いています。
つまり、案の段階から製薬企業が口出しできる仕組みではないのか、それが第二十六章の透明性ではないか。その章に基づいてサイドレターで書いていますよというふうに、事実、そういうふうに書いているわけですから、多くの医療関係者が心配しているわけです。
これは総理に伺いたい。
この間、ずっとサイドレターの扱いや米国からの要求はさまざまあるということをこの委員会では指摘をしてきました。そして、今申し上げたように、サイドレターを見ても、協定本文を見ても、米国の製薬企業が日本の薬価、公定価格に対してどんどん口出し、介入して、変えていくということは可能ではないのですか。
○安倍内閣総理大臣
今委員が御指摘されました日米間の交換文書、サイドレターについてですが、御指摘の交換文書では、医薬品等に関する附属書に関するあらゆる事項について協議する用意がある旨を確認しています。しかし、これは米国政府の意見を受け入れることを約束するものではありません。
○畠山委員
いや、そういうことだけではないと私は聞いたわけですけれども、本当に、アメリカ製薬企業から介入されるような仕組みに基づいて、日本の薬価制度は変わらない、それをきちんと、総理、断言できますか。
○安倍内閣総理大臣
既に厚労大臣から答弁をさせていただいておりますが、薬価制度については、我が国の薬価制度を我々は極めて合理的に決めている、このように考えておりますので、我々がいわば、もちろんサイドレターはございますが、米国から要求されたとしても、我々は薬価を決めている今の仕組みを変える考えはございません。
○畠山委員
まだもう少し実は議論したいんですよ。私たち自身は、薬価については、この透明性というときに、国民に安価な薬を提供するために、不当に高い薬価になっていないか情報の公開を求めることなどは必要だとは思うんです。ただ、TPP協定の言う透明性というのはそれと違うのではないかということを先ほどから述べているわけです。
つまり、米国が要求するような自由価格を土俵にした米国の薬価の決め方、そのような製薬企業にとっての透明性ではないかということを私は指摘したいわけです。このサイドレターだけでなく、ずっと協定文書を読んでいくと、それにかかわるような仕組みの章がまだあるのではないか。
では、続けて、またそれを聞きたいと思うんです。利害関係者が政策決定過程に関与できるのは、今言った透明性の章だけではありません。ほかの章にも仕掛けがあります。第二十五章、規制の整合性について、続けて聞きます。
まず確認します。
石原大臣、この章は何のための章ですか、説明してください。
○石原国務大臣
お答えいたします。
二十五章は、今委員が御開陳されました規制の整合性についての規定をしている章でございます。
その内容は、各国が行う規制について、よい慣行、グッドプラクティスという言葉が用いられておりましたけれども、また、情報交換や協力など努力規定を定めたものと承知しております。
その範囲についてでございますが、二十五章第三条におきまして、協定が発効した後一年以内に決定することとされております。今後、各国の状況も踏まえつつ検討する予定でございます。
○畠山委員
今ありましたように、この章は、つまり各国の規制を差別なきものにする上でそれをどうするかということを示している章であります。ですから、日本の薬価制度も、米国の製薬企業側から見れば障壁と映る可能性はあります。
そこで、今、石原大臣は早く答弁されましたが、問われるのが三条になると思います。この三条というのは、対象とすべき規制措置の範囲をどこまでとするかということについて書かれているわけですが、一年以内に各国が決めると、今、石原大臣は答弁されました。
では、日本は、国内の規制のうちどこまでを範囲と定めるのでしょうか。
○石原国務大臣
結論から申し上げますと、我が国で実施している政策評価の対象となっております規制措置が中心になるのではないかと考えております。
先ほどもお話をさせていただきましたが、詳細につきましては、各国がどういうふうにやるか、動向を見きわめて決定をしていく、検討していく、こういう段取りになるものと承知しております。
○畠山委員
一般的には、もちろん各国がこれから決めるということであり、それでは日本はどこまでがその範囲かということをやはり示してもらわないと、先ほどの薬価制度がこれに入るのか入らないのかということが問われてくると思うんです。
しかも、この第三条は、その後に、目標とすべきは「相当な範囲」と書かれています。どこまでを相当とするかは各国にもしかしたら委ねられるかもしれません。だからこのように具体的に聞きたいわけです。
石原大臣、この「相当な範囲」ということについての考え方をまず初めにお聞かせください。
○石原国務大臣
今委員が御紹介いただきました二十五章の三条でございますが、「相当な範囲を対象とすることを目標とすべきである。」という努力義務規定になっております。
そんな中で想定されるものでございますが、ざっくばらんな言い方をすると、かなり御議論のあった、多くのものが対象規制の措置とすることを求められているのではないかと認識をしているところでございます。
○畠山委員
よくわからなくなってくるんですよね。だから具体的に、やはりここから話を詰めなければなりません。
今示してもらわないと、議論してきた薬価制度は、政府はずっと守れる守れるということを言ってきたわけですけれども、では、その規制にかかわる範囲に入るのか入らないのか、このことがやはり焦点になると思うんですよね。薬価を決める今の日本の制度、仕組みまで、その規制が外される対象となるかどうか。どうするのか、ここに含まれるのか、はっきりとお答えください。
○石原国務大臣
先ほど御答弁させていただきましたとおり、今、具体的にどこまでというものは決まっておりませんけれども、自国の厚生労働行政にネガティブな決定というものは、これは努力義務規定でありますから、我が国がとるということは想定しておりません。
○畠山委員
もちろん、ネガティブなことは、それはそうなんですよ。
一年以内に決めるということですが、批准を今もちろん議論しているわけでありまして、その前に、やはり何の範囲まで、留保を含めたことをずっと私は見てきました。何が日本にとって留保となり、外されるかということも一つ一つ見てきたつもりです。
ただ、この章にひっかかるんですよ。統一のルールを決めることによって、政府は今は守られるということを言いますけれども、何年か後にそれが外されるという仕掛けがここにあるのではないかという強い問題意識を持っています。したがって、この薬価制度においても、きちんと入るのか入らないのか明確にしてもらわないと、やはり、業界の皆さん、患者の皆さん、心配は晴れないというふうに私は思うわけです。
そこで、伺いたい。どの範囲まで決めずに、そもそも批准していいはずがないじゃありませんか。フリーハンドで政府に任せろということなのでしょうか。しかも、この規制の整合性に関しては、そのようなことを話し合える小委員会がつくられます。
これは事務方で結構ですが、第八条には何と書いてあるか読み上げてください。
○澁谷政府参考人
二十五章の第八条でございますが、「規制整合性小委員会は、締約国の利害関係者が規制の整合性の推進に関連する事項についての意見を提供する継続的な機会を与えるために適当な仕組みを設ける。」と規定してございます。
○畠山委員
ここでも、やはり利害関係者が規制の整合性を進めるために、つまり、ルールを統一していくために、意見を提供する継続的な機会を与えるということが書かれているわけです。ですから、継続的なわけですから、政策立案過程も含めて入ってこれるのではないか、サイドレターで指摘されていたアメリカのようなことなどは実際にこのような中身において保障されているのではないかというふうに思うわけですよ。
石原大臣、だから、もう一度戻って聞きます。この薬価制度の問題、冒頭に述べたように、高い薬価で大変苦しまれている方々がいます。事は命にかかわる問題です。一年以内にその対象をどうするかということを言いますけれども、フリーハンドでこのことを批准するわけにはいきません。薬価の問題をどうするか、もう一度答弁してください。
○石原国務大臣
ただいま澁谷参考人の方から御答弁させていただいた、二十五章の八条をどう読むかということにかかってくるんだと思うんですが、これは、小委員会は協議機関として設けるということが決まっております。
しかし、利害関係者が規制の整合性の推進に関連する事項について意見を提供する機会を与えるための適当な仕組みを設ける義務を小委員会が負っているわけでございまして、小委員会はどういう構成になるかというと、TPP協定の場合はコンセンサス方式でございます。サイドレターでバイの場合は相互主義。ですから、委員の御懸念の、我が国の厚生労働行政を根本的に変えてしまうような決定はなされないというふうに考えているところでございます。
○畠山委員
それであるなら、薬価制度は入れませんと一言言ってください。そうなんじゃないですか。それでいいんですか。
○澁谷政府参考人
規制の範囲でございますが、石原大臣が御答弁申し上げましたとおり、我が国で現在考えておりますのは、政策評価制度で事前影響評価が義務づけられておる規制がございます。政策評価法の政令におきまして、この対象となる規制は、「国民の権利を制限し、又はこれに義務を課する作用」というふうに書いてございまして、そういうものを現在我々は、影響評価、事前評価の対象にしてございます。
この二十五章というのは、規制の中身というよりは、規制を制定する際のグッドプラクティス、例えば、このまさに事前影響評価のようなものをどの程度しているかということについてお互いに議論をする場でございますので、そういう意味でもこの政策評価の対象になっているものというふうに現時点では私どもは想定しているところでございます。
○畠山委員
いや、これはやはり大臣が答弁するべき性格の問題だと思いますよ。
それであるならば、総理に伺います。
この規制の整合性という章は、今回、薬価制度を例にとりましたけれども、あらゆる規制に物言える章であります。そこの小委員会が、利害関係者が意見を言える仕組みとして、きちんと書いております。
TPP交渉を通じても、米国から強い要望が出されてきたのは製薬会社であることは周知の事実です。医薬品データの取り扱いをめぐって最後まで議論が交わされたという報道もありました。当然、規制の整合性の章を通じた利害関係者として政策立案過程にまで関与できることになってしまうのではないのでしょうか。
そこで、総理に、先ほどと同じようにもう一度聞きます。米国の製薬企業が日本の公定価格の薬価制度に対してどんどん口出し、介入して、変えていくことは本当にないと言い切れますか。
○安倍内閣総理大臣
委員がおっしゃっているのは、第二十五章第八条では、TPP参加国の利害関係者が規制の整合性の推進に関する意見を提供する機会を与えるため、規制整合性小委員会が仕組みを設けることとしているということだろうと思いますが、その具体的なあり方は小委員会の設置後に議論されることになります。
しかし、TPP協定で設置される小委員会の意思決定については全会一致方式によるものでありまして、全会一致方式でありますから、日本が反対するような内容が決定されることはないわけでございます。我々が納得できないようなことを、米国がこれやれと言って、わかりましたと言うことは、これはないわけであります。
そういう意味におきましては、基本的に、私どもがとってきた薬価の決定方式について、そしてまた、先ほど、対象の方がふえたがために、非常に薬価の価格によって結局医療費の負担として大きくのしかかってきたものに対しまして見直しをするというようなことは、大変合理性があるものであろう、こう考えるわけでございます。
我々が合理性があると考えるものを米国が自分たちの利益を優先させて日本に変えろと言うことについて、我々がそれを了解することはないということは申し上げておきたい、このように思います。
○畠山委員
だから、そうであるなら、薬価制度は外しますと一言言えば済んだ話なんですよ。それが今までないところに医療業界の皆さんの心配があるのではありませんか。
この規制の整合性は、実は歴史があります。二〇一一年の米日経済協議会のTPPへの日本参加の実現に向けてという文書をこの間見つけました。ここには、基本原則の六として、「規制の一貫性を高める協定」とTPPを位置づけております。こう書いています。「米国政府は、TPPの交渉において規制の一貫性を促進することに特に重点を置いており、これは米国ビジネス界からも強い支持を受けている。」そして、「利害関係のある全てのステークホルダーが自分たちの利害に影響をもたらす政策、法案、規制、手続、行政決定を認識し、ルール策定作業に参加できて初めて意味をなす。」こういうふうに書かれているわけです。
ステークホルダー、利害関係者たる企業がどんどん介入しようとTPPが進められたことは明瞭です。
そこで、総理、通告していませんけれども、実は、次の質問の機会で私はTPP委員会というものを取り上げたいと思っているんです。
第二十七章にそれが書いてありまして、先ほど、コンセンサス方式、いろいろなことを決めるのはもちろんコンセンサス、一致して決めるということは、それは当たり前なんです。ただ、この第二十七章において、そのコンセンサスが一致しない場合においては書面において五日以内にその理由を出しなさい、そうでなければ認めませんというようなことが書かれております。
実は、このTPP委員会は、三年後から協定自体の見直しも始まります。小委員会や作業部会も自由につくることができます。政府が生きた協定と言っている本質が、組織の面からここにあるというふうに思うんですよ。
だから、きょうは触れませんけれども、実は関税撤廃に関する重要な内容もここに含まれていて、今度じっくりと第二十七章、TPP委員会について議論をさせていただきたいと思っています。
今、現制度が維持されても将来にその保証はないというものです。薬価制度に介入して変更を迫り、国民の命にまで影響を与えるようなTPPならば到底認められないことを主張して、質問を終わります。

第192回国会 環太平洋パートナーシップ協定等に関する特別委員会 第10号 平成二十八年十月三十一日(参考人質疑)

○畠山委員
日本共産党の畠山和也です。
四人の参考人の先生、きょうお時間をとっていただきまして、本当にありがとうございます。私からも改めて感謝を申し上げます。
早速、四人のお一人お一人に質問をさせていただきます。
まず、土肥参考人にお伺いいたします。
著作権の問題については、先ほど福井参考人からもありましたけれども、今、コンテンツ産業としてこのように市場としてもどんどん広がっている状況がある中で、日本は輸入超過、コンテンツの輸入大国となっているところから、支払い負担の問題は確かに存在しているというふうに思います。ですから、これが延長されるということにおいては、そのような作用が起こることは私もあり得ると思うんですね。もちろん、一般に著作権保護ということが重要であることは私たちも理解していますし、大事だと思っています。
ですので、特に今日、このようにコンテンツ産業が盛んになる中において、そのバランスというのは、権利と産業のはざまでなかなか難しい判断は確かにあるかと思いますが、よく見ておく必要があるかと思います。その点の御見解についてお聞かせいただけますでしょうか。
○土肥参考人
御質問ありがとうございます。
確かに非常に難しいところなんですけれども、使用料の支払い超過というのは、これは主としてソフトウエアですよね。つまり、我々のパソコンの中に入っているソフトウエアを考えてみると、大体、アメリカのソフトウエアメーカーのものが入っておるわけでありまして、こういったようなものにかわるものを産業的に国全体でつくっていくということがなければ、なかなかこの状態は解消しないんだろうと思います。
しかし、私が若いころ、ゼロックスは永久に不滅である、百年ぐらい先まで大丈夫だというふうに聞いたことがございますけれども、しかし、例えば、先ほど福井参考人が御紹介になった、外国の企業のトップファイブか何かが挙がっておりましたけれども、あの中にはありませんでしたよね。つまり、時代の経過の中でやはりこれも変わり得る。
日本も、例えば、かつては「千と千尋の神隠し」みたいなものもございましたし、今は「君の名は。」というようなものが大変ヒットしております。つまり、これはまずい、まずいということよりも、この七十年になったことを利用してというか逆手にとって、そういう市場戦略、産業戦略を構築していただきたい、このように考えております。
○畠山委員
ありがとうございます。
そこで、福井参考人にも、似たような角度と、もう一つ、非親告罪化の問題についてお伺いしたいと思います。
先ほど、福井参考人の資料で、今私が述べたような支払い負担の問題について記載がありました。こういう状況の中で、もちろん、知的財産においては、TPPの協定の議論の中で医療分野をめぐっても広く議論がされてきたところではありますが、そもそも、著作権のあり方と経済、産業とのあり方についてやはり根本的な考え方を据える必要があるのかなと思っています。
そこで、その点の福井参考人の御見解をお聞かせいただきたいことが一つ。
もう一つ、非親告罪化については、これはふたをあけてみないとわからないということを福井参考人がさまざまなところでも言われていらっしゃいます。これまでも、いろいろな形でよくも悪くも曖昧な処理をして、裁量に任せられていた部分があったんだろうと思いますが、非親告罪化することによってその裁量がどのような形で厳しくなるのかならないのかということは心配の一つの焦点だろうと思います。
最後に、整理すべき問題があるとして、法定化にかかわって前倒ししていいのかという問題提起がありました。その関係なども含めて、御見解をお聞かせください。
○福井参考人
ありがとうございます。
いずれも非常に重要な問題であろうかというふうに思います。
まず、大きなパラダイムの変換の話を冒頭で申し上げました。プラットホーム企業と言われる米国西海岸発の企業が世界の企業の時価総額のトップファイブを占める状況、これは確かに余りに急速に起きたわけであります。そのとき、しばしば、いや、こういうことはまたいずれ変化が起こるであろうということが言われるわけであります。
ただし、このトップファイブに入っているプラットホーム企業は、フィナンシャル・タイムズ時価総額でのトップテンに入った時期は皆それぞれ数十年前から昨年に至るまでまちまちですが、いずれの企業も、一回入ったら最後、ただの一度たりともトップテンから外れたことはありません。極めて高い上位固定性を示しておりますね。
これはインターネットのサイトのアクセス数も全く同じであります。もう上位のサイトは全く変更がありません。これはネットワーク効果という、テクノロジーの世界では大変有名な効果に基づくもので、大きくなれば大きくなるほど、そのこと自体が価値であるというテクノロジーの特質によります。
よって、そう簡単に上位の変更は起きないかもしれない中で、我々はかなり真剣に対応を考えなければいけない。言ってみれば、それどころじゃないよという話がたくさんほかにある中で、このことの重要性は高いだろうというふうに思います。
そうしたときに、二番目の問題点として輸入超過の話がありました。
これは、確かにソフトウエアが項目として一番高いことは事実なんですが、我々はデータに基づいて議論すべきだと思うんですね。
米国商務省が内訳を発表しております。それによるならば、オーディオビジュアルを初めとした文化的コンテンツだけで、日本は、米国一国からの輸出金額は八億八千二百万ドル、これが昨年の数字です。すなわち、九百億円近い輸入額ですね。それに対して輸出額は一億ドル台の前半ぐらいということで、文化的コンテンツ一つとっても極めて大幅な赤字であるということは直視すべきです。
さて、米国は、ミッキーマウスに代表されるように、あるいはアメコミのヒーローたちに代表されるように、古い作品での輸出が極めて強い国です。ドラキュラ、フランケンシュタイン、こうしたことも挙げられますね。ですから、保護期間の延長は、彼らにとって、いわば著作権使用料の収入増加に大幅に寄与するでしょう。
日本です。アニメ、ゲーム、確かに力強いものがあります。私も非常に心強く感じています。しかし、それらはごく最近の作品ばかりです。保護期間の延長によって海外からの収入はふえません。当面はそんな時期はやってきません。
我々は、現実に即した話をすべきですね。今後、海外に打って出る、日本は輸出で、コンテンツで稼げる国になるんだとおっしゃるのなら、稼げるような制度をつくろうじゃないですか。それと逆行する制度をつくりながらコンテンツで稼ぐ、これはおかしいことだと私は思います。赤字が固定するような制度をつくりながらコンテンツ立国はできません。
三番目、非親告罪化。
確かに、個別で原作のまま利用する、しかし許可がなかなかとりようがないものというのはあるわけです。繰り返しになりますが、企業や研究機関あるいは教育機関での資料のコピーは、現実には許可のとりようのないものもたくさん入ってきているんです。複製権センターのようなところでは許可のとれないものもたくさん入ってくるから、現実に行われておりますね、原作のまま使われています。
あるいは、解析用のビッグデータの第三者提供。さっき一言触れただけでしたが、恐らく、これが進まないとAIネットワーク化は到底産業振興できません。現行法の解釈上、恐らくこれはできません。四十七条の七というのがあるんですが、解釈上恐らくそこまではできないだろうと考えられている。商用アーカイブや商用オンライン講義もしかりです。これらに対しては、萎縮が進まないような運用が非常に重要になるだろうというふうに思います。
最後の論点です。いろいろなことが議論できる中で、今それを前倒し立法する理由は果たして何だろうということですね。
ほかの分野のことは、私は専門外ですからわかりません。しかし、知財に関しては日進月歩だということだけは申し上げられる。将来を見越した議論などはできない。
非親告罪化の今の議論にしたところで、政府、政治家の皆さんの努力は我々は大いに感謝するが、最初に問題提起したのは我々です。我々が問題提起して、こんなことが大きな問題になってくるよと言って、その声を酌み上げていただいたんです。三年先の状況を読めていないじゃないですか。なら、なぜ今ルールをつくるのか。
例えば、保護期間の延長に関して、なぜか孤児作品の対策だけすればいいというふうに議論が絞られてしまっていることを感じますけれども、先ほど来データが出ているように、孤児作品は過去の全作品の五〇%にしかすぎません。残りの五〇%は、捜せば権利者が見つかるんです。でも、メガコンテンツについて捜せますか、そのコストを負担できますかという話です。できません。ですから、ギガコンテンツ発信なんかはできないんです。孤児著作物対策だけではこれはできないんです。
では、保護期間延長に対して本当にダウンサイドをとめるなら何をするか。
アメリカでローレンス・レッシグという教授がかつて提唱したのは、登録した作品だけ保護期間を延長するというアイデアです。大変合理性のあるアイデアです。これはあと二年あればつくれるじゃないですか。
長くなりました。こういう議論をぜひ推進派の皆さんとこそしたいなと思ってきょうは参りました。
○畠山委員
ありがとうございました。
ISDSにかかわって、鈴木参考人、岩月参考人、ちょっと時間の関係もありますので、お二人に初めに質問をさせていただきます。
まず、鈴木参考人にですけれども、ISDSは国民的にもなかなかわからないと言われておりまして、先ほどからあるように、過去に条約で触れられていることではありますが、日本共産党としては、TPPに反対の立場ではありますけれども、やはり中身はこの機会に国民的によく知られておく必要はあると思っております。
仲裁人が三人ということで、いわゆるそれぞれの当事者国と、合意に基づいて第三人目、合意されない場合は世界銀行などからですか、ということになりますが、法理による解決ということでこの条項がつくられてきた中で、いわば上告ができないような形になっている。つまり一発勝負のような形で裁定されていくという点では、これは、法理に基づいて考えれば、そういう解決すべき問題点はあるのではないかというのは素朴に思います。その点での御見解をお聞かせください。
そして、岩月参考人にお伺いします。
私は、間接収用の問題に非常に強い関心を持っています。
そもそも収用自体は、直接収用が、途上国といいますか植民地支配がされていたときから、独立する際にいろいろ直接に収用される事態があったことに対して対抗するものとして始まったというふうに私は理解しております。
それに比べて、間接まで収用が広がってきた経過といいますか、そこにやはり今回のISDSとかかわる本質があるのではないかと思います。間接収用をめぐれば濫訴防止の議論ともかかわってくると思いますので、間接収用とISDSの関係について、岩月参考人の御見解をお聞かせください。
○鈴木参考人
御質問ありがとうございます。
上訴制度がないということが御質問の趣旨であろうかと思います。
確かに、ISDS、特に、仲裁に基づく判断プロセスにおいて不服申し立て審がないということは、これまでも懸念事項として挙げられてまいりました。いろいろな形でこれを補完しよう、あるいは修正しようという努力はなされておりますが、現在のところ、上訴制度は存在しないまま、通常の仲裁裁判と同じような形で進行しております。
なお、幾つかの理由がございまして、一つは、上訴制度がないことによって判断の統一がとれないのではないかというのが批判の一つの原因でございました。
ただ、今回のTPPにおきましては、御承知のように、その条項の中に、TPPの条項の解釈についてはTPP委員会が一定の解釈を示すことができ、それを示した場合には仲裁廷は拘束されるという形になっております。ですから、TPP加盟国の間では、その委員会を活用することによって一定の法的安定性が確保できる道がつくられたというふうに考えます。
それからもう一つは、確かに個別事案でございますので、抽象的なルールの解釈の統一だけではなくて、個別事案についての上訴といいますか、レビューが必要になるというのが御質問の趣旨だと思います。
おっしゃるとおりでございますが、このTPPでは、今、現状の仲裁制度を前提にしてつくり上げられておりまして、将来、上訴が設けられる可能性を否定しておりません。
そして、中の規定では、上訴が構築される場合にはそれに従った検討を行うということが条文上明示されておりまして、将来、上訴制度を置くことについて道も開かれているということでございますが、現状は、今使われておりますICSIDあるいはUNCITRALの仲裁制度と同じ仲裁制度のもとで判断がされるという構造になっております。
御質問ありがとうございます。
○岩月参考人
御質問のとおり、ISD条項は、一九五八年に西ドイツとパキスタンの間で結ばれたものが最も古いとされています。途上国で直接の収用、没収のようなことがされて資産が奪われたときの最終的な救済手段として構想されました。
それがどのように間接収用を含むように変貌していったかというと、一九九四年に発効したNAFTAで、米国の企業がカナダ、メキシコの環境規制にかかわる措置について相次いで提訴をする。負けたり勝ったりということを繰り返すわけですけれども、そういうことがされた結果、おお、このような場合にも収用と言えるんだと、事後的になっていくような経過をたどっています。
アメリカの場合は、既に間接収用の法理というのはその前から確立しておりましたので、それが三国に広がっていったというような経過だと思うんですが、そういう次第で間接収用というのが広がっていったということです。
だから、最終的に国際慣習法というふうな縛りがかかっておるというふうに言われますが、もともとの出自は、多分、アメリカの州と州の間の通商に関する慣習を国際慣習法というふうに呼んでいたんだと私は理解しております。
以上です。
○畠山委員
時間がまだ少しありますので、岩月参考人、もう一言お伺いしてよろしいでしょうか。
過去のさまざまな事例が先ほど述べられましたけれども、主に一国、とりわけアメリカが勝利することが多くあったというふうな事実を述べられていましたが、一言で言ってその理由というのは何だとお考えですか。
○岩月参考人
それはちょっとよくわかりません。訴訟社会で非常に鍛えられているということは、アメリカのローヤーについては言える。
だから、なぜアメリカ企業だけが勝っているかということはちょっと言いにくいんですが、アメリカ政府が負けない理由だけはよくわかります。アメリカ政府を負かしてしまうと、ISDの本家本元で、ISDが嫌だということが完全に顕在化してしまうからであります。
ちなみに、日本政府は、これまで投資協定を結んでいたけれども訴えられたことがないじゃないか、非常に公正な扱いをしているから訴えられる心配はないというような御意見がございますが、では、NAFTAのカナダを見てみましょう。三十八件訴えられています。そのうち、アメリカから三十七件、メキシコから一件でございます。カナダは非常に不公正なことをしている。全六十九件のうち、カナダが訴えられたのが三十八件でございます。そのことはちょっと御念頭に置いていただいた方がいいかというふうに思います。
○畠山委員
ありがとうございました。
北海道へ公聴会に行ったときに、知的財産にかかわりまして、陳述者の方から、さらに勉強会がしたいなということを中小企業の方の立場から言われました。
模倣品対策などは、締約国以外の国で広く起きていることから、TPPにかかわる分野とそうでない分野の区別と整理をした議論が必要ではないですかと私は述べたんですけれども、そのとおりですという御発言で、国会ではまだそういう議論がされていませんので、やる必要があると思っています。
また、ISDSにかかわっても、鈴木参考人からTPP委員会の性格についても御発言がありまして、これは今後、私も質疑したいと思っているんです。
TPPは生きた協定と言われる中で、その司令塔や中身、組織の機構のあり方についても十分な議論が必要だと私は思っていますので、きょうの参考人の皆さんの御意見をもとに、さらに審議を深めていきたいということを述べまして、私の質問を終わります。

第192回国会 環太平洋パートナーシップ協定等に関する特別委員会 第9号  平成二十八年十月二十八日

○畠山委員
日本共産党の畠山和也です。
きょうは時間が短いですので、早速質問をさせていただきます。
きょうは、第十一章の金融サービスについて伺います。
TPPは、広くサービス分野も対象となり、国内外の競争にさらされます。そこで、心配の声が上がっているのが共済の分野になります。これは同僚議員がきょうも午前中、質問を行いました。
御存じのように、共済の原点は助け合いです。営利を目的としないで、仲間同士や団体の構成員同士で自主管理のもと運営するものです。共済は保険業法の適用を受けることとなりますが、特例となる小規模な自主共済ですとか、業法の対象外となるJA共済などの制度共済もあります。営利目的や不特定多数と契約する保険とは原点も、あるいは運営も違うものです。
そこで、この第十一章の金融サービスの章ですが、これは保険などについて書かれている章です。中に、第二条三、四、五項などで適用されない例外や留保表などもあります。
そこで、聞きます。
きょう午前中も石原大臣の方に、この共済が全ての金融サービスに含まれるかと同僚議員が質問したところ、含まれるものも含まれないものもあるなどの答弁もありまして、また、この留保表や実際の例外などに規定となるのかならないのか、少し整理して改めて答弁してください。
〔委員長退席、菅原委員長代理着席〕
○石原国務大臣
まず、そもそもの金融サービスの章のところに共済という形で特有の規律は存在していない、これが基本でございます。
そして、畠山委員が御指摘になりましたように、共済にもさまざまな形がありますので、それによってそれが適用除外に当たるのか当たらないのかを判断する必要があるという形で、きょう午前中御答弁をさせていただきました。
さらに、では具体的にどんな共済がどうなのかということをお話をさせていただきますと、もう委員が御指摘のとおり、共済というのは多様な形がございます。法令上の根拠の有無、提供主体の性質、それによって金融サービスの適用除外を受けるか受けないのかということが決まってくる。仮に一〇〇%国家がお金を出しているような共済であるならばこれは適用されない、このように整理をさせていただいております。
個別の共済について金融サービスが適用されるか否かについては、個別の共済の根拠法令等を精査する必要がありますが、一般論として申し上げるならば、先ほど来申し述べさせていただいているように、共済の活動またはサービスに政府の財源が使用されている場合には第十一章二条三項(b)に基づいて適用除外を受ける可能性がある、こういうふうに理解をさせていただいているところでございます。
○畠山委員
つまり、政府がお金を入れている共済、例えば、小規模企業共済、中小企業倒産防止共済、中小企業退職金共済など以外は、一般に共済もこの金融サービス章の対象となり得るということで確認いたします。
それで、では何にこの共済をめぐって心配の声が上がっているかといえば、保険と同等に競争環境に置かれるという心配の声です。
そこで、USTRなどからの問題などはずっとこの委員会でも出されてきたわけです。
共済について言えば、例えば二〇一一年、このように書かれています。米国政府は、対等な競争条件を確保するため、共済は、金融庁による監督下に置かれることを含め、民間セクターのカウンターパートと同じ規制水準、監督に服するべきだと考える。
また、二〇一五年には、米国政府は、金融庁規制に服さない保険事業を有する共済に対して金融庁に監督権限を与えるという方向の進展を逆転させる動きについて引き続き懸念を有する。これはどういうことかというと、保険業法の改正が一度ありましたよね、これに対して逆転する動きではないかというのが米国政府の捉え方です。
こういうような要求が背景にあって、共済団体から心配の声が出るのは、私は当然だと思います。
そこで、聞きます。
このようなUSTR、米国からの要求が背景にあって、今回のTPP協定では共済は留保あるいは例外などとはされていないのではありませんか。いかがですか。
○石原国務大臣
先ほども申しましたとおり、金融サービスのところで共済に関する規律はないと承知をしているわけでございます。
そして、委員は今、アメリカとのお話をされましたので、サイドレターの中での話を付言させていただくとするならば、サイドレターの中にも共済制度は入っておりません。
ということは、議論にも上がらなかったし、団体がそういう意見を言われたということは事実かもしれませんけれども、今回の協定の中において、これをどうしろ、ああしろという議論は日本が協議に参加してから一切なかったというふうに理解をしているところでございます。
○畠山委員
それならば確認をいたします。
共済の分野で日本政府は米国にどのような立場で主張をしてこられたでしょうか。これは総理、答弁よろしいですか。
○石原国務大臣
日本のスタンスについてのお話がございました。
二〇一六年の外国貿易障壁報告書に対する日本政府のコメントとして、共済に関して日本のスタンスを明確にお示しさせていただいておりますので、では、それをちょっと読み上げさせていただきたいと思います。
協同組合による共済は、一定の地域、職業または職域でつながる者が構成した協同組合の内部において、組合員みずからが出資し、その事業を利用し合うという制度であり、広範な組合員間の活動の一環として行われるものである。このため、組織の特徴を踏まえた独自の規制が必要であり、これらの共済事業はそれぞれの組織の所管官庁において、法律の範囲内で、その特性に応じて適正に監督されている。
これは事実を明らかにしているんだと思います。
よって、このような規制スキームが共済に競争優位性をもたらしているとの指摘は当たらない。
最後のところが全てだと思いますけれども、アメリカ側からとやかく言われたときに、競争優位性を、共済という制度であるからこそ、他の保険に対して持ってはいないということを政府のスタンスとして明らかにしたものだと承知をしております。
〔菅原委員長代理退席、委員長着席〕
○畠山委員
総理も同じような認識でよろしいですか。確認します。
○安倍内閣総理大臣
同じであります。
○畠山委員
今読み上げていただいたUSTRに対するコメントの共済の部分というのは、極めてまともなことをきちんと書かれているんですよね。組織の特徴を踏まえた独自の規制が必要なものだということは、冒頭に私が述べた共済の歴史や成り立ち、特徴からいっても当然だと思います。
ですから、そうであるならば、なぜ金融サービス章で共済は留保や例外にしなかったのかという疑問が湧きます。TPPのもとで、それならば、共済は結局のところは開放の対象となるのではないかという疑問が湧くのは当然だと思います。違いますか。
○石原国務大臣
先ほど来御答弁をさせていただいておりますように、共済というものがそもそも議論の俎上に上がらなかった以上は、今、USTRに対する我が国の反論をさせていただいておりますけれども、アメリカ側からもそのようなものがなかったと私は承知しておりますから、留保がなかったのではないかと推測をするところでございます。
○畠山委員
議論の俎上に上がっていないから留保するかしないかではなく、日本政府として、先ほど述べたように、共済は大事な役割があるということを述べているわけですから、これはきっちりと物を言う必要があるのだろうと私は思うんですよ。
そこで、TPPというものは、この間議論がありましたように、いろいろな仕組みで、農産物の関税等もそうですが、非関税障壁においても国内法がゆがめられていくおそれがある仕組みがいろいろな章にちりばめられていると私は思います。
例えば、この第十一章の第十九条、金融サービスに関する小委員会があります。これは、どこの章にも小委員会はあることはきょうも午前中から議論されました。この小委員会は、締約国の金融サービスに関する問題について検討するとしています。
日本の共済制度はこの検討の対象にはならないと言えるのでしょうか。ちなみに、相互主義の話は理解した上で聞いております。石原大臣。
○石原国務大臣
ただいまの畠山委員の御指摘は、金融サービスの十一章十九条について、小委員会の対象になるのかならないのかということで、コンセンサス方式のことはもうわかっていらっしゃるということでございますよね、相互主義だからという点。
その上で言わせていただくならば、小委員会の決定はいずれの国からも反対がないことが条件になっておりますので、委員の御懸念は当たらないのではないかと思っております。
○畠山委員
懸念の問題ではなく、客観的に対象となり得るのかどうかをお聞きしています。もう一度答弁してください。
○石原国務大臣
懸念という言葉はちょっと改めまして、要するに、アメリカから日本に対して、先ほどの話のように、共済は他の同様な機関に対して優越的な地位があるんじゃないかということでそういうものが起こったとするならば、委員の御指摘は、制度を改めろ、そういうものがあるのではないかという御懸念ではないかと思ったから、そういうふうに懸念という言葉を使わせていただいたんですが、もし仮にそういう事態だとするならば、日本国が制度を変更することはないと明確に断言をさせていただきたいと思います。
○畠山委員
何かかみ合っておりません。客観的に対象となり得るのかどうかということだけを聞いています。もう一度お願いします。
○石原国務大臣
ちょっと私の理解が違ったら恐縮なんですけれども、小委員会で問題に上げることは何でもできるわけですね。何でも問題にできる、それは全ての小委員会がそうである、これは午前中の議論で明らかにさせていただきました。
それで、委員は、共済についてはどうなんだという畠山委員の御質問だと思いますので、我が国のスタンスは、先ほど、USTRに対する我が国の反論という形で、優越的な地位を持っていない、イコールフッティングで事業を行っているという解釈を反論として申し述べさせていただいている以上、我が国の国益に反するような、すなわち、我が国は先ほど言ったように考えているわけですから、それに対して制度変更を求めてきても制度変更は行わない、こういうふうに理解をしていただければと思います。
○畠山委員
冒頭にありましたように、一般的になるかどうかといえばということで聞いたので、その後のことは、おっしゃられる答弁で、日本としてはそういうような意思はない、言われても変えないということは、それはそれで別の話で聞いていたわけです。ですから、対象となることは、否定はもちろんできません。
もう一つ伺いたい。
第二十五章に規制の整合性という章もあります。ここでも同様に、各締約国がルールを一致させるための章でありまして、同じように、第二十五章も第八条の定めで小委員会がつくられることになっています。ここの特徴というのは、利害関係者が意見を提供できる仕組みができているということになります。
同じようなことを聞きます。客観的な、一般的なことで結構です。共済はここでも対象として取り上げられないということはないはずです。そうですよね。
○石原国務大臣
先ほど御答弁させていただきましたけれども、全ての問題について取り上げることは理論的にはあり得るということが前提でございます。
○畠山委員
そういうことでありまして、問題はここからです。
相互主義だから日本がうんと言わなければ変わらないとか、先ほどから述べているように、共済は日本は守るべきだということだから変わらないということを主張されてきました。しかし、TPPにおいては、協定文書を真ん中に置いて、これまでも並行協議をしてきましたし、サイドレターという形などでいろいろな約束はされてきております。
この委員会では、その米国との書簡、サイドレターについてはさまざまな委員が取り上げました。食の安全あるいはかんぽ生命保険など、米国から要求されっ放しじゃないかという中身です。また、昨日は、我が党の笠井亮議員が、将来の保健医療制度まで議論の対象としているではないかと指摘しました。これらの指摘に対して、政府は、サイドレターに法的拘束力はないということを答弁し続けてきました。
そこで、先ほどから石原大臣も答弁されていた、二〇一六年外国貿易障壁報告書に対する日本政府のコメント、これをずっと読んでみてびっくりしました。一ページ目の概観のところに、サイドレターについて触れているところがあります。後ろの方が持ってきていると思いますよ。石原大臣、ここに何と書いてありますか、サイドレターについて。
○塩谷委員長
速記をとめてください。
〔速記中止〕
○塩谷委員長
始めてください。
○畠山委員
では、中身、そのお持ちのコメントの部分をお読みいただけますか。
○石原国務大臣
済みません、サイドレターは二国間でやるもので、私の方で持ち合わせておりませんで。
報告書のところを読ませていただきます。
「「TPPに加え、米国は、通商に関連した日本との諸問題について、二国間及び他の場で取り組んでいく」との記述があるが、我が国の通商に係る諸制度については、農林水産品の貿易に係るものを含め、WTOと整合的に実施しているとの認識である。また、TPPについては、譲許表を含む協定や協定に関連して作成された文書(いわゆる「サイドレター」)に従って着実に実施していく考え。」このように記述されております。
○畠山委員
つまり、共済の大事な必要性についてはこの文書で書きつつも、一方で、この概観で、サイドレターに従って着実に実施していく考えだということが書かれております。
共済については、確かに二〇一六年のUSTRのものには書かれてはおりません。しかし、この間、先ほど紹介したように、各年において、共済に対してのイコールフッティング、さまざまな規制の緩和ということは要求され続けてきました。ですから、TPPの協定はもちろんですが、並行交渉、あるいはサイドレターなどを通してこのようなことが実現されていく、着実に実施されていくということがあるのではないかという疑念は当然湧きます。
総理、この事実を御存じだったでしょうか。
このようなサイドレター方式だけでなく、USTRは、外国貿易障壁報告書で次のようにも書いています。「TPPに加え、米国は、通商に関連した日本との諸問題について、二国間及び他の場で取り組んでいく。」このように、TPPに加え、さまざまな形でこれまでの要求を通していくというわけですから、共済はもちろんその対象になるでしょう。
総理、これは最後ですから、総理です。
共済制度をきちんと守れるとコメントの中でも書いていたことがちゃんとできるかどうか、総理がきちんと答弁してください。
○安倍内閣総理大臣
TPP協定における金融サービス章には、共済特有の規定は存在をしておりません。そして、保険等の非関税措置に関する日米間の書簡においても共済に関する記述はないわけでありまして、一番最初に石原大臣から読ませていただいたような我が国の方針は、これは全く堅持される、このように考えております。
○畠山委員
二重、三重に国内の制度を変える仕組みを持つのがTPPだということを先ほど述べました。また、日本は、米国と書簡を通じて、自主的に変更する形でTPPの中身に沿っていける、このサイドレターの道が開かれるということもきょう私は指摘をしました。中身においても、実際の実行のやり方も、これでは容認できないやり方です。
時間がありません。まだこの続きを議論しなければなりません。さらなる地方公聴会や中央公聴会も必要です。これらを受けた審議も必要です。徹底審議を引き続き求めて、私の質問を終わります。

第192回国会 環太平洋パートナーシップ協定等に関する特別委員会 第8号  平成二十八年十月二十七日

○畠山委員
ありがとうございました。
続いて、中原先生にお伺いします。お聞きしたいのは、酪農、畜産にかかわってです。
北海道酪農は、つい先日まで、三年連続酪農家が二百戸、年間離農、離脱するという状況などもありました。それで、TPPがあろうがなかろうが、生産基盤の強化、対策が必要だということも言われてきました。
私も、比例北海道選出で、多くの酪農などの現場は見させていただいたつもりではありますけれども、TPPのもとで勝てる農家というイメージが率直に言って私は湧きません。
規模拡大やコスト削減なども政府、農水省から言われていますが、おのずとそれは投資の拡大を生むことになります。ただ、先ほどからあるように自然災害ですとか、あるいは牛を相手にすれば病気なども起こるわけであって、その場合、被害が広がったときに、年に一頭しか産めない牛ですから、生産基盤を大きくしていくということが急速にできるものではないというふうに思うわけです。
ですから、こういう特徴がある酪農、畜産等ですから、その中において、今回のTPPにおいてかなり関税などは削減されていき、政府は乳製品や畜産対策のセーフガードもあるということを言いますが、これは国会で私も議論しましたが、その実効性については議論になっているところです。
このような状況を踏まえて、政府の酪農、畜産の対策実効性について御見解をお聞かせください。
○中原准一君
やはり、酪農というのは固定資本装備が大きくて、単年度でもうかるもうからないという問題ではなくて、かなり長期のスパンでやっていかないとリターンが来ない、そういう産業だと思います。
ただ、消費地のサイクルというのは非常に短くて、日本の場合、まだ飲用乳中心のマーケットなものですから、そこで厳しい状況が出てくる。ただ、今、府県の方はやはり北海道以上にリタイアしていく店舗がありまして、北海道は残った酪農家で三百八十万トンぐらい年間搾って全国の生乳の五二%ぐらいは引き受けているんですけれども、これは限界ですね。つまり、別海のあさひ農協さんに伺いますと、農協自身が介護のケアをしないと集落がやっていけない、こういうお話です。
ですから、やはり、単に規模拡大で搾ればいいだけではなくて、本当に人々の毎日の生活、そして人々のライフサイクルに対してどうケアをしていくのか、そういうような地域政策というのは北海道から発信していく必要があるだろうと私は思います。それは、TPPあるなしにかかわらず、大事な問題だと思います。
全国の減産を一手に北海道は引き受けているんですけれども、残念ながら、北海道も水害で、直接的なダメージはあれなんですけれども、やはり十勝、新得とか十勝清水、これは巨大酪農地帯なので、ここのダメージはやはり大きいわけで、もう九月から減産になっちゃっているんですよね。だから、農水省でも、年明けにバターを七千トン輸入しなきゃいけない、こういうような状況ですから、本当にもう大変な状況です。
○畠山委員
ありがとうございました。
続けて、崎出専務さんにお伺いいたします。聞きたいテーマは、国内向けと輸出向けをどう考えるか、基本的なことについて伺いたいと思っています。
冒頭に、台風被害で噴火湾の方を回ったということを私述べましたけれども、今回の台風被害のみならず、ことしはへい死が多かったというふうに聞きました。ザラボヤも、一旦とまったものも、ことしはまた発生が多かったということもあわせて伺いました。
噴火湾ですから二年とか三年で出荷する。オホーツクなどでは天然物を含め四年とか五年ということで、酪農ともこれは関連もするでしょうけれども、その一年で、稚貝であったり、物が入ってこなかったり、そこで脱落したりすれば、二年後や三年後においての生産量に影響が出てくるのではないかということが養殖ホタテなどの構造であろうというふうに思います。そこで安定供給をどうするかということは、現場の皆さんと漁連の皆さん、いつも御苦労されているというふうに私は感じています。
そこで、以前に水産経済新聞で崎出専務さんのインタビューを拝見したときに、国内販売を主体としつつ、その際いろいろな変動が起こり得ますので、輸出を需給調整として行うという役割分担についての考え方を拝見いたしました。もちろん輸出自体は伸びてきていることもありますし、ただ、きょうも一言、途中で、国内と海外向けについては両軸でという一文も資料の方には書かれております。
私たちは、輸出の戦略性については否定することはもちろんないんですけれども、この間のTPPの議論をめぐって、第一次産業における国内の安定供給と輸出そのものについての何か議論が逆転したり、軽重が少し反対になっている側面もないのかなということは率直に感じることがあります。
そこで、国内の安定供給と輸出向けのバランスやTPPにおけるこの間の議論で、崎出専務さんの御見解をお聞かせください。
○崎出弘和君
今、畠山先生の方からの御質問で、最初に一つは、安定供給の体制をどうするかという問題がありますね。
噴火湾とオホーツク、両地区が今非常に大減産になっております。オホーツクについては、平成二十六年度、冬の大しけで、新規漁場が中心なんですが、その前の年にオホーツク地区で三十二万トンあったホタテが、二十二万トンに一気に十万トン減ってしまった。ことしは十八万トンということで、さらに減ってしまった。四年間続くと。ですから、来年まで水揚げ減少が続いて、再来年揚げる場所につきましては従来どおりの稚貝放流をしていますから、しけ被害だとかそういうものがなければ三年後にはまた戻ってくるとは思っているんですが、やはり、適正漁場、それからしけに強い漁場をどうつくるかというのが非常に大切なんですね。
今、各漁協さんというのは、相当海底調査をしながら、今回の冬のしけというのは、やはり適正漁場でないところの貝が多く死んでいる面もありますので、そこら辺を再度見直ししながら、しけに強い漁場をつくりながら生産回復、そして、最近のしけなんというのは非常に温暖化の傾向が強くて、流氷が来ないとかいろいろありまして、そこで大きな被害が出ていますので、改めて、浜もそこら辺を意識しながら、また、道の水産試験場とも我々一体となってしけに強い漁場づくりをやっていますので、そういうような対応をしてきております。この回復というのは、何もなければ平成三十年、そこら辺から戻ってくるのかなと思っています。
それで、噴火湾ですね。噴火湾も、去年が十万トン、ことしが五万トン、そして来年は三万トンぐらいという計画、三万から三万五千トンかなと思っています。これは高水温があったり、ことしの場合は台風被害があったり、相当、噴火湾の漁業者もつるす貝の枚数とかを調整しながらきちっとやっておるんですが、やはりこれも、天然の海水が、噴火湾というのは入れかわるんですよね、親潮と対馬暖流が。それがなかなか入れかえが遅くて、水温が下がらない。
ホタテは高水温に弱いですから、二十四度、五度以上になっちゃうとへい死しやすくなる、活動がとまって餌をとれなくなってへい死していくという要素がありますので、そこら辺も、噴火湾の漁協それから水産試験場とも、へい死対策ということで、水温が高い場合にはどのような漁場に持っていって、水温が低いところに移設しながらへい死を防いでいくかということもやっています。
これは長い歴史の中で既にやってきたはずなんですが、やはり最近の極端な天候変動でこのようなことが起きていますので、改めて、この極端な天候変動に対応するような、天然の地まきのものも垂下養殖のものも、今対応策を行政と一体となってやっている状態にあります。
私は、水産経済新聞にもいろいろしゃべりまして、漁連としては、やはり国内消費者を最優先するというのは当然なんですね。日本の一億二千万という、世界でもGDPが三位の裕福な、ある意味、日本というのは裕福な国だと思います、まだまだ所得も高いし。その中で、魚食文化があって、そのマーケットを無視して、まだまだ日本よりも少ない魚介類購入量、供給量の国に売っていくのは、順番としてはやはり国内供給をしっかりつくり上げていくというのが大事だと思っています。
ただ、やはり今現実論として、日本の消費者が魚介類の購入をどんどん減らしてきている。それは、海外の輸入水産物を、今はなかなか買い負けしていますので何でもかんでも買えるという状況ではないんですが、やはりそういう中で、末端量販店さん、小売店さんも売りやすい、消費者が買いやすいような製品は、輸入ならできるんですよね、定規格、定量とかいろいろありますので。そういう面では、国内の水産物はなかなかそういう面に行かないということもありますが。
そういう中では、我々、そういうような形に対して、天然ですとか、ふぞろいでもいろいろ国内で買ってもらう、値段は今高いですけれども、それをどう消費者にふやしてもらうかということは、食育ですとか、それから北海道産の優位性ですとか、高鮮度ですとか、そういうものを持ち合いながら国内消費者をふやしていきたいと思っています。
輸出というのは、これはなぜ先行していくかというと、国内というのは、やはり我々供給者側、サプライヤーが在庫を持ちながら、末端、東京でも大阪でも大消費地で在庫を持ちながら売っていくという非常に経費のかかる商売をやらなきゃいけないです。これは当然ですね、今の日本の物流という中では。輸出というのは、ロットをまとめてどんと輸出できちゃうんですね、コンテナごとに。それで現金決済していくという流れ。今のホタテでもサケでもそうなんですが、輸出価格が先行して出てしまうんです。去年までは、百二十円台という一年間通しての円安ですから、その中でどんどん出ていってしまったという経緯はあります。
それに対して、我々、経済原則の中で、これはどうしてもとめながら、値段を、ついているコストのものを安くということにできないのはあるんですが、これは今の、国民が魚をなかなか食べてもらえないという傾向の中で、また輸出がどんどん高い値段で持っていってしまうという、世界的に需要が伸びていますので、その中で、今試行錯誤をしながら、漁連としては、やはり国内の大きなマーケットで、販促事業なり食育なり、特に昆布なんてそうなんですよね、こういうものもどんどん減っていっています、そういう中で、何とか国民の魚食に対する意識を高めていきながら、子供たちにも食べてもらいながら、維持して、そして国内供給を少しでもふやしていきたいと思います。
これは難しいんですよ。やはりアメリカ、中国が二千円で買ってくれる、それが国内では千五百円だとなれば、これはどうしても、とめて売っていくというのはなかなか難しいんです。こういう地道な努力しか私はないと思っています。ただ、ひたすら輸出にどんどん出していって、先ほど問題点を説明させてもらいました、粗悪品をつくられて、日本産の水産物の高品質なものの品質を落とされてそれで日本産で売られてしまうというのは非常にゆゆしき問題でありますので、やはりそこら辺は地道な努力が必要なんですが、国内消費というのを第一に考えて、そして需給バランスという基本的な考えの中で輸出をやっていく。
先ほど、原材料輸出から加工品輸出に変えていくということがありました。もちろん、これはもう本当に、品質普及という形でもって北海道産の水産物をさらに認知度を高めて売っていきたいというのはありますけれども、基本にあるのは国内消費であり、その次に輸出であるという考えであります。ただ、国内消費の今の傾向の中で伸ばしていくのは非常に厳しい面があるということは、御理解いただきたいと思います。
○畠山委員
ありがとうございました。
最後に、山居書記長さんにお伺いいたします。
かつてウルグアイ・ラウンドから、当時のことも御存じであろうというふうに思います。TPPでは、除外になったとか対策がどうだとかということはあるんですけれども、農産物でいえば、過去最大の輸入が見込まれる関税撤廃等であること自体は事実であります。セーフガードの撤廃なども、それぞれの年は違いますけれども、あることからもそれは明らかです。
そこで、山居書記長さんからは、少し歴史を振り返って御見解を伺いたいんですが、ウルグアイ・ラウンド、ガット以降も、例えば米の対策について言えば、当時もコスト削減ですとか規模拡大ということが言われました。基本は今とそう変わらないんだろうと思うんです。ですから、当時から含めて、TPPでもまた同じようなことが繰り返されるのではないかという点では私も不安を感じる者の一人ですが、今回の米をめぐるTPPの対策を、過去の経緯も含めてどのようにお考えか、お聞かせください。
○山居忠彰君
ありがとうございます。
先生のおっしゃるとおりで、歴史的に振り返ってみると、WTOは、多様な農業のあり方ということで交渉していたんですけれども、でも、やはり国内においては、構造改革、いわゆる近代化、機械化、規模拡大というようなことで、どうもデジャビュというか、同じものを繰り返している、そんなような気がしています。
ことしの五月十八日に、アメリカの国際貿易委員会がちょっと興味深い内容を公表しているんですけれども、今回のTPPで、アメリカが輸出がふえて利益をこうむる、この利益を上げるうちの四分の三は日本からだということで、日本がターゲットになっている。
ということは、日本の中でも、先ほど申し上げたように、やはり北海道が一番影響を受けるということになってくると、これは歴史的に見ても、今、NAFTAで、アメリカからトウモロコシが安く入って、メキシコの農家が総崩れになっちゃって、結局、アメリカに難民、移民になって入っていって、トランプさんじゃないけれども、壁をつくらなきゃならなくなってしまう、こういうことを考えていくと、非常に危惧もするんですけれども。
我々は、北海道の農民が影響を受けて困るというのは、やはり農業というのは土地と一体化している、あるいは自然条件と一体化している。ですから、災害も当然受けます。それと、季節、春夏秋冬、これらとも一体化しているということです。
さらに言えば、生活と営農、これも一体化しているということで、しかも、北海道は専業農家が多いということで、近くに大きな都市がないものですから、どこかに逃げる、農家をやめてそっちに行ってという移動が簡単にできない。そして、離農がふえていくとやはり農村コミュニティーも崩れていく。その中で、総合農協だって崩されちゃうと成り立たない。我々は、唯一の頼りの綱が、やはり命綱は総合農協なんですけれども、農協を頼りにしていても、これは何か難しい問題になっていきそうだ。
さらに、もっと言えば、北海道は、半分雪が降って耕作ができない、その中で、病虫害に強いという利点もありますけれども、輪作体系を組んでいる、これは歴史的にもそうなんですけれども、この輪作体系が崩れるのではないかという心配も出てきます。
そして、もっと言えば加工ですね、加工分野。先ほどもお話ありましたように、北海道は加工に従事する人、会社が非常に多いんです。ここのところも影響を受ける。
もとをただせば、農業というのは、種子、肥料、農薬、農機具、それから輸送、そしてまた小売に至るまで非常に裾野が広くて、こういうところにも全部影響してくるのではないか。
そして、これも先ほどお話ありましたけれども、TPPがあろうがなかろうがということで、これは本来は、TPPがあろうがなかろうが、日本の農業をしっかり強くして世界に打って出る、強い農業、攻めの農業、所得倍増というのは、それをやってからするべきであって、それをしないうちにいきなりやれということは、さあ、潰れなさいというのと、あるいは離農促進というのと同じことなんですね、イコールなんですね。現場の受けとめがそういうことになるものですから、非常に不安が募って、やはりこれが、このままの政策ではいかぬということが不満にもなって行動に移っているわけなんですね。
これをまずしっかり解決して、従来からの農業対策の費用を全てTPP対策という冠をつけること自体おかしいんじゃないか、そういうようなことも含めて、まず、順序が逆でないか、本末転倒でないかということなんですけれども、それをしっかりやっていただいて、次のステップに進んでいただきたいということを申し上げたいと思います。
○畠山委員
貴重な御意見をいただき、ありがとうございました。
国会の審議も、今お伺いしたテーマだけでもまだまだ議論が必要だということも改めて痛感しましたので、国会での議論を深めていく立場で頑張りたいと思います。
ありがとうございました。

第192回国会 環太平洋パートナーシップ協定等に関する特別委員会 第4号  平成二十八年十月十八日

○畠山委員
日本共産党の畠山和也です。
総括的な質疑ですので、総理にしっかりとお答えいただきたいと思います。
TPPの審議は始まりましたが、協定文などの誤訳の問題、またSBS米の価格偽装疑惑などが発覚をしました。しかし、総理はTPPの批准を急いでいます。
アメリカ大統領選挙でTPPが一大争点になりました。候補の二人が反対姿勢の中、総理は本会議で、国会でTPP協定が承認され、整備法案が可決すれば、再交渉はしないとの立法府も含めた我が国の意思が明確に示されますと答弁しました。しかし、まだ批准の手続を完了している国はありません。日本だけが前のめりで、後ろを振り返ったら誰もついてこなかったということはないのでしょうか。
また、国民の声を聞いても、早い批准を望んでいないというのが多数です。資料にありますが、共同通信による世論調査においても、慎重審議を求める声は七割を超しています。また、NHKの世論調査でも、賛成、反対、どちらとも言えずよくわからないという方が半数を超えています。
政府は約三百回の説明会を行ったときのうも答弁がありましたが、その結果がこれです。説明をすればするほど、慎重に考えたい、判断すべきだということなのではありませんか。先にこのことを総理に聞きたい。
○安倍内閣総理大臣
慎重に審議をすべきだという世論調査が出ていることは十分に承知をしております。ですから、この委員会においても熟議を尽くしていくということだろう、このように思います。
一方、各種の世論調査で、TPPについては賛成の方が反対よりもおおむね上回っているということも承知をしております。
○畠山委員
肝心なことは、早く承認するかではなくて、日本国民にとってTPPがどのような協定か、徹底審議をして明らかにすることではありませんか。
批准の手続を完了していない国もただ様子見ではない状況にあることを、総理、御存じでしょうか。国民から意見を聞くなどの機会を行っている国があるのは、総理、御存じですね。
○安倍内閣総理大臣
パブリックコメントの実施ということだろうと思いますが、政府としては、交渉会合のたびごとに、関係団体等からの意見募集を十三回にわたって実施をしてきておりまして、これまでに約二百件の御意見等を承っております。
なお、オーストラリアやニュージーランド及びカナダでは、TPP協定自体の国会承認手続が不要でございます。その不要であることに鑑みてかもしれませんが、パブリックコメント手続によって国民の意見を聴取することとしているわけでございますが、まさに私たちの場合はこの国会において御審議をいただいているということで御理解をいただきたい、このように思います。
○畠山委員
国会の審議はもちろんです。他国はそれ以上に心も砕いて説明会やパブリックコメントを行ってきているということを日本政府としても学ぶべきであるし、その前のめりの、批准が先にありきのような姿勢に国民が不安を持っているということは指摘しておきたいと思うんです。
先週、私は新潟県へ行きました。農業団体の方とも懇談をしましたが、TPPはもとより、農協改革、あるいは農地の企業所有、生乳の指定団体制度の廃止などに対して、現場のこともわからずに頭ごなしに決めつける、あるいは、総理や規制改革会議に言われるたびに意欲をなくすという声を本当に聞いてきました。知事選挙で米山候補が勝利した背景にTPPや安倍農政への審判もあったのは明らかだと思います。
審議が始まる前に、強行採決かの発言もありました。また、月内に衆議院通過かの報道もあります。審議は始まったばかりです。拙速な審議や採決は許さないことを初めに強調しておきたいというふうに思います。
それで、中身に入りたいわけですけれども、改めて基本に立ち返って、国会決議にかかわって質問します。
自民党は、政権復帰を果たす前の二〇一二年総選挙で、「ウソつかない。TPP断固反対。ブレない。」とのポスターを張りめぐらせました。それに対して総理は、聖域なき関税撤廃が原則でないことを確認できたから交渉入りを決断し、今日まで至っています、交渉においては衆議院、参議院の農水委員会決議を後ろ盾に交渉してきたとも述べてきました。
その決議を守れたかどうか。決議の第一番目には、米、麦、牛肉・豚肉、乳製品、甘味資源作物などの重要五項目を除外または再協議の対象としています。
この間、春の通常国会も含めた議論では、一般論として、経済連携協定には除外や再協議の規定はない、交渉の中で決まっていくものだとの答弁がありました。総理も同じ認識でよろしいですね。
○石原国務大臣
総理も同じ答弁だと思いますが、その認識でございます。
○畠山委員
総理は同じ認識ですか。
○安倍内閣総理大臣
同じ認識でございます。
○畠山委員
それでは、米で見てみましょう。
これまで日本が結んだ経済連携協定の中で大きなものが日豪EPAでした。このときも同じように決議が上がっていますが、重要五項目は除外または再協議の対象と決議をされています。
交渉の結果、米は日豪EPAでどのような扱いになったか、総理、御存じですか。
○山本(有)国務大臣
日豪EPAにおきまして、米につきましては関税撤廃等の対象から除外されております。
○畠山委員
日豪EPAでは除外であります。
TPPでは、除外ではなく新たに七・八四万トンの輸入枠が設けられたことは事実です。本来なら、何でそうなったかと甘利前大臣に聞きたいところですが、報告を逐次受けていたという安倍総理にしたがって聞きたい。米は除外とするように交渉したんでしょうか。
○石原国務大臣
これは何度も委員会で御答弁させていただいているのでありますが、全てが決まったのは締結したときなんですね。ですから、そのときに全て決まったということで、その途中の経緯、例えばアメリカ側から自動車部品の問題はいつ決まったのかという話は公になっていないように、全てのことは最後のところで決まったというふうに御理解をいただきたいと思います。
○畠山委員
途中の経過については今求めていません。日本において除外または再協議と委員会で決議が上げられて、そのように米は除外してほしいと言ったかどうかだけを聞いているわけです。
先ほど述べたように、報告を甘利前大臣から聞いていた総理、どうなんですか。
○安倍内閣総理大臣
従来から答弁をさせていただいておりますように、我々は、国会決議を背景に、国会決議は当然相手側も、米側も他の国々も知っているわけでございますが、それを背景に厳しい交渉を行ってきたわけでございまして、一々のやりとりについては、ここでつまびらかにすることはできないわけでございますが、その結果、我々としては国会決議にかなう結果を得ることができた。しかし、国会決議にかなうかどうかは国会が御判断されることではありますが、我々としては国会決議にかなう結果を出すことができたのではないか、このように考えております。
○畠山委員
日本側が除外してほしいと言って、相手側がこう返してやりとりがあったみたいなことまで聞いていないんですよ。後ろ盾にして交渉してきたと言うんだったら、その証明を見せてほしいというのは当然の思いじゃないですか。きちんと国会決議を後ろ盾に交渉したと言うのであるならば、きちんと除外を相手国に言いましたと、そう言えないんですか。
○石原国務大臣
大筋合意の前についても資料は提示させていただいておりますけれども、国会決議がなされた後、国会決議の原文を訳して、その中に示させていただいているように、相手国に示しているという事実は確認しております。
○畠山委員
政府としてやったのかということです。
○石原国務大臣
既に公表させていただいている資料の中に、委員が今御指摘の衆議院、参議院での国会決議なるものを英訳をさせていただいて相手国にお示しをさせていただいたということは、もう既に資料の中で公表をさせていただいております。
○畠山委員
資料として示したということですが、きちんと口で言ったかどうか。資料を示しただけで、大事ですよ、ただの参考資料なのか、その資料の位置づけがわからないじゃないですか。
総理、改めて最後に伺いたい。
先ほど述べたように、この決議が守られたかどうか、この交渉過程はつまびらかにできないということは言ってきました。しかし、先ほどからあるように、国会で判断するにおいては、きちんと除外の、または再協議と政府は言ってきたかどうか。全部出せと今言っているわけではないんですよ。その最初のところで言ったのか言わなかったのか、はっきりさせてください。
○安倍内閣総理大臣
国会において、我々が国会決議を守ることができたかどうかについては、まさに結果についてそれは御判断いただくことであろう、このように思うわけであります。
先ほど、我々は、当然国会決議を背景として、しっかりと相手側にそれを示しながら交渉をしてきたわけでございまして、交渉者が何を言ったということになれば、相手側の方も、ではそれに対してどう答えたかということを問われていくことになるわけでございまして、そうなれば、例えばこれについては何を言ったのかということになっていくわけでありますから、それについては、我々としては結果をお示しをしているところでありまして、一々のやりとりについては発言を控えさせていただきたい、このように思います。
○畠山委員
一々のやりとりではなくて、政府がもともと後ろ盾にしてきたと言うんだったら、除外を求めて当たり前のはずじゃないですか。そうしたんですかと聞いただけですよ。
ですから、その後ろ盾にぎりぎりの交渉をしてきたと言いますけれども、その証明はわかりません。本当にそのようにやってきたのかわかりません。国会決議にこれでは反しているのではないかと改めて断じざるを得ないと思います。
そこで、例外をかち取ったということも総理は言ってきました。続けて、この問題について聞きたいと思います。
農業分野では関税撤廃を二割にとどめて、国家貿易も維持した、また、セーフガード措置も獲得してきたなどと総理は述べてきました。
セーフガードについて伺います。セーフガードとは、輸入量が大幅にふえたら、関税をもとに戻して輸入を抑えるという措置です。
牛肉について聞きますが、牛肉は現在関税が三八・五%です。この関税が十六年かけて九%まで減りますが、セーフガードをかち取れたから大丈夫だという趣旨の答弁で、その間に農家の経営体質を変えるという話です。そこで問題は、では、セーフガードの発動基準のとき、農家がどういう状況になっているかということを伺いたい。
牛肉に関してですけれども、直近の国内供給量と、うち国産と輸入量と比率について答弁してください。
○山本(有)国務大臣
二〇一五年の牛肉につきまして、供給量は八十二万トンでございます。うち国内生産量は三十三万二千トン、供給量に占める割合は四一%。輸入量は四十八万七千トンで、供給量に占める割合は五九%でございます。
○畠山委員
今、実際、国産が、供給量、在庫もあると言いますが、消費に占める割合は大体四割ぐらいということになるわけです。
十六年後、輸入量がセーフガードの発動基準でふえていくことになりますが、十六年後に輸入量が幾らになればセーフガードは発動されるのでしょうか。また、あわせて、その時点での牛肉の国内消費量は今よりふえるとお考えでしょうか。
○山本(有)国務大臣
現行の牛肉関税緊急措置の発動水準が前年比一七%増とされている一方で、TPPの牛肉セーフガードの発動基準数量につきましては、あらかじめ数量が決まっておりまして、発効一年目は近年の輸入量の約一割増に相当する五十九万トンでございます。二年目以降は毎年一、二%増加しまして、十六年目には七十三万七千五百トンとなっております。
発効後の牛肉輸入の見込みにつきましてでございますが、TPP交渉の結果、牛肉につきましては、関税撤廃ではなく、十六年目に最終税率九%として長期にわたる関税削減期間を確保しております。
我が国以外の牛肉の需要が急激に現在伸びておりまして、他の輸入国との買い付け競争が激しくなるという予測でございます。当面、輸入の急増は、現在のところ見込みがたいと考えております。
しかしながら、関税削減等により長期的には国産牛肉の価格が低下することが懸念されておりますため、総合的なTPP関連政策大綱におきまして、生産コスト削減などの体質強化対策を講じるとともに、セーフティーネットとしての経営安定対策の充実強化を図ることとしております。
これらの対策を講じることによりまして、関税削減後におきましても、外国産牛肉との競争が可能となるものでありまして、国内生産量は維持されると考えております。
○畠山委員
今、対策の中身までを聞いているわけではなく、セーフガード発動基準がどのような意味を持つのかということを問いにして聞いていたわけですよ。
セーフガードが十六年後発動される基準というのが七十三・八万トン、よろしいですよね。そして、私が聞いて、答弁していなかったかと思うんですけれども、その当時、十六年後に牛肉の国内消費量はふえるとお考えですか、大臣。もう一度聞きます。
○山本(有)国務大臣
牛肉の消費量につきましては予測がありませんけれども、二〇一一年を契機としまして、牛肉の消費は徐々に国内では伸びております。さらに、人口の減少等もございますけれども、今の食味からいたしまして、牛肉の消費は少しずつ増加する傾向にあるように思っております。
○畠山委員
人口減少の中、牛肉だけが、現状少しずつふえてきたというふうに言っていますけれども、大幅に伸びることは普通ではやはり考えられないと思います。
そこで、仮に現時点と同じ消費量、供給量八十二万トンとした場合の資料、グラフなどをお渡ししています。
最大輸入、十六年目のときに七十三・八万トンですから、消費量八十二万トンに占める割合は約九〇%と数字上はなります。つまり、このとき牛肉の自給率は一〇%ということになります。これ自体は、もう多くの畜産農家が淘汰された状況になるのではありませんか。つまり、こんな状況でセーフガードを発動する意味があるのか。
総理は、セーフガードでかち取れたものをこの間言い続けてきました。このセーフガードだってそうです。これをかち取れた、なぜそう言えるんですか。
〔委員長退席、うえの委員長代理着席〕
○安倍内閣総理大臣
関税撤廃が原則というこのTPP交渉の中で、特に農業分野について国会決議を、先ほど申し上げましたように、後ろ盾に粘り強く交渉しました。その結果、牛肉については関税撤廃を回避することができました。そして、十六年目に関税が九%になるという長期の関税削減期間を確保したところであります。
また、アジア地域を中心に、我が国以外の牛肉需要が急激にこれは伸びていくわけでありますが、他の牛肉輸入国との買い付け競争が激しくなる可能性も踏まえて、当面、牛肉の輸入急増は見込みがたいと考えているわけであります。
例えば、二〇〇四年、世界の牛肉の輸入量全体は三百四十二万トンでありますが、二〇一四年は五百八万トンにふえております。これが二〇二四年には恐らく七百七万トンにふえていくだろう、こう考えられているわけであります。
例えば中国も、二〇〇四年は一万トンなんですが、二〇一四年は七十八万トン、つまり七十八倍になっていったわけでありまして、それがさらに百五十一万トンになっていくだろう、こう見られているわけであります。
こういう状況分析に基づいて、今私が申し上げましたように、牛肉の輸入急増は見込みがたい、このように考えているわけでございますが、万が一輸入が急増するような事態が生じることに備えて、厳しい交渉の結果、セーフガード措置を獲得したわけでございます。
これについては、初年度の発動水準が近年の輸入量の約一割増、こうなっているわけでありますが、前年比一七%の牛肉輸入増で発動する現行制度に比べても、これは現行制度が牛肉輸入増一七%でありますから、これが一割、一〇%となるわけでありまして、現行制度に比べて発動しやすくなっていること等から、輸入急増を抑制する効果は十分にある、このように考えているところでございます。
○畠山委員
今の答弁を聞きますと、諸外国などで牛肉の需要がふえているから、ここまでセーフガードが下がっても大丈夫ですから安心してくださいというように聞こえますよ。自給率一〇%になるまで、セーフガードがこの年まで発動されない場合、そういう結果があったときに、例外をかち取れたと胸を張って言える結果かというふうに農家は思っていると思いますよ。
そこで、さらに聞きたい。セーフガードですが、農業セーフガードは、この牛肉以外に豚肉やオレンジなども対象になっているはずです。この農産品セーフガードはずっと保障されるのか、あるいは何年か後に撤廃されるのか、お聞きします。
○山本(有)国務大臣
TPP交渉におきまして、重要五品目の牛肉、豚肉・豚肉調製品、ホエーのほか、オレンジ、競走馬につきまして、セーフガード措置を確保いたしました。
これらのセーフガードにつきましては、まず、オレンジについて発効後八年目でございます。豚肉・豚肉調製品につきましては発効後十二年目でございます。競走馬につきましては発効後十六年目に、それぞれ終了することとなっております。
牛肉につきましては、十六年目以降もセーフガードが維持されるわけでございますが、四年間連続で発動されない場合は終了となるわけでございます。
ホエーにつきましては、二十一年目以降、三年間連続で発動されない場合、終了することとなっております。
〔うえの委員長代理退席、委員長着席〕
○畠山委員
つまり、全て期限つきであります。期限が来れば、セーフガードがなくなることなどで明け渡すということになりはしないか。
しかも、これは前の通常国会でも議論しましたが、十六年目を待たずして見直しとなる可能性はあります。セーフガードについても、市場アクセスのところで設置される小委員会、あるいは日本と五カ国によるいわゆる七年目の再協議では協議の対象にはなり得ることはお認めになりますね。
○山本(有)国務大臣
もちろん、再協議ですから、どの分野を再協議してもいいわけでありますが、これは相手国があるわけでありまして、再協議するといっても、合意するかどうかはこちらの権限でございます。
○畠山委員
そこで、最初になるわけですよ。交渉において、例えばお米のことでも、重要五項目で除外を本当に求めたのかどうかもわからない。結果は除外なしだったではありませんか。
総理の言う例外なるものも期限つきで、しかも再協議が迫られる対象にもなっているわけです。総理はよく、結果を見て判断してほしいというふうに言います。結果を見れば、このように、中身がわからない、決議違反は明らかでないか。それでも守られたと、総理、言えますか。
○安倍内閣総理大臣
このTPPにおいては、いわば関税撤廃が原則でありまして、農作物においては九八%、ほぼ一〇〇%が関税撤廃にほかの国々はなっている中において、我が国は、約二割の例外をこれは獲得することができたわけでございます。また、セーフガード措置も獲得することができたわけでございますので、我々としては国会決議にかなうものだ、我々はこのように考えております。
○畠山委員
ただ、きょうの質疑では、そのセーフガードにおいても、実質的にそれが発動されるときに支えになっていないのではないかと私は指摘しました。その例外なるものが農家の支えになっていなければ、これは国会決議に反しているということを私は指摘させていただきたいというふうに思います。
日本共産党は、経済主権、食料主権を脅かすTPPからの撤退を一貫して訴えてきました。
最後に、転換の方向について、きょうは質問したいと思います。
政府は、TPPのもとでは競争力が必要だ、また、輸出で稼ごうと呼びかけています。先日の委員会で総理は、北海道の十勝川西長いもが台湾などで人気だと例に出して、いわば輸出の優等生のように紹介もされています。
総理、お聞きしたいんですけれども、では、この川西長いも、どんどん輸出できるとお考えでしょうか。
○山本(有)国務大臣
議員御指摘の長芋の輸出でございますが、台湾、アメリカの西海岸を中心に薬膳料理の食材として人気が高く、平成二十七年には二十六億円と、この三年間で五〇%増と順調に増加をしております。
こうした農林水産物、食品の輸出につきましては、本年五月に策定いたしました輸出力強化戦略に掲げた施策を着実に実施しておりまして、ハード、ソフト面でインフラ整備を行う予算も計上しております。
その意味におきまして、我々にとりまして戦略的な商品である長芋、これが伸びることを期待するところでございますけれども、平成二十年に選果場についてHACCP認証を獲得しております。安全、安心の面でも輸出先国での信頼を得ていると思っております。
そういう意味で、今後、全米やシンガポールなど新たな輸出先を開拓するなど、さらなる輸出の拡大に全力を挙げてまいる所存でございまして、薬膳料理のほか、品質の高さ、積極的なPR、滋養強壮によい食材、大衆への売り込み等々で私は伸びるというように思っております。
○畠山委員
農畜産業振興機構、ALICが「野菜情報」という冊子を出して、そこで各地の調査報告を出すんですよね。ちょっと古いんですが、二〇〇九年にこの川西長いもについて調査をして、このように書いています。
輸出先の開拓に取り組んではいるが、輪作体系の中に高収益作物を取り入れるというのが基本的な方針であるとして、JAとしては、特別な生産体制をとるなどして輸出を重点に伸ばしていくのではなく、あくまで国内市場への通年安定出荷に軸足を置き、過剰生産に陥って値崩れしやすい国内市場の需給バランスを維持して価格の安定を図るというのが現地の方針なんです。
日本は土地利用型農業であります。土地に制約されます。しかも、同じものを続けてつくれば連作障害というものが起きるのは大臣御存じだと思いますが、長芋はその輪作体系の一作物なんですよね。だから、長芋だけをつくり続ければもちろん連作障害は起きるし、急激にたくさんつくれるというものではもちろんありません。特別な生産体制はとれないわけです。
だから、基本は国内の安定供給だ、現地はそのように言っていて、農産物の輸出というのは戦略上の話であって、農業政策の基本は、国内への安定供給、自給率向上にこそ基本に立つべきではないのでしょうか。
そこで、農業に多面的機能があることは先日の委員会で総理も述べていました。そうであるなら、暮らし、雇用、環境を壊すものでなく、各国の実情を踏まえたルールづくりをすることで、我が党は、貿易においても平等互恵の原則が必要だということを訴えてきました。
かつて日本政府も、WTO加盟後に国際社会へ提案する動きがあったのではないでしょうか。私、手元に、二〇〇一年ですが、農水省がまとめた「WTO農業交渉」という文書があります。その前書きに、「行き過ぎた貿易至上主義へのアンチ・テーゼとして自信を持ってこの提案を世界に示す。」と、五つの提案をしています。「1農業の多面的機能への配慮、2食料安全保障の確保、3農産物輸出国と輸入国に適用されるルールの不均衡の是正、4開発途上国への配慮、そして5消費者・市民社会の関心への配慮を求めるものである。」と書いています。食料安全保障の確保ですよ。
最後ですから総理に聞きます。
行き過ぎた貿易至上主義には日本政府がみずから警鐘を鳴らしていたのではありませんか。総理はTPPのメリットばかりを強調しますが、進むべき道はTPPではなく、食料自給率の向上、食料安全保障、この道ではないのですか。
○安倍内閣総理大臣
まず、我々は輸出とか貿易至上主義ではないということは申し上げておきたいと思います。
食料の安定供給を将来にわたって確保していくことは、国民に対する国家の基本的な責務であり、国内農業生産の増大を図り、食料自給率と食料自給力をともに向上させていくことが重要であると考えています。
安倍内閣では、農業の成長産業化を実現するため、農地集積バンクの創設、また、輸出促進や六次産業化、六十年ぶりの農協改革など、農政全般にわたる抜本的な改革を進めてきております。
そして、TPPでございますが、関税撤廃が原則というTPP交渉の中で、先ほど申し上げましたように、農業分野においては、重要五品目を中心に関税撤廃の例外を確保し、さらには、セーフガード等の措置も獲得をしたところであります。
それでもなお残る農業者の方々の不安を受けとめ、安心して再生産に取り組めるよう、総合的なTPP関連政策大綱に基づきまして、攻めの農業への転換に必要な体質強化策を順次講じるとともに、重要五品目の経営安定対策の充実を図ることとしたところでございます。
またさらに、TPPによりアジア太平洋に巨大な経済圏が生まれることは、これは日本農業にとってはチャンスであるわけでありますが、先ほど長芋についてお話がございました。供給量に制限がある。農業は工業製品と違うのは事実でございます。しかし、販路がどんどん拡大されていく中においてブランド化が進めば、これは、そこで品薄になれば、当然、需要と供給でありますから、価格が伸びていくということも十分に考えられるわけでございます。
量としてふやすことはできなくても、収入はふやすことは十分に可能なのではないか、こう思うわけでありまして、平成二十四年、我々が政権をとる前から平成二十七年と比べますと、例えば、牛肉においても五十一億円の輸出が百十億円、これは倍になっておりますし、お茶も五十一億円から百一億円、リンゴは三十三億円から百三十四億円、三〇〇%増となったわけでございまして、しっかりと挑戦しなければ結果が得られないということではないかと思うわけでありますが、引き続き、農政改革を進め、農業の成長産業化を実現していくと同時に、農業の多面的機能をしっかりと我々も重視していきたい、このように思っている次第でございます。
○畠山委員
最初に言いました。新潟でその農政全般改革に対して厳しい目が向けられていると私、初めに言ったばかりですよ。
ことしの農業白書に次のように書いています。「我が国は、引き続き「多様な農業の共存」を主張し、食料輸出国と輸入国のバランスの取れた農産物貿易ルールの確立を目指していくこととしています。」と。TPPとは明らかに違う道だと思います。
農業だけでなく、林業、漁業、そして、暮らしに直結する医療や保険、共済など、たっぷりとTPPは質問しなければいけないことがあります。徹底審議を求めつつ、経済主権、食料主権を奪うようなTPPには反対であることを表明して、質問を終わります。

第192回国会 予算委員会 第4号     平成二十八年十月四日

○畠山委員
日本共産党の畠山和也です。
八月から九月にかけて襲った台風で、岩手、北海道を中心に大きな被害が出ました。改めて、心からのお悔やみとお見舞いを申し上げます。
日本共産党は、対策本部を立ち上げまして、閉会中にも現地の調査、また防災大臣への申し入れを行いました。
岩手県宮古市では、これは山津波ですよというほどの水害の中、今、市民の懸命な復旧が進められています。岩泉町では、一日時点で三百人以上がなお避難所生活を強いられて、まだ被害の調査も続いて、全容さえ明らかになっておりません。
私は、北海道の十二自治体を回りました。鉄路、国道が寸断されて、今も復旧をしていません。ホタテの養殖施設やサケの定置網、また昆布を干す干場などの水産被害に、農地の崩壊、流失は来年の作付も見通せないほど深刻です。急いで復旧の手だてをとることを求めます。
そこで、農業用ハウスについて伺いたい。
北海道では、二千四百三十五件、七・三億円ものハウス被害が出ていますが、激甚指定を受けても、対象とならないハウスもあります。
農水大臣に伺います。このような対象外のハウスは、被災農業者向けの経営体育成支援事業の対象として支援できるのではないですか。
○山本(有)国務大臣
御指摘のとおり、二十八年八月、九月に我が国に襲来しました台風第七号、十一号、九号及び十号によりまして、北海道を初めとする各地域におきまして農業用ハウスにも甚大な被害が生じていると承知しております。九月十四日には北海道を私も訪問いたしまして、河川の氾濫等に伴う農業用ハウスの被害等を目の当たりにしてきたところでございます。
御指摘の農業用ハウスの被害につきましては共済による対応が基本となりますが、過去に例のないような甚大な被害が生じた場合に、被災農業者向け経営体育成支援事業を発動して、その復旧等を支援しているところでございます。
今般の台風による被害につきまして、被災した農業用ハウス等の速やかな再建等を図るため、与党からの申し入れも踏まえ、被災農業者向け経営体育成支援事業の発動を含め、必要な対応を現在検討しているところでございます。
○畠山委員
今、この発動を含めということもありました。前向きな検討というふうに受けとめます。書いてあるように、異常な気象災害の場合には被災農業者を含むとしているわけですから、現場では待ち望んでいることですので、重ねて要望しておきたいというふうに思います。
TPPと、この間問題となっているSBS価格偽装問題について伺います。
総理は、TPPを今国会で成立させると述べました。しかし、SBS方式による輸入米の価格偽装という重大問題が発覚しました。この問題というのは、外国の米を輸入する業者から、それを買って流通する卸業者へ調整金なるお金が回っていたことが発覚した問題でした。
まず、確認します。
この調整金は業者同士のお金のやりとりだから国は関係ないかというと、そういうわけではないんですよね。契約書では、輸入業者、卸業者そして仲介する国がきちんと判こも押して、三者契約である。このことは間違いないですよね。農水大臣に確認します。
○山本(有)国務大臣
このSBS契約は国家貿易の一態様でありまして、輸入業者、卸売業者等の買い受け業者そして政府との間の三者で結ばれる契約でございます。
○畠山委員
三者で結ばれる契約ですから、まさに国が契約当事者であるわけです。ですから、この問題を人ごとにしてはもちろんなりません。
しかし、予算委員会へ提出された資料によれば、食糧法令上の問題はないとしつつ、生産者に不信感を生じさせるから、念のため調査をしていると書いています。まるで人ごとと言わんばかりではないか。なぜなら、SBS方式というのは、買い入れと売り渡しの価格、それからマークアップの水準、いずれも政府が決める国家貿易です。
国は単なる仲介者ではない、安く輸入米が流通していたとすれば国家貿易そのものがゆがめられる、国の制度や説明への信頼が問われる重大問題ではないか、そういう認識は農水大臣はお持ちですか。
○山本(有)国務大臣
まず、国内の米の価格は、その品質と需給によって定められるものというように認識しております。しかしながら、こうしたSBS取引において何らかの影響がある可能性がありますので、現在調査をしているところでございます。
○畠山委員
可能性はあるかもしれないから一応調べるという趣旨でした。
SBSというのがよくわかりにくいというふうに皆さんおっしゃるんですよね。SBSの輸入米というのは、もともとミニマムアクセス米の一部です。ミニマムアクセスというのは単なる輸入機会の提供であって、輸入義務ではないと私たち日本共産党は一貫して指摘をしてきました。
それで、このミニマムアクセスが始まって二十一年になります。この間は、毎年、日本政府は、全量買う必要はないのに米を七十七万トン買い続けてきました。しかし、売り先がないために保管し続けたり、飼料用に安く売るなどして、買った分より損失を出してきています。
これは政府参考人で結構ですが、今まで一体どれほどの損益を出してきたか、答えてください。
○柄澤政府参考人
お答えいたします。
ミニマムアクセス米のうち、SBS方式につきましてはいわゆるマークアップによる収入がございますけれども、大部分を占めます一般輸入方式におきましては、輸入米を買い入れて、それを加工用、援助用、飼料用等の主食用以外の用途に仕向けておりますので、売買差損が生じております。また、その他保管料等の管理経費も生じております。
この結果、御指摘の平成七年度から平成二十六年度までの通算の損益を見ますと、合計三千百三十五億円の損失となっているところでございます。
○畠山委員
三千百三十五億円の損益という答弁です。
このように、巨額の税金を使ってきたわけなんですよね。それは財務省からも削減すべきだということが言われ続けて、したがって、何としてもこれを流通して、はかせていかなければいけない。そこで、好都合なのが、主に主食用として十万トン、必ず売り先のあるSBS方式だったのではないか。
業者からすれば、午前中にもありました香り米とか高いお米とは別に、輸入米というのは一般に安くしないと流通されない。そこで、SBS方式の中で安く売るために生まれた知恵が調整金だったのではないのかどうか。
それで、実際の数字を見て考えてみましょう。今回の問題の発端となった輸入業者と卸業者の裁判において、裁判官は調整金の存在と金額を認定しています。これに基づいて単純に計算すれば、六十キロ精米換算で八千二百六十二円から八千七百四十八円の範囲での入札となり、その金額で流通した。これは単純な計算です。
この年の、二〇一三年ですが、政府調査による米の相対価格の平均金額について答えてください。
○柄澤政府参考人
私ども、毎月、相対取引価格と申しまして、集荷業者と卸売業者等との間の取引の価格を調査、公表しております。
御指摘の、平成二十五年産ということだと思いますが、全銘柄平均価格について見ますと、六十キログラム当たり一万四千三百四十一円でございます。
○畠山委員
一万四千円ほどになるわけですから、その品質がどうかという問題はあるにしても、この平均の価格よりも約四割安く流通できることになります。
そこで、もしこのようなことが常態化している事実があるのであるならば、価格への影響がないなんてことは言えないと思いますよ。それはそうですよね、大臣。違いますか。
○山本(有)国務大臣
調整金が全てのSBS取引に常態化しているとしましても、ここはなかなか難しい問題がありまして、代金として渡しているわけではない場合の経理処理があった場合に、当該業者が必ずその利益を業務用の外食産業に移転する、それを必ず移転するということが当該企業のマインドとして、自己の利益を最大化するという性質のもの、経済合理性があるとするならば、それが常態化して必ず安くなるということまでは言えないのではないかというように思っております。
○畠山委員
そういうことも含めて、今調査をしているはずなんですよね。
この間の討議でもそうだったんですけれども、この間報道を見て、いわゆる逆の調整金があるだとかの答弁を大臣は先日もされていました。それが、金額じゃなくて、いろいろ会計上の処理でしていることもあるかもしれないという答弁でした。
では、そういうことなどが調査の中で判明してきているという理解でよろしいんですか。
○山本(有)国務大臣
全て解明した後に正式に畠山委員様の前にも公表したいというように思っておりますが、調整金なる存在、これがあるときとないとき、さらには多様な態様での授受がありますので、その点を含めて全てを把握した上で検討し判断させていただきたい、こう思っております。
○畠山委員
多様な態様の授受があり得ることを今大臣は認められました。
そこで、問題は、この調整金なるものが価格に影響を与えているかどうかということです。それは今、期日が今週中ですか、答弁もされましたけれども、価格に対して調整金が影響を与えていることについても、そうかどうかということも含めて調査結果を出すということでよろしいんですね。
○山本(有)国務大臣
そのとおりでございます。
○畠山委員
この問題はしっかりと議論が必要だというふうに思うわけです。中身はしっかり精査しなければなりません。
そもそも、輸入米がふえることは価格に影響を与えると政府も認識していたはずです。
二〇〇九年、農水省が出しているミニマム・アクセス米に関する報告書というのがあります。この中に次のような文章があります。「我が国は、MA米の輸入については、民間貿易ではなく、国産米に極力悪影響を与えないように販売するため、国家貿易方式を採用しています。」というふうに書いています。
安い外国産米が輸入されて、民間貿易、市場に任せたら価格が下がる、悪影響が出ると認めて国家貿易とした記述ではないのですか。その国家貿易のもとで起きている疑惑なわけです。
政府による売り渡し価格や買い入れ価格なども含めて、価格への影響を徹底的に調査するべきであることを改めて求めますが、大臣、その点も含めてきちんと結果を出しますね。
○山本(有)国務大臣
委員御指摘の記述は、「MA米の輸入について」という項の大きな見出しの中の「我が国は、MA米の輸入については、民間貿易ではなく、国産米に極力悪影響を与えないように販売するため、国家貿易方式を採用しています。」というくだりだろうというように思っております。
米につきましては、我が国と海外との内外価格差は依然として大きなものがございまして、ミニマムアクセス米の輸入につきましては、国産米の需給に極力悪影響を与えないように、まさに国家貿易により輸入し、価格等の面で国産米では十分に対応しがたい加工用、飼料用等の非主食用に販売しているところでございます。
また、MA米の範囲の中のSBSの十万トンの枠の運用につきましては、平成五年の閣議了解の趣旨に基づきまして、政府が国産米を十万トン以上買い入れることによりまして国産米の需給に影響を与えないように措置しているところでございます。
こうしたミニマム・アクセス米に関する報告書は、上記のような趣旨について記述されているところであるというように認識しているところでございます。
○畠山委員
改めて今、私が読んだところをなぞられて経過を話をされたようですけれども、結局は、内外価格差があって、その影響を防ぐための国家貿易だということは認めたわけですよ。
ですから、その価格の問題が今このように焦点が当たっているわけですから、大臣も、当初の九月十六日の記者会見ですか、このように言ったわけですよ。市場価格、特に国内産米の価格に変動はありませんというように、この間、マークアップなどを通じて言ってきたんだ、しかし、その言っておったことと異なることになることが最大の問題だと。言ったとおりなわけですから、この価格への影響について徹底的な調査を出すことを改めて求めておきたいというふうに思います。
TPPとの関係についても質問します。
この輸入米と国産米の価格が違うなら、TPP試算の前提も違ってくるのではないか。違ってくると私は思うんですよ。
まず、この試算について聞きます。
SBS米は、現在十万トン、輸入枠があります。資料一に示したとおりです。そして、今度、TPPにおいて、新たな国別枠として米国と豪州から最大七・八四万トンが加わります。さらに、これはWTOに基づくものだという説明ですが、ミニマムアクセス米の一般輸入枠の中に、中粒種、加工用に限定した新たなSBS枠を六万トン設けるとしています。これは政府が説明しているとおりです。
総理は、新たにふえるこれらの輸入米と同量の国産米を備蓄で買い上げることで、需給は緩まない、価格への影響はゼロと答弁をしてきました。しかし、それは、国産米も輸入米も同水準の価格であってこそ成り立つものです。この前提が今揺らいでいるということではないのでしょうか。
SBS米というのは、御存じだと思いますが、多くは外食、中食の業務用。この業務用の米作付をふやしている県のTPP影響試算を見れば、青森県では二十三億円、福井県でも十五億二千万円、熊本県でも十三億六千万円と、業務用米と輸入米とが競合することを織り込んだ米の生産減少額を試算しています。
総理、総理は影響ゼロだと言い続けてきましたが、それでは、この地方自治体の試算というのは誤りだということになるのですか。
○山本(有)国務大臣
まず、四十七都道府県あるわけでございますが、国と考え方が同じ県が三十三県ございます。一部の品目で国と異なる考え方で試算を行いました県が六県ございます。その中の一つが青森でございまして、まず、国では米の影響を見込んでいないわけでございますが、青森では価格低下を想定しているということでございます。
○畠山委員
今のはないですよ。一部の県だから切り捨てるような言い方はだめですよ。
総理に私は聞きました。だって、これは総理が本会議場も含めて答弁した中身です。地方自治体が誤っている理由は何ですか。
○安倍内閣総理大臣
従来から答弁をさせていただいておりますように、TPP合意に基づき新たに設定されるSBSの国別枠で輸入される米については、国が輸入量に相当する国産米を備蓄米として買い入れることとしているわけでございまして、当然、市場価格というのは供給量と需要によって形成されていくわけでございます。特に、典型的な例は野菜。野菜の供給が多ければ野菜の価格は下がっていき、自然、天候等の影響によって供給が減ればまた高騰していくということからも明らかであろうと思います。
この国別枠で輸入される米については、国が輸入量に相当する国産米を備蓄米として買い入れることによって国内の需給及び価格に与える影響を遮断することとしているため、TPP影響試算においては国産主食用米の生産量や農家所得に影響は見込みがたいとしているところでありますが、一方、幾つかの県においては、今委員が指摘をされたように、県独自の考え方に基づき国とは異なる試算をしていると承知をしております。例えば、青森県は、自県産米の米の価格が低下するとの仮定を置いて試算を行っています。
いずれにいたしましても、国の米の影響試算は、国内での価格水準や輸入量、総合的なTPP関連政策大綱に基づく対策などを前提として行っておりまして、農業関係者の御理解が得られるよう、引き続き丁寧に説明をしていきたいと思います。
○畠山委員
丁寧な説明をするというんだったら、私は、ここは一旦撤回して、やり直すべきだと思いますよ。
だって、一部と言いましたけれども、一つの県だけじゃなくて、先ほど幾つか県を挙げました。それぞれが業務用米をつくっていて、そのように、きちんと具体的にかみ合う形で精査した、県にとって一生懸命頑張ってやった試算ですよ。それに対してきちんと納得いく説明がされていないから、さまざまな問題がこのように今噴き上がってきているところに不信が募っているのではありませんか。
改めて、影響ゼロという政府試算を一旦撤回して、試算をやり直すべきであることを要求しておきます。
そこで、それではTPPで米がどうなるのか。
先ほど見ましたように、新たな輸入は七・八四万トンです。ただ、これだけじゃなくて、米国や豪州にも七年後には再協議する規定があることは、この間、石原大臣と委員会でさせていただきましたが、政府も認めていることです。こういう場も通じて、米の輸入枠をふやせと米国がこれまでも要求してきたわけだから、さらなる開放の要求は想像されます。
総理、今、アメリカと日本の米事情はどうなっているかといったときに、日本がカリフォルニア州の短粒米をどれだけ輸入しているか御存じですか。
○安倍内閣総理大臣
我が国は、ガット・ウルグアイ・ラウンド農業合意に基づいてミニマムアクセス米を輸入しております。
このうち、米国からは、過去五年の平均で、SBS方式により主食用として輸入される中粒種は約六千トン、短粒種は約七千トンであります。一般輸入方式により加工用、飼料用等の非主食用に仕向けられる中粒種は約三十四万トン輸入しているところでありまして、いずれもカリフォルニア州産であると承知をしております。
○畠山委員
この枠、輸入がどんどんふえてきているんですよね。
それで、USAライス連合会のホームページを見てみれば、こう書いてありました。カリフォルニア産のあきたこまちやコシヒカリなどの日本の品種は、一〇〇%日本向けに栽培された特別米ですとPRをしています。
これは合計を調べてみたんですけれども、米国から日本への米輸出というのは、今や、全世界の中でメキシコに次いで世界第二位になっている。日本は、今や米国の米輸出のよいお客様になっているのが事実ではないか。これが置かれている状況です。
その上、TPPの協定本文と別に、日米で約束したサイドレターがありますよね。これにはSBS方式の運用を変えることが書かれているはずですが、その柱について、農水大臣、答弁してください。
○山本(有)国務大臣
まず、米のサイドレターは、TPP協定の署名に伴い、国別に交換した文書のうちの一つでございます。TPPにおきまして米の国別枠を設置した米国及び豪州との間で、国別枠の運用内容を定めるものでございます。
具体的には、国別枠の運用に当たりまして、円滑な入札手続を行う観点から、技術的な変更を行うこととしておりまして、その変更点を記載しているものでございます。
内容といたしましては、まず第一に入札スケジュールや入札参加資格の設定、第二に政府予定価格や最低マークアップの運用、第三に入札における砕米割合や再入札の実施、第四にレビューの実施などが記載されております。
○畠山委員
今、幾つか内容について答弁されましたけれども、さらに具体的な中身をちゃんと読めば、入札回数をふやすことだとか、再入札もすることだとか、マークアップだって、一定条件がついていたはずですけれども、引き下げを行うなどが書かれているわけですよ。
つまり、目いっぱい日本は輸入してくれというアメリカの要求に応えた格好になっているではないのでしょうか。
さらに、このSBS枠が新たに輸入される中で、加工用中粒種に限定した新たなSBS枠についての疑惑があります。
配付資料の二枚目をごらんください。これは、ことしの五月にアメリカの国際貿易委員会が米国議会へ報告書を出したものであります。
そこには、真ん中の表で囲っている部分ですけれども、新たなSBS枠六万トンについて、アンドキュメンテッドと英語で書いている部分ですね、文書化されていない約束があるとして、六万トンのうちの八割である四・八万トンを米国産とすることを保証しているというのがこの内容です。マークアップも一キロ当たり二十二円の削減を約束しているという報告が、アメリカの国際貿易委員会から出されています。
農水大臣に伺います。日本がこのように文書化されていない約束をしているということは事実ですか。
○山本(有)国務大臣
事実ではありません。
TPP交渉における合意内容は、TPP協定の譲許表やサイドレター等の合意文書が全てでございまして、文書化されていない約束は存在しておりません。
○畠山委員
事実でない。であるならば、アメリカに対して、こんな約束していませんよと言うべきではありませんか。言わないと、認めたことになってしまいますよ。米国議会にもこのような形で報告されているわけだから、今後、何かの協議のときにこれを持ち出されてくるのははっきりしているじゃありませんか。
総理、アメリカにちゃんと言ったかどうか。
○山本(有)国務大臣
まず、ITC報告書には、期待される日本の約束の幾つかは文書化されていないと記述がございますけれども、さらにその前の記述に、米国米業界の代表者の理解するところによるとと明記されているわけでございまして、米国の米業界の理解や期待でありまして、文書化されていない約束ではないというように思っております。
そういう認識のもとに今抗議をしているかどうかでございますが、農林省の担当から米国通商代表部、USTRに対して遺憾の念を伝えているところでございます。
○畠山委員
遺憾の意を表明して、では、これは違うと言ったんですね。確認します。これは事実ではないとアメリカに伝えましたか。もう一度確認します。
○山本(有)国務大臣
このような、内容は文書化されていない約束があるというように記載されている点については、これについて事実ではないというように伝えてあります。
○畠山委員
それは、今ちょっとどこかわかりませんけれども、いつですか。いつ遺憾の意を表明したんですか。
○山本(有)国務大臣
日本時間で、五月十九日でございます。
○畠山委員
では、その結果撤回されているかといえば、撤回していないわけですよ。だって、私、この資料をきのうネット上でとることができたんですよ。まだ現存しているわけです。きちんとこの報告が残っているのであるならば、一体、撤回させるまでの抗議をきちんとしているのかどうか。重大問題ですよ。
こういう文書化されていない約束のもとで結局日本が米の輸入枠をさらに広げたり運用を変えたりするということになるならば、これだって今まで政府が説明してきたことと矛盾することが生まれるのではありませんか。これは撤回するまで言うべきですよ。
○山本(有)国務大臣
TPPにおきまして、我が国が米国の交渉窓口としているのはUSTRのみでございます。こうした交渉は、窓口が一元化されていなければ交渉ができるものではありません。
日本政府としましては、独立機関でございます米国国際貿易委員会、ITCに対しては、記述の訂正は求めるつもりはありません。
○畠山委員
その結果、この後アメリカがこれに基づく要求をしてくる可能性はそれでは否定できないですよ。
総理、そうしたら、総理は、アメリカに対して、再協議があった場合にはこれは応じない、だからこの国会で批准するんだと言ってきました。今言ったように、USTRは別の機関だということであるならば、これは、総理、総理の責任できちんと撤回するように指示を、何らかの形でするんだと出す必要があると思いますが、いかがですか。
○安倍内閣総理大臣
これは既に山本大臣が答弁をしておりますが、TPP交渉における合意内容は、TPP協定の関税率表やサイドレター等を含む合意文書が全てであって、文書化されていない約束は存在をしないわけであります。当然、交渉の結果は文書化されていて、普通は、交渉すれば文書にして、これが約束だねということでお互いに合意をするわけでありますが、これは文書になっていないんですよ。そんな約束は当然ないということでありまして、文書化されていない約束はないということは、はっきりと申し上げておきたいと思います。
その上において、先ほど申し上げましたように、本年五月のアメリカ国際貿易委員会、ITCの報告書に書かれているのは、米国米業界の代表者の理解するところによると。だから、これは、米業界の理解するところによると、期待される日本の約束の幾つかは、しかも、期待される、こう書いてありまして、正式なTPP合意テキストや付随するサイドレターにおいて文書化されていない、こうされているわけであります。これは、あくまで米国の米業界が理解をして、期待する事項として記載されているわけでございまして、つまり業界の期待なわけであります。
つまり、その業界の期待に、あなたたち、そんな期待はするなと言うことではなくて、そもそも我々が交渉している相手はUSTRでありますから、こういう文書がITC報告書にあるけれども、農林水産省の担当者からは遺憾の念を伝えているわけでございまして、独立機関であるITCに対しては記述の訂正を求めるものではないわけでありますから、大臣から答弁させていただいたとおりでございます。
○畠山委員
引き続きこの問題はきちんと追っていきたいと思いますけれども、重大な問題だというふうに思います。アメリカに、きちんとこのような形で出されてきている正式なITCの報告書ですから、日本政府としてきっちり抗議すべきものですから、改めてきちんと日本政府として態度をとるべきだということを要求しておきたいと思います。
TPPは、今述べたように、米の問題一つ取り上げてみてもさまざまな問題が今生じていて、実際に、米の農家がこの収穫の時期を迎えるに当たって、不安を持って国会の審議を見ていると思います。
冒頭に述べましたが、私も北海道で台風の被害調査、各地を回ったときに、代々つくってきた農地が一晩にして流されてしまったということに大きなショックを受けて、来年も作付できるだろうかというような方々にもたくさんお話を伺いました。このような方々が今、政府のTPPに対する態度を見ているというふうに思います。優先すべきはTPPではなく災害復旧だというのが現場の強い声であるということを私は強調したいと思います。
日本共産党は、貿易ルールは対等、平等、互恵の関係で行うべきだということを強調してきました。共同通信の世論調査でも、国民の七割が慎重審議を求めています。今国会での拙速なTPP批准は認められないことを最後に強調して、私の質問を終わります。

第190回国会 国土交通委員会 第15号  平成二十八年五月十八日

○畠山委員
日本共産党の畠山和也です。
短時間ですが、きょうは、東日本大震災後に宮城県石巻市が新渡波西A地区に整備した十五戸の災害公営住宅をめぐり、四次下請で植栽工事、外構工事を請け負った三社の合計一千七十六万三千円の代金が未払いになっている問題について質問を行います。
本工事の事例を捉える上で、まず一般論として確認しておきたい。
重層下請構造の建設業界で下請代金の未払いが発生した場合に、下請事業者を救済するためにどのような措置がありますか。
○谷脇政府参考人
お答えいたします。
建設工事の請負代金の支払いにつきましては、基本的には当事者同士の問題であり、双方が話し合って解決すべき問題であるというふうに考えております。
一方、今御指摘ございましたように、建設工事におきましては、下請建設会社に不当なしわ寄せが行われるということも考えられるわけでございまして、建設 業法の第十八条におきましては、建設工事の請負の当事者は、おのおのの対等な立場における合意に基づいて公正な契約を締結し、信義に従って誠実にこれを履 行することを建設工事の請負契約の原則ということで規定しているところでございます。
また、同じ建設業法の第二十四条の三の規定がございまして、元請の建設会社が注文者から請負代金の支払いを受けたときの下請建設会社に対する下請代金の支払いの期日などについても規定をしているところでございます。
個別の事案につきましては、そもそも未払いの有無等について争いがあることも多いわけでございまして、当事者で話し合いがなされることが重要でございま すけれども、今申し上げました建設業法の規定などに基づきまして、国または都道府県において事実関係を確認の上、必要な指導を行っているところでございま す。
なお、建設業法の第四十一条第二項及び第三項におきまして、発注者から直接工事を請け負った特定建設業者に対する立てかえ払い等の勧告の規定がございま すけれども、立てかえ払いが下請代金の二重払いという側面を持つなど難しい面もあることから、この点につきましては、まず当事者間で十分な話し合いが行わ れ、円滑に解決を図られるよう努めているところでございます。
以上でございます。
○畠山委員
業法においては、対等な関係であったり、信義、あるいは誠実な立場で臨むことと記されております。
そこで、石巻市の事例ですが、今回、石巻市に建設された災害公営住宅は、民間会社等が市町村の定めた規格等に適合するよう建設した住宅を市町村が買い取 るという買い取り方式によって建設されたものです。石巻市は、株式会社パナホームと基本協定書及び建物譲渡仮契約を結び、パナホームが建設した公営住宅の 完成物を石巻市に譲渡する契約となっています。パナホームは梅本工務店を元請会社として契約をしました。
この梅本工務店は今どのような状態になっていると認識していますか。
○谷脇政府参考人
今御指摘がございました梅本工務店でございますけれども、許可行政庁でございます宮城県知事から、平成二十八年三月二十八日付で建設業許可が取り消されております。
原因といたしましては、営業所の所在地を確知できず、宮城県告示第百三十七号、平成二十八年二月二十三日で告示したが、同日から三十日を経過しても申し出がなかった、このことは建設業法第二十九条の二第一項に該当するという理由でございます。
○畠山委員
このように、元請が今、建設業の許可を取り消されて、実質的な倒産状態というわけです。
現地からは、パナホームが設計や下請企業の社会保険加入を行うなど、実質的には元請ではないかという指摘もありますが、今回のような買い取り方式のもと で、パナホームは発注者であって、先ほど言いました未払い代金の立てかえ払い責任を問うことは建設業法上は困難だと国交省から説明も受けてきました。ま た、パナホームと契約を結んだ石巻市も、完成物を買い取る契約のため、施工業者に対して責任を負う義務はないというのが法律のたてつけです。
ただ、これでは代金が支払われていない下請会社が納得できないのも当然で、我が党のもとへ次のような苦境を訴えるメールが寄せられています。私どもが一 番憤りを感じているのは、石巻市とパナホームの計画で進めているこの公共事業に、なぜ我々下請業者が無償で労働力を提供しなければいけないのか、また、そ れに伴って発生した労務費や材料費は、結果として自社が負担することになり、それが原因で我が社の経営が非常に厳しい状態に陥っているという内容です。
災害公営住宅の建設ですから、業者にとっても、被災者支援に役立てるという誇りとも言える仕事です。でも、現実には、起きないと思われていた元請会社の事実上倒産が起きて、未払い事案が発生した。誇りさえも失われるような状況です。
そこで、大臣、最後に二つ伺います。
このような事態を知ってどのように認識されたかということと、私が心配するのは、熊本地震が今起きて、同じような災害公営住宅の建て方をした場合に、同 じような事例が生まれないかということです。先ほど紹介したメールも、最後に、今後も進んでいく復興事業で同じようなことが起こらないよう強く願っており ますと結んでいて、国を初め関係者が知恵を出し合って、同じような事態を生まないために何らかの方策を検討すべきではないかということを最後に伺いたいと 思います。
○石井国務大臣
まず、石巻市の件について申し上げますが、石巻市の災害公営住宅の建設工事に関連して、下請代金の未払いが問題となってい る事案が生じていることについては承知をしております。災害公営住宅の整備という重要な復興事業において、被災地の復興に尽力した建設会社が被害を受けて いるとすれば、大変に遺憾であるというふうに思っております。
次に、今後の熊本の復興に関してでございますが、復興関連も含め、建設工事において適正な元請、下請関係を構築することは重要であると認識をしておりまして、下請建設会社に対する適切な代金の支払いはその基本となるものであります。
このため、国土交通省といたしましては、従来から、下請の取引ルールに関して、建設業法令遵守ガイドラインを策定し、指導を行っているところでありま す。今後、下請代金の未払い等の個別事案が発生した場合には、関係者から事情を聞き、必要な指導を行ってまいりたいと思います。
また、元請建設会社からの債権回収が困難となった際に、下請代金等の債権を保全する仕組みといたしまして、下請債権保全支援事業による支援を行っている ところであります。一種の保証制度かと存じますが、こういった制度の活用も図りつつ、復興事業に貢献する下請建設会社に対して適切な支払いがなされるよ う、引き続き取り組んでまいりたいと存じます。
○畠山委員
政治の力で現場を救うべきですし、同じことを繰り返さないよう求めて、私の質問を終わります。

第190回国会 国土交通委員会 第14号  平成二十八年五月十三日

○畠山委員
日本共産党の畠山和也です。
公共交通の重要性にかかわって、本委員会でも何度も取り上げられてきていますJR北海道の安全対策や現状について質問を行います。
まず、昨年末ですが、十二月二十七日にJR北海道函館線の嵐山トンネル内で出火がありました。私は旭川にあるこのトンネル現場に行って、外側から視察も させてもらいましたけれども、トンネル上部が黒く焦げていまして、非常に大きな出火であることを実感しました。その原因と今後の対策については、有識者を 交えた委員会で検討中とのことです。
たびたびJR北海道についてはこのような事故あるいは出火などで心配な事案が発生してきて、道民の不安がかき立てられているというのは御承知のとおりだと思います。
そこで、この火災についてまず一点だけ確認をします。避難訓練についてです。
これらの安全対策については、もちろん多額の費用がかかりますし、時間がかかるものですが、その間の対策の一つとしては、十分な防災訓練であったり避難訓練は当然必要なことと思います。
そこで、伺います。
JR北海道の営業範囲内でのトンネル数、また、そのうち電化区間のトンネル数は幾つあるか、今回出火の起きたこの嵐山トンネルで避難訓練は行われていたかなど、これらトンネルの避難訓練の有無について国として承知をしているかどうか伺います。
○藤田政府参考人
お答えいたします。
JR北海道のトンネルの数でございますけれども、百八十二カ所でございます。そのうち、電化区間のトンネルの数は四十三カ所でございます。
それから、訓練の状況でございますけれども、嵐山トンネルと同様の電化区間のトンネルでの避難訓練の回数、平成二十三年度から二十七年度の五年間で十二回実施していると承知しております。
○畠山委員
もう一度確認しますが、その十二回のうちに、嵐山トンネルで避難訓練が行われたのは確認できていますか。
○藤田政府参考人
お答えいたします。
手元のリストによりますと、嵐山トンネルはこの五年間の訓練対象には入ってはおらないというふうに承知しております。
○畠山委員
つまり、避難訓練がされていないというわけであります。今ありましたように、電化だけでも四十三で、そのうち十二ですから、嵐 山トンネル以外でも何かの事態の際の避難訓練は行われていないというわけです。国として、こういう事態に問題意識を持たなければいけないと私は思います。
二〇一一年五月に、JR北海道は石勝線でトンネル火災を起こして、三十九人の方が病院に搬送されました。当時、こういった安全対策の不備やさまざまな指 令のやりとりなどなどでさまざまな問題が発覚する中で、死者がなかったのは奇跡だったというふうに思います。私もその後現場や車両を見させていただきまし たが、車内の椅子だとかは全部溶け落ちて、よくこれで大きな被害が出なかったと思ったほど、ぞっとするような内容でありました。その後、JR北海道として は、さまざまな対策マニュアルなども講じたところです。
それで、今回の嵐山トンネルの火災というのは、午前四時ぐらいで、乗客が乗っていなかった時間帯でしたが、それでよしとするわけにはもちろんいきません。
そこで、これは大臣に伺いたいんですが、監督責任を持つ国として、安全対策、とりわけ今私が述べました避難訓練の実施をきちんと国としても確認し、必要なことがあれば指導もしていくことを求めたいと思いますが、いかがでしょうか。
〔委員長退席、小島委員長代理着席〕
○石井国務大臣
鉄道の安全を確保する上でトンネル内での火災への対策は重要でありまして、その一環として、異常時を想定したトンネル内における避難訓練についても適切に実施される必要があると認識をしております。
鉄道事業者では、これまでの火災事故等を受けまして、適宜、異常時対応のマニュアルを見直すとともに、そのマニュアルに基づいて定期的に避難訓練を行っております。
国土交通省におきましては、この避難訓練が適切に行われているかどうか、保安監査で確認をしております。
今後とも、鉄道事業者において避難訓練が確実に実施されるよう必要な指導をしてまいります。
○畠山委員
そうであるならば、先ほどあったように、電化区間のトンネルが四十三ある中で十二しか避難訓練が行われていないという事態につ いては、是正が必要ではないかと改めて私は強調したいというふうに思います。鉄道事業者として乗客の命を預かっているわけですから、その責任を自覚すべき ことを、JRに対しても、この場からも私から表明をしておきたいというふうに思います。
そこで、問題については構造的に捉えなければいけないと思います。
この問題について、JR北海道から私も聞き取りなどを行いましたが、もちろん安全対策は最優先だとしつつも、必ず最後に落ちつく話というのは、そうはいってもお金がないんですということの繰り返しでありました。
それはことし三月のダイヤ改正にもあらわれて、JR北海道では、駅の廃止が八つ、減便が普通列車で七十九、特急列車では車内販売も自動販売機さえもなくしたものもあります。
高波や台風によって線路が被害を受けた日高本線が間もなく一年半になりますが、これもまた復旧される見通しがありません。
それで、お手元に資料が配付されていると思いますが、この日高本線というのは、ここにありますように、苫小牧から様似まででありまして、現在の不通区間 は鵡川駅から様似駅の約百十六キロになります。今は代行バスが運行していますが、途中にあります静内駅で乗りかえをしなければなりません。
百十六キロというのは、東京駅を起点に東海道新幹線で考えると、熱海までが大体百キロなんですね。それをはるかに超えるわけですから、そこをバスで連日行くということの大変さは想像できるかと思います。
そこで、まず確認をします。
このように百キロ超となるような長距離を走る代行バスというのが全国にあるんでしょうか。あわせて、このような状況は国としてやむなしと考えているのか、認識を伺います。
○藤田政府参考人
日高線につきましては、昨年一月の高波による被害のために鵡川―様似間で鉄道を運休しておりまして、昨年一月から代行バ スが運行されております。代行バスの運行距離、御指摘にございましたように、鉄道の営業キロで申しますと全体で百十六キロ、運行系統としては鵡川―静内間 の五十一・六キロと静内―様似間の六十四・四キロに分かれている、こういう状況でございます。
ほかに百キロを超える代行バスがあるかというお尋ねでございますけれども、現在運行されているもので一番長い災害等による代行バスは、常磐線の竜田―原ノ町間の四十六キロというふうに承知をしております。
日高線における代行バスの運行でございますけれども、鉄道が運休している状況の中で、地域の交通手段の確保のために必要な措置であるというふうに認識をしております。
JR北海道におきましては、バスの運転時刻を高校の登下校の時刻に合わせたり、所要時間を短縮するために運行経路を見直すなど、できる限り利用者の利便を確保するように努めているというふうに承知をしております。
○畠山委員
したがって、百キロ超の代行バスというのは日本にはないわけです。
そこで、今さまざまな時間のやりくりだとかJR北海道で努力をされているという旨の認識の答弁がありましたが、これは実態をやはりよく見る必要があると思うんですよ。
時間がかかるのは、先ほどの距離もそうですが、北海道ですから、冬道、悪天候、そして、代行バスは大型ですので、代行ですから駅前なども通っていくんだけれども、国道から駅前に行くときに細い道なんかを通るわけだから、くねくねして時間も余計にかかる。
例えば、鵡川から静内まで、静内に高校もありますが、農業高校もあるんですね、ここで鵡川から朝通うようにされると、今までだと一時間十分ほどで行った ものがバスだと一時間四十八分かかって、一・五倍ぐらいかかっているんです。また、途中駅にある新冠町には高校がありません。部活、塾、学校の講習などな どがこれらのバスの運行時間に拘束をされるわけです。
そして、ここを線路と並行して走っている国道が、ずっと長い一車線区間もありまして、いろいろなものを運ぶ工事車両であったり、観光シーズンもたくさん車が通るんですけれども、そうなると、ゆっくり走っていけばなかなか前に進めないということもある。
深刻だなと思ったのは、車椅子の方のお話でした。この代行バスへ乗るのに一カ月前から予約が必要と言われているそうです。なぜか。それは、バスの乗りお りにJRが介護事業者などへの介助を頼むためだそうです。しかし、その方が通う病院というのは、バスに乗っていくわけですけれども、専門医が常駐していな いために一カ月前でも予定が立たない。予約ができないわけですよ。それで、何とかかんとか、では十三時ぐらいのバスに乗せてくださいというふうに言った ら、いや、その時間は事業者が確保できないので十一時にお願いできないかとか、そんなやりとりがされているというのが現実です。
もう一つ言えば、運賃や切符というのはその乗りおりした駅に行って払うんですね。バスでお金を扱わないんですよ。だから、ちょっとバス停が駅から離れた ら、駅までとことこ行って、そこで切符や、お金を払わなきゃいけない。観光客なんかはこういう仕組みをわからないから、どうしたらいいかという状況にもち ろんなるわけです。
いろいろたくさん言いましたけれども、一体これで公共交通としての機能を果たしていると言えるのかどうかということを問いたいんですね。
そこで、確認することがあります。
交通政策基本法の第二節には国の施策が書かれています。第十六条と第十七条を読み上げてください。
〔小島委員長代理退席、委員長着席〕
○藤田政府参考人
交通政策基本法第十六条を読み上げさせていただきます。「国は、国民が日常生活及び社会生活を営むに当たって必要不可欠 な通勤、通学、通院その他の人又は物の移動を円滑に行うことができるようにするため、離島に係る交通事情その他地域における自然的経済的社会的諸条件に配 慮しつつ、交通手段の確保その他必要な施策を講ずるものとする。」
十七条を読み上げさせていただきます。「国は、高齢者、障害者、妊産婦その他の者で日常生活又は社会生活に身体の機能上の制限を受けるもの及び乳幼児を 同伴する者が日常生活及び社会生活を営むに当たり円滑に移動することができるようにするため、自動車、鉄道車両、船舶及び航空機、旅客施設、道路並びに駐 車場に係る構造及び設備の改善の推進その他必要な施策を講ずるものとする。」
以上でございます。
○畠山委員
そこで、大臣に伺います。
今読み上げられました交通政策基本法では、十六条で日常生活等に必要不可欠な交通手段の確保を国の施策として書かれています。また、高齢者、障害者、妊産婦等の円滑な移動のための施策を講ずることが第十七条に書かれています。
しかし、先ほど紹介した実態は、この法の中身と乖離しているのではないでしょうか。これはまず、大臣の認識として伺いたい。
○石井国務大臣
日高線は、昨年一月の低気圧による高波によりまして、線路脇の盛り土の土砂が流出する被害が発生したため、鵡川―様似間で鉄道が運休をしております。また、昨年の九月には、重ねて台風の影響により護岸等が倒壊し、路盤が流出する被害も発生しております。
こうした状況を踏まえ、鉄道の復旧方針について、昨年六月より、北海道庁、JR北海道、国土交通省の三者から成る検討会議を開催して、検討を行っているところであります。
また、住民生活に必要な交通手段を当面確保する観点から、JR北海道が代行バスの運行を行っております。
こうした状況は、交通政策基本法の考え方に沿ったものであると考えております。
○畠山委員
今基本法に沿ったものだという答弁でしたが、でも、私が先ほど言った、車椅子の方がバスに乗るのに一カ月前から予約が必要だけれども、それは現状としてかみ合っていないことを紹介したんですよ。
第十六条も第十七条も主語は国になっていて、国が責任を負うべき内容を定めていると思うんですよ。少なくとも、いつまでも代行バス運転に頼るのではなくて、国が責任を持って、まず日高本線の復旧をやりますということを言うべきではないでしょうか。
○石井国務大臣
日高線の復旧方針につきましては、先ほど御紹介いたしましたとおり、昨年六月から、北海道庁、JR北海道及び国土交通省の三者から成るJR日高線検討会議を開催して、検討を行っているところであります。
また、復旧には多額の費用がかかることを踏まえまして、復旧後にJR北海道と地域が一体となって日高線を持続的に維持していくための方策につきましても、JR北海道と沿線自治体との間で協議が行われているところであります。
国土交通省といたしましては、こうした協議の場を通じて、それぞれの関係者が何ができるか議論を深め、関係者間の調整が促進されるように努めてまいりたいと考えております。
○畠山委員
事務方も含めて、そういうお話を何度も聞いてきたんですよね。国は調整に努めるというような話も昨年来から聞いてきました。
しかし、間もなくもう一年半になるというのに復旧の方針さえまとまらないのは、さまざまな要因がありますけれども、冒頭述べたように、JR北海道にとっ ても経営状況が見通せないことがある中で、交通政策基本法の趣旨にのっとり国が踏み出さないとなかなか解決に向かわないんじゃないかという点を強く要求し ておきたいと思います。
そこで、最後に問いたいのが、なぜここまでJR北海道の問題が矛盾の深まりを見せているかということについてです。
それは、結論から言えば、我が党は繰り返し言ってきましたが、国鉄の分割・民営化によるものだという点を改めて強調したいと思います。
ことしで国鉄の分割・民営化から二十九年がたちます。東日本、東海、西日本は鉄道事業でも順調ではありますが、この間上場しましたけれども、九州は ちょっと、北海道や四国などは当初から赤字路線が多く経営困難がわかっていたこと、国としても三島特例なども行い、当時、上げた国会で附帯決議もついたわ けですけれども、さまざまな国としてやるべきことが盛り込まれていたんですよね。
もう一度読み直して、附帯決議の二に次のように書いてありました。「各旅客鉄道株式会社及び日本貨物鉄道株式会社の輸送の安全の確保及び災害の防止のた めの施設の整備・維持、水害・雪害等による災害復旧に必要な資金の確保について特別の配慮を行うこと。」と附帯決議で付されています。
さまざまな北海道や四国、九州の状況を、特に今、熊本の様子なども見たら、こういう附帯決議が付されるのは私は当然だというふうに思います。今の日高本線の現状も、こういうことを鑑みて行うべきではないんでしょうか。
もちろん、当時から三十年近くたって、JR北海道自身の経営がどうであったかということも問わなければなりません。しかし、赤字路線を抱えるこのような 北海道などで困難が見通せていたと思われるのに対して、今JR自身の責任などとともに、国の責任も改めて問わなくてはいけないのではないかと私は思いま す。
今代行バスで、なかなかJRに乗れなくて苦労している日高沿線住民の皆さんの前で、いやいや、国の責任など当時からありませんということは言えるんでしょうか。今こそ私は分割・民営化においての国の責任について考え直すときだと思いますが、大臣の認識を伺います。
○石井国務大臣
国鉄の分割・民営化は、公社制度のもとで全国一元的な運営が行われてきた国鉄の経営形態を改め、健全な事業体としての経営基盤を確立した上で、国鉄の事業を再生するために行われたものであります。
JR北海道におきましては、会社発足以来、こうした趣旨を踏まえて事業運営を行ってきましたけれども、国鉄改革から約三十年が経過する中で、地域における人口減少や道路整備の進展など、さまざまな事情の変化がございました。
JR北海道においては、こうした国鉄改革以降の事情の変化を踏まえながら、引き続き、国鉄改革の趣旨を踏まえた経営に努めてもらいたいと考えております。国としても、そのために必要な支援を行ってまいります。
○畠山委員
情勢の変化があったということだけでとどめてはいけないと私は思うんですよ。
実は、さまざまなそういう現場に行ったときに、一枚の資料をいただきました。これは手元にあるんですけれども、一九八六年五月二十二日付の朝日新聞で、 当時政権党だった自民党が、もちろん今も政権党ですけれども、新聞広告を出されていました。こう書いています。「六十二年四月を目指して新しい鉄道をみな さんと一緒に考える――自民党」「民営分割ご期待ください。」「全国画一からローカル優先のサービスに徹します。」「ローカル線もなくなりません。」「民 営分割ご安心ください。」とあります。
全然違うじゃないか、何の努力がされているのかと地元の方から話がありました。私、これを紹介した理由というのは、大事にこうやって持っていて、地域住 民の方が、地域の足を守ってほしい、そういう気持ちがわかりますかということを訴えたいがために、きょうこちらに持ってきたんです。
だって、地方自治体の首長さんもそうですし、地元の住民も今受け身ではなく知恵を絞って、先ほどから大臣も述べられているように、協議会で話し合いをし てきているんですよ。地元自治体の協議会では利用促進策も提案しているのは、国としても承知しているではありませんか。だから、JRや国が応える番ではな いのか。新幹線の延伸は進めながら、何で在来線支援の旗を振らないのかと私は思います。
経営面でも安全面でも公共交通の維持という面でもJR北海道の矛盾が噴出しているのは、根本的に、国鉄改革、分割・民営化に端を発するものだと思います。
そこで、あしたから再国有化しろとかいう話ではありません、少なくとも検証が必要な時期を迎えているのではないか、そういう対策をとる気はないか、最後に大臣に伺います。
○石井国務大臣
国鉄の分割・民営化によりまして、効率的で責任のある経営が実施できる体制が整えられた結果、全体として鉄道サービスの信頼性や快適性が格段に向上いたしました。
また、経営面でも、JR本州三社は既に完全民営化され、JR九州も完全民営化に向けて昨年JR会社法が改正されるなど、順調に推移している面もあると考えております。
一方、JR北海道、JR四国及びJR貨物の三社については、各社それぞれ状況は異なりますが、まだ経営自立が可能になるような段階には至っておりません。
このため、国としては、これら三社に対しまして、実質的な経営安定基金の積み増しや設備投資に対する助成や無利子貸し付けなどの支援を行っているところであります。このような措置を通じて、経営自立に向けて着実に取り組みを指導してまいりたいと考えております。
○畠山委員
今、最後に話された内容というのはこれまでもやってきて、しかし、JR北海道の経営状況も聞きましたけれども、また二年後、三 年後ぐらいに運用益なども下がって、ますます大変になるんじゃないか。それが、この間の三月のダイヤ改正で減便であったり駅の廃止に直結しているというの は道民誰もが感じているものですよ。民営化すればバラ色になるかのように言われてきた中身は、しかし、今JR北海道の現状を見れば胸を張って本当に言える のか。私は、違うということを強調したいと思います。
沿線住民からは、JRを守りもしないで何が地方創生かという声を聞きました。当然の思いだと思います。国として復旧や安全対策や緊急策をとるとともに、根本的には分割・民営化についての検討をするよう求めて、私の質問を終わります。

第190回国会 農林水産委員会 第5号   平成二十八年四月二十六日

○畠山委員
日本共産党の畠山和也です。
森山大臣とは、先週の月曜日から、きょう数えたら五回目の質問ということになって、また君かというふうに思わないでいただきまして、早速質問に入りたいと思います。
本題に入る前に、国と北海道と北海道むかわ町が三月に結んだ協定について一言伺います。
これまで、町と道、道と国、国と町がそれぞれ連携していたものを、今回、流域が一体となって森林の整備、管理、また森林資源の有効利用を図ることとした協定と聞いています。
さまざまな問題を抱えている林野行政の中で、国と都道府県と市町村がこのように三者協定を結んだことは、重要な意義を持つものと考えます。
そこで、今回のこの協定が、今回審議されている法案や、見直しが進められている森林・林業基本計画との関係でどのように位置づけられるのか、内容や意義について説明してください。
○伊東副大臣
畠山和也議員の御質問にお答えしてまいります。
お話にありましたように、本年三月二十二日、むかわ町、そして北海道庁、北海道森林管理局との間で、むかわ町における地域主体の一体的な森林づくり協定 が締結されたところであります。この協定は、お話にございましたように、国有林、道有林、町有林、そして私有林の所管を超えて、流域一体となって森林整備 やあるいは森林資源の循環利用を推進することを目的としたものであります。
畠山委員御指摘のとおり、林野庁といたしましては、地域の森林・林業を活性化する観点からは、国有林と民有林との連携が重要であると考えております。こ れまでも、こうした協定に基づき、路網の整備や効率的な間伐等に連携して取り組む森林共同施業団地などの取り組みを進めてきたところであります。
今般見直しを進めております森林・林業基本計画の案におきましても、森林共同施業団地の推進等による国有林と民有林との連携した取り組みの推進の方向を位置づけているところでありまして、引き続き積極的にこれらに取り組んでまいりたいと考えております。
以上でございます。
○畠山委員
今ありましたように、積極的な内容を持つし、積極的な意義があることというふうに私も思います。
大分前になるんですが、むかわ町の、合併した穂別の方にあります木質ペレット工場や森林組合を伺ったことがあります。今も、きょう議論されているとおりですが、多くの木が伐期を迎えるということから、森林資源の有効利用について学ばせていただいたんですね。
同時に、そこに向かう途中で、大きくはないんですけれども土砂崩れがあった現場も通りまして、急激な天候の悪化のときだったというふうに聞きましたが、 そこがどこの所有の山だったかちょっと記憶にないんですけれども、いずれにしても、活用と同時に保全、保安の重要性もその現場で学んだという記憶がありま す。
つまり、先ほどの答弁にもありましたように、現状は、国有林、民有林なども問わず連携を強めながら、根本的なさまざまな検討を必要とする時期を迎えているということを確認しておきたいと思います。
そこで、本改正案について伺いますが、まず大臣に、森林をめぐる現状認識について伺います。
むかわ町に限らず、戦後造成されてきた人工林の半数以上が主伐期を迎えている中で、切ったら植えなければいけないわけですので、森林資源の有効利用と計画的な再造林は一体なものであることは間違いありません。
木材需要は近年増加傾向ですが、一方で、木材の価格がさほど上がっていない。これらを背景にして、森林所有者の経営意欲の衰退や森林組合員の減少などが森林の管理、保全や有効利用を困難にしているのではないかと思います。
このような現状や問題点について、まず大臣の認識を伺います。
○森山国務大臣
畠山委員にお答えいたします。
委員の御指摘のとおり、やはり、近年、木材価格が低迷をしてきておりますし、また、森林所有者の世代交代等により森林所有者の経営意欲が低下をしてきて いるというふうに見ております。地域の森林組合に対しては、地域の森林の施業を集約する役割を一層果たしていくことが期待をされるようになってきていると いうふうに認識しています。
その期待に応えるためには、これまでの施業受託や森林経営信託の引き受けという手法に加えて、組合がみずから森林を所有し、経営できるようにすることが有効であるというふうに考えたところでございます。
このため、今般の法改正では、森林組合系統が積極的に森林経営を行えるように、森林組合が、組合員の同意に基づいて、組合員の利益の増進を図る目的で森 林経営を行えるように道を開くとともに、組合員の同意をとりやすくして、連合会も組合と同様に森林経営ができるようにする等の改正をお願いしているところ でございます。
○畠山委員
今大臣、中身についても御答弁いただきましたけれども、この後、少し掘り下げて質問させていただきたいと思っています。
ただ、いずれにしても、ここは認識は同じでありますが、木材価格の低迷に対してどうするかということは重要な点だと思いますので、まずこの点を少し伺いたいと思うんですね。
振り返ってみますと、戦後の復興資材から見れば、当時、大量の木材が、復興資材ですから、必要とされ、伐採をされて、人工林が成長する前に高度経済成長期と当時の東京オリンピックを迎えることとなりました。
そこで当時の政府がとった策として、丸太の関税もゼロにして海外材を大量輸入するということもありました。これで当時の需要を賄うことはもちろんできま したけれども、低価格の輸入材が市場に定着してしまうことになったのではないか、それが、今日、国内需要の約七割を輸入材で占めてしまう出発点となってし まったのではないかと考えます。
人工林の約七割近くを占める杉とヒノキの木材価格が、今、ピーク時の約三分の一から四分の一となっています。ある生産森林組合にお話も伺ったんですが、 木材価格が安過ぎて人件費が払えないという表現をされたんですね。それで、二〇一三年の森林組合統計を見ると、生産森林組合の方ですが、総数三千七十九の うち二千九十二組合が平均で六十四万円の赤字となっているということは、現状は共通しているというふうに考えます。
そこで、先ほど大臣が答弁されましたように、いろいろな形態も変えていったりすることになる本改正案ですが、生産森林組合でいえば、株式会社、合同会社、認可地縁団体など多様な形態に変更できることとしています。
今の低い木材価格に対して、これで経営が改善できる環境といいますか、そういうことになるのかどうかについて伺います。
○今井政府参考人
生産森林組合のお尋ねについてお答え申し上げます。
生産森林組合は、森林経営の協業化を望む組合員が、みずからの森林、労働力等を出し合って、法人形態で効率的な森林経営を行うための協同組織としてつくるものでございます。
そういった制度の趣旨から、組合員みずから組合の事業に従事するということが法律上求められておりますけれども、高齢化等により、みずから組合の事業に 従事することが困難となっている、そういう場合があったり、あるいは、生産森林組合の経営を多角化したい、そういう意向を持つ場合であっても、森林組合法 で規定されている事業以外の事業を行うことが制約される、そういったこともあり、今日的に見ますと制度と実態との間に不都合な面も生じている、そういうこ とではないかと我々としては分析しております。
このため、今般の法改正で、組合の活動状況ですとか経営の意向の方向等を踏まえまして、保有する森林の管理を継続しながら、生産森林組合から他の適切な法人形態へ移行できる措置を講じてはどうかと考えたところでございます。
今回措置する組織変更の規定によりまして、生産森林組合が株式会社になる、あるいは認可地縁団体になる、合同会社になるということで、法人としての活動 がより自由になって、経営が今よりも改善される部分があるのではないかということを考えておりまして、先ほど先生から御指摘があった組織形態の変更という のは、材価の低落に伴う対応ということではなくて、むしろ、組織の行為能力、その活動の仕方をより自由にして経営能力を発揮できるようにするというような 趣旨で今回法改正を考えたところでございます。
○畠山委員
今、森林組合法の話となりましたので、もう少し中身について伺います。
経営能力の発揮という点では、生産森林組合、森林組合、県森連なども含めて対象で、考え方としては同一だと思うんですが、二十六条には森林組合がみずから森林の経営ができる規定があります。
この改正案では、これまで例外的に認められていたという経営事業をやりやすくするものということで理解をするんですが、確認なんですけれども、それで は、今までなぜ経営事業の目的は限定され、実施手続も厳格に定められていたのか、その厳格さが求められていた理由について、確認のため伺います。
○今井政府参考人
お答え申し上げます。
森林組合は、森林所有者等によって構成される協同組織でありますので、施業の受託、販売事業などによる組合員の森林経営のサポートを行うとともに、森林の保続培養、森林生産力の増進を図ること、そういうことを目的とした組織でございます。
森林組合がみずから森林を経営することにつきましては、組合員が行う森林の経営と競合し得るという面もございますし、また、森林組合がみずから森林経営を行うことになりますと、森林組合自体のリスクともなり得るということから、組合員の利益に影響するおそれもあります。
そうしたことから、当初の森林組合法におきましては、事業の目的に限定をかけまして、法第一条に定められる法目的の一つであります森林の保続培養、森林生産力の増進のために行う場合に限ってその森林経営の実施を認めてまいりました。
また、その実施に当たりましては、組合員の意見を適切に反映する観点から、組合員の三分の二以上の書面による同意という厳格な手続を定めていたところでございます。それが当初の制度を創設したときの考え方でございます。
しかしながら、近年、木材価格の低迷ですとか、森林所有者の世代交代によりまして森林所有者の経営意欲が低下する中で、地域の森林組合は、組合員の方か ら、森林施業を集約する役割を一層果たしてほしいということが大きく期待されるようになってきているところでございます。
その期待に応えるためには、今般の法改正におきまして、法第一条に定められるもう一つの法目的であります森林所有者の経済的社会的地位の向上に資するも のとして、林業を行う組合員の利益の増進を期する、それを森林経営事業の目的に追加しまして、森林組合みずからによる森林経営を行いやすくするように措置 しようと考えているところでございます。
○畠山委員
先ほど、小山委員でしたか、経営上のリスクの問題であったり、今答弁がありましたが、適切な組合員の意見の反映など、協同組合 としての原点である相互扶助などが厳格さを必要としていたと思うんですね。それで、今回のように、森林組合が森林を取得して森林経営を行うとすれば、組合 員の利益に反することになりはしないかということなどは、先ほどから議論があったとおりだと思います。
今回の改正内容を改めてもう一度確認していくと、一つに実施手続等の緩和があるわけです。組合員数八百人以上規模の組合については、組合員の過半数が出 席した総会において、出席組合員の三分の二以上の議決でよしとする。二つに、組合員の従事義務を廃止するなど実施手続も簡素化する。三つに、公益目的とさ れている森林組合の行う森林経営の目的に、林業を行う組合員の利益の増進という経済目的を加える。四つに、森林の経営主体に都道府県の森林組合連合会も位 置づけられるなどなどとなります。
それで、今ありましたように、組合員の減少であったり高齢化などから、森林経営事業の労働力として見込めないことなどに、一定の緩和や廃止などの措置はやむを得ない面がある現状は理解しています。
一方、森林組合や連合会が、木材の加工販売や、今回はバイオマス事業者等の大口取引先の問題も入っていますけれども、林地残材や未利用資材を販売するな ど経済事業に積極的になればなるほど、森林組合法の第四条に書いてある、組合は「その行う事業によつてその組合員又は会員のために直接の奉仕をすることを 旨とすべきであつて、営利を目的としてその事業を行つてはならない。」という理念との整合性について、矛盾はないのかどうか、これは大臣に御答弁いただき たいんです。
○森山国務大臣
お答え申し上げます。
森林組合法第四条は今先生が御指摘になったとおりだと思いますが、今般の法改正におきましては、森林組合が、組合員の同意に基づいて、林業を行う組合員の利益の増進を図る目的で、みずから森林経営を行えるように道を開く等の改正を行うものでございます。
このように、今回改正される森林組合の森林経営事業は、組合員の同意に基づくもので、組合員の利益と相反するものではないと理解をしております。また、 法目的の一つである組合員の経済的社会的地位の向上を図るための手段として行われるものであることから、法第四条の基本理念とは矛盾をしないと考えており ます。
○畠山委員
あわせて、関連して少し質問を前に進めたいんですが、改正案では、都道府県域を超える取引を木材安定供給確保事業計画の認定対 象に追加して、計画の策定主体に木質バイオマス利用事業者を加えることにもしています。これによって、大型製材工場や木質バイオマス利用事業者等が広域か ら木材を集荷しやすくして、木材の安定供給体制の構築を促進することとしています。
この事業計画の策定主体に木質バイオマス利用事業者が入ることについて、いろいろ聞き取りもしたんですけれども、ある首長さんからは、大手のバイオマス 事業者が山を丸ごと買いたいと言ってきているというところがあるそうなんですね。大手に山ごと囲い込まれてしまわないかという心配の声もあるんだという懸 念のお話も伺いました。
そもそも、木質バイオマス発電についてもいろいろまた調べましたけれども、今まで林地に捨てられていた林地残材を活用して地域の林業振興の一助にするという狙いも一方にあったと思います。
しかし、今回、森林組合が行う経営事業の見直しや共有林の持ち分移転の裁定制度の創設などと相まって、施業の集約化と利益を上げるための伐採が優先され て、地域に根差した林業再生や森林資源の保全という観点が後景に追いやられるという心配、おそれはないかということについて伺います。
○今井政府参考人
お答え申し上げます。
今般の法改正におきます森林経営事業の見直しですとか共有林の持ち分移転の裁定制度の新設は、近年、木材価格の低迷や森林所有者の世代交代等により森林 所有者の経営意欲が低下する中で、適切な森林の整備ができない問題が顕在化していることを踏まえ、それに対する対応策として考えたものでございます。
具体的には、施業の受託だとか経営信託に加えまして、森林組合がみずから森林を所有し、経営できるようにする、あるいは、所在不明の所有者の存在により 施業が困難となっている共有林の立木持ち分が移転できるようにするということにしておりまして、これらにより、森林施業の集約化と面的な森林整備が促進さ れるものというふうに考えております。
これらの措置によりまして森林が伐採されることとなった際におきましても、森林計画制度における伐採の届け出ですとか森林経営計画制度、保安林制度等に より適切な施業が担保されるとともに、今般の法改正におきましては、森林所有者等による造林の状況の報告等の制度も創設し、市町村による指導監督を行いや すくすることとしておりまして、これらの制度の適切な運用を通じまして、森林の保全を考慮しない無秩序な伐採などが行われることがないように取り組んでい きたいというふうに考えております。
○畠山委員
そのほかにも個別の観点でいろいろ聞きたいことがありまして、林地台帳の問題も先ほど来質問がされまして、私の方も問いたかっ たんですけれども、やはり事務作業を、地方自治体において負担を軽減しなければいけないという点などがあるということを指摘しておきたいと思います。
時間の関係で、少し先に進めたいと思うんです。
いろいろこのような形で、さまざまに個別も含めた、議論を深めるべき論点があると思っているんですね。それほど林業の現状が深刻だということで、一つ一 つを解決することはもちろん大事だと思っているんですが、ちょうど今、基本計画を見直していることに当たり、根本的な問題を改めて議論もしておく必要があ ると思っています。
この森林・林業基本計画の見直し案には、輸入材に対抗し得る高い競争力を確保していくことが強調されて、望ましい林業構造の確立という部分では、意欲あ る者に森林経営計画の作成と長期的な施業の受託を推進し、同計画に基づく低コストで効率的な施業の実行の定着を図るとあります。
意欲ある者という理解なんですけれども、これは力のある森林組合や生産森林組合、あるいは民間の林業経営事業体に支援を集中するとも読める内容と理解していいのか、それが目指している内容なのか、答弁いただけますか。
○今井政府参考人
お答え申し上げます。
何度か先生からも御質問いただきましたけれども、現在、一番の問題は、木材価格の低迷、森林所有者の世代交代等により森林所有者の経営意欲が低下している、それが非常に深刻な事態にまで至っているということではないかと思います。
そういう中で、林業の持続的かつ健全な発展を図るためには、その地域の森林を森林組合等にまとめる役割を果たしていただく、そういうことが必要かという ふうに考えておりまして、とりたてて、力のある大きな林業事業体、森林組合等に全てを任せるということではなくて、全体の森林経営に対する意欲が低下して いる中で、地域の森林を守っていくという意思を持っている事業体にいろいろな計画等をお願いできるような、そういう枠組みをつくるということが重要ではな いかというふうに考えております。
そういうことから、今見直しを行っております森林・林業基本計画の見直し案の中では、森林経営計画の作成による施業の集約化ですとか長期受委託を推進す ることに加えて、生産森林組合ですとか共有林の活用等を通じた施業ロットの確保、生産性の向上、あるいは自伐林家の取り組みへの支援、そういった地域の森 林・林業にかかわる全ての主体が活躍できるような、そういうフィールドをつくっていきたいというふうに考えております。
今後とも、特定の主体に偏ることなく、地域の実情に即して多様な担い手が育成、確保されるとともに、それぞれの活躍を通じ、林業の持続的かつ健全な発展が図られ、森林の多面的機能の発揮が確保されることを目指していきたいというふうに考えております。
○畠山委員
何で先ほどのような質問をしたかといいますと、同じようなところの部分で、自家労働により施業をしている林家については、この 計画案の中で次のように書いてあるんですよ。地域の森林・林業を効率的かつ安定的な林業経営の主体とともに相補的に支える主体として捉えると書いてあるん ですね。相補的、よくわからなかったんです、私の理解が悪いのかどうか。
今御答弁ありましたように、全ての主体が活躍できるような環境をつくるであったり、多様な主体をもって支援するんだということであるのかどうか、もう一度、ここの私が指摘した内容について、関連して説明していただけますでしょうか。
○今井政府参考人
お答え申し上げます。
林業の持続的な発展を図るためには、林業従事者の多くが居住する山村におきまして、林業生産が活発に行われ、定住が促進されること、そういうことが非常に重要だと思います。
その際には、いろいろな事業体が地域にはありますので、森林組合、あるいは民間事業体、さらにはいわゆる自伐林家などの多様な担い手が相互に協力していくということが非常に重要であり、かつ効果的なんだろうと思っております。
相互に協力することの具体的な効果といたしましては、例えば、林業事業体による活発な林業生産活動を通じて整備された路網等を自伐林家が有効に活用す る、あるいは、造林など季節性のある林業事業体の労働力を、自伐林家が一時その労働力として担うことにより、自伐林家の収入の確保に資する、あるいは、林 業事業体が中心となって木材を安定的に供給する中で、地域の材の価格安定につながり、それはひいては自伐林家の利益にも資する、そういった相互に補完する ような関係というものがあって、そういうものが実現するようなものを目指していくことにより、多様な担い手が地域の森林・林業を効果的に支えていく姿、そ ういうことを目指したいということを基本計画の中に位置づけたいと考えたところでございます。
○畠山委員
施業の集約化の必要性だったり、今述べたような中身もあるかと思うんです。一概に否定するつもりはもちろんないんですが、大規模な事業体だけに限らず、バランスよく支援の仕組みを充実するということは必要だと思うんですね。
というのも、今年度予算をもう一度見てみると、例えば、高性能林業機械導入支援事業というのが、年間素材生産量が三千立米以上という要件になっている。小さな生産森林組合では対象にならないところもあるんですね。
林政審議会でも、こういう大規模集約などだけではない、もう一つの道があるんじゃないかという問題提起に私は注目しました。いろいろな実例も議論されて いましたよね。群馬県では、県森連が渋川市に製材施設を設置して、全量買い取りの出口対策を行っていることですとか、きょう冒頭にも紹介した、地方公共団 体との連携によって地域の林業関係者を支える多様な道もあるのではないかというふうに思うわけです。
年間二千立米ほどの素材生産量がある生産森林組合でもちょっと聞き取りをしましたら、施業困難な森林所有者の委託を受けて仕事を確保し、黒字化してきた という努力も伺いました。一方で、自分たちのように地域に根差した林業経営をしている小さな事業体は、大きな事業体が進出してきたら太刀打ちできないと述 べているわけです。
これは大臣に一言きちんと述べていただきたいんですけれども、こういうような現場の声に対して、どのように受けとめられますか。
○森山国務大臣
林業の現場においては、効率的、安定的な、大規模な事業体のみならず、それぞれの地域の実情に応じた多様な担い手が存在することが重要であると認識をしております。
このため、小規模な事業体と大規模な事業体が相互に協力、役割分担をしながら、地域の森林・林業を支えていくことができるように、引き続き、小規模な林業事業体による造林、間伐等への支援など、各般の施策を講じてまいりたいと考えております。
○畠山委員
残りの時間、最後に問いたいのが、政府の林野行政の位置づけについてです。
まず、基本を確認いたします。
森林・林業基本法は、第四条で、「森林及び林業に関する施策についての基本理念にのつとり、森林及び林業に関する施策を総合的に策定し、及び実施する責務を有する。」と国の責務を定めています。
確認します。ここにある基本理念とは何でしょうか。事務方で結構です。
○今井政府参考人
お答えいたします。
森林・林業基本法におきましては、第二条及び第三条におきまして、国、地方公共団体や林業従事者等の関係者が進むべき方向となる基本的な考え方を基本理念として規定しております。
まず、第二条におきましては、森林の適正な整備及び保全を通じて、森林の有する多面的機能の持続的な発揮が図られることが重要であるということが一つ目の理念として掲げられております。
その上で、第三条におきまして、その森林の多面的機能の発揮のためにも、林業が持続的かつ健全に発展するとともに、林産物の需要に即した供給と利用促進が図られるべきであるということが二つ目の理念として掲げられております。
その上で、第四条は、国は、この二つの基本理念にのっとり、森林及び林業に関する施策を総合的に策定、実施する責務を有するというふうにされておりまし て、林野庁といたしましては、こうした理念にのっとり、第二条、第三条の二つの理念に基づき、森林・林業基本計画に基づいた具体的な施策を講じていくとい う構成になっていると認識しております。
○畠山委員
森林の多面的機能の持続的発揮のための整備、保全、また山林における継続的な林業生産活動も一体として捉えるということがこの基本理念の中にあるかと思います。この方向で林業の再生を図っていくことが基本だろうと思います。
そこで、今回の法案を見て感じることが、国の責任を軽くして、市場に任せようという姿勢ではないのか。その姿勢が、政府の林野行政に対する位置づけにも端的にあらわれているというふうに思います。
というのは、二〇一五年農林業センサスで、二〇〇五年に二十万あった林業経営体が二〇一五年に八・七万経営体と五六・六%減ってきていました。
軌を一にして、林野庁の資料によれば、林野庁の職員数も、二〇〇七年度は七千百八十三人いたのに、今年度は四千九百七十二人と約三割減です。統計のある昭和三十九年、ですから一九六四年だと思いますが、当時は八万八千五百三十八人いたんですね。
改めて、林野庁の入庁案内、職員募集パンフも見たんですね。転勤も多い職場なんだなと改めて思いましたし、森林の大切さを理解して、山を守りたいという 職員の初心や思いというのが伝わってきました。ですから、人員削減が続いてきたことが残念でなりません。こういう機会に改めてその点を指摘しておきたいと 思うんです。
営林署から人が消えてもう久しいですし、予算で見ても、二〇〇六年度の四千二十六億円から、今年度二千九百三十三億円と三割減。森林資源の活用はもちろ ん必要だと思いますが、水源確保や防災の観点も含めて、森林の保全という国の大義を改めて確認すべきではないかと思います。
この基本法の理念に基づいて、指摘されているとおり、ふさわしい人員や予算が必要だと思いますが、大臣、いかがでしょうか。
○森山国務大臣
お答えいたします。
林野庁の職員につきましては、その大半が国有林野事業の職員でありますが、政府の行政改革の方針のもと、人員、組織の徹底した合理化、縮減に取り組みました。
昭和三十九年がピークでございまして、そのときは八万九千人いた職員が、先ほど委員も御指摘になりましたとおり、本年四月時点で約五千人弱になっているところでございます。
また、平成二十五年度からは、国有林野事業の事業、組織全てを一般会計に移行したところでございます。
一方、林野庁の予算については、政府の厳しい財政状況のもと、平成九年度がピークでございますが、このときは五千三百億円でありましたけれども、本年度は二千九百億円となっているところであります。
今後とも、業務の効率化を図ることは大事なことだと思っておりますが、必要な予算の確保を行い、森林の多面的機能の発揮や林業の持続的かつ健全な発展などの基本理念に掲げた政策の実施に全力を尽くしてまいりたいと考えております。
○畠山委員
今回の法案を審査するに当たって、私自身も本当にいろいろな現状を学ばせていただきました。所有者がわからない、先ほどあった 木材価格の低迷、いろいろな問題が複合的に絡まっていて、今述べたように、歴史的に、林野行政はどうあるべきだったんだろうかということも思いました。
法案が五本一括で出されて、必要なものもあると思っていますし、懸念しているものも率直に言ってあります。
これまでの矛盾が膨らんできたことで、全てを解決しなきゃいけないということから五本一括ということだったのかもしれません。ですが、これまでの林野行政の総括なしに展望はなかなか見えてこないのではないかなというふうにも一方で思います。
大臣、最後に伺いたいんですが、今回の法改正にとどめず、林野行政のこれまでの全般的な総括を求めたいと思いますが、最後に、いかがでしょうか。
○森山国務大臣
お答え申し上げます。
戦後造林をされました人工林が本格的な利用期を迎える中、森林資源を循環利用し、木材需要の拡大と国産材の安定供給体制の構築を車の両輪として、林業の成長産業化を実現し、地方創生に貢献することが喫緊の課題であると認識をしております。
このため、需要面では、CLTや木質バイオマスの利用促進等による木材の需要拡大、供給面では、施業集約化や路網の整備など低コスト化の推進を通じた国 産材の供給力の強化、間伐等の森林整備、保全等を通じた森林の多面的機能の維持向上などの施策を総合的に推進し、木材需要の拡大と国産材の安定供給体制の 構築に取り組んでいるところであり、林業の成長産業化の実現に向けて最大限の努力を今後も続けてまいりたいと考えております。
○畠山委員
なお、この後提案されます合法伐採木材等の法律案について一言だけ申し上げます。
地球温暖化の防止、日本を初め各国の森林資源の保安、保全に向けて、合法伐採の木材を活用することで違法なものを市場から排除する仕組みは我が党も必要なものと考えます。関係団体や国際NGO団体からも提起されてきた問題であり、可決する意義は大きいものと考えます。
これを機に、輸入業者、関係業者が林業、木材加工業等の健全な発展に貢献することを期待するものであります。
質問を終わります。

第190回国会 地方創生に関する特別委員会農林水産委員会連合審査会 第1号 平成二十八年四月二十五日

○畠山委員
日本共産党の畠山和也です。
私からも、特区特例案における農地法特例の、法人による農地取得の件について質問を行います。
現状でも、畜産や施設栽培などで農地を利用しないものについては企業として農業参入ができるということになっています。しかし、農地においては農地法のもとで制約がされてきました。それは、先ほど来議論がありましたように耕作者主義に基づくものと思います。
その原則が大きく変わったのも先ほど来話があったように、まず、二〇〇三年四月の構造改革特区の一つでした農地リース特区、当時いわゆる農業特区といっ たところだったと思います。当時も、企業の農地所有へアリの一穴になるのではないかという懸念や危惧の声がありましたが、このリース方式は、結局、一年半 後の二〇〇五年九月に、農業経営基盤強化促進法によって全国展開されることとなりました。その後、農水省が二〇〇九年十二月に大幅な農地法改正で企業の参 入をより積極的に位置づけたというのがこの間の経過だろうと思います。
そこで、まず最初に確認したいんですが、今、リース方式において、企業が賃借権を取得できる際に、主な条件を三つほど課していると思います。その確認をまず端的に答弁してもらえますか。
○奥原政府参考人
今先生から御指摘ございましたように、平成二十一年の農地法改正でリース方式での農業参入が自由化されております。このときの条件でございますけれども、農地法の中に大きく三つ書いてございます。
まず一つは、権利の取得後においてその企業がその農地等を適正に利用していないと認める場合に使用貸借または賃貸借の解除をする旨の条件が書面契約で締結されている、これが一点でございます。
それから二つ目として、地域の農業における他の農業者との適切な役割分担のもとに継続的かつ安定的に農業経営を行うと見込まれること、これが二点目でございます。
それから三点目は、その法人の業務を執行する役員または使用人のうち一人以上の方がその法人の行う耕作または養畜の事業、要するに農作業ということでございますが、これに常時従事すると認められること、この三点でございます。
○畠山委員
ちょっと順番はいろいろありますけれども、役員要件ですね、業務執行役員が一人以上で、法人の農業経営に責任を持つことなど で、実際に農作業もすることなどであります。そして、地域の調和要件として、地域での適切な役割分担もありました。もう一つ、冒頭に言っていたものはいわ ゆる解除条件というふうに考えてよろしいんでしょうか、書面において手続としては行うというのが今の奥原局長の答弁だと思うんですけれども、当事者同士の 契約を農業委員会が確認して、そして農用地を明け渡す際の原状回復の義務であったり費用負担の責任を明確にしていたということで、以上の三要件だったとい うふうに思います。
ですから、法人や企業に対しても書面による契約などの形で責任を一定負わせていたというふうに理解できます。
そこで、今回の法案を見ると、役員要件あるいは地域調和要件は、今のリース方式と同様になっています。
問題は、この解除要件、解除条件が違うわけでありまして、例えば、書面による契約で、これまでだったら、先ほど言った原状回復の義務であったり、費用の 負担は誰がするのかであったり、違約金の支払いであったり、損害賠償の取り決めなども含めたことで条件にしてきたはずだったんですね。今回は、農地が適正 に利用されない場合は、先ほどからあったように、地方公共団体に移転することとしている。これは、今回の法案は、一旦地方公共団体が農地の所有権を持った 後に企業へ所有権を移転するという関係から、明け渡す、戻るということになるんだと思うんですね。
先ほど来議論はありますけれども、改めて確認します。
ということは、企業に所有を求めるという今回の特区は、原状回復の責任を企業がどこまで負うのか、どこが原状回復の責任を負うのかということについて、 先ほど来、明確に、なかなかよくわからないんです。企業が原状回復の責任が問われるのかどうか、はっきり御答弁願えますか。
○奥原政府参考人
リース契約の場合には、借りている方の企業が農地を適正に利用しない場合には貸している方がリース契約を解除できる、こ のことが書面契約の中に書いてあるということでございます。そのときに、契約の中でいろいろなことが書いてございますので、原状回復の責任がどうか、ある いは企業の方がすぐにやらないときに損害賠償をどうするかとか、そういったことも契約の中にきちんと書かれる、こういうことでございます。こういう書面契 約がきちんとあるということがリース契約を農業委員会が許可するときの条件になっている、こういうことでございます。
これに対して、今回の特区での所有の話ですけれども、基本的には我々は同じ考え方で物事を考えているわけです。ですが、売買契約について、これをリースのように解除できるというだけでは意味がないということでございます。
これは先ほどから申し上げておりますけれども、リース契約の場合には、貸している方の方は所有者としての意識は持ち続けておりますので、自分が所有して いる農地を借り手の方がきちんとやっているかどうか、これはきちんと見ていて、一定の条件を満たしたときは解除するということは当然行われますけれども、 売買の場合には、売ってしまった方はもう所有者ではなくなります。売ってしまった土地について、売買契約を解除しようとかこういう意思を持ち続けることが できるかどうか、こういった問題があるわけでございます。
そのために、今回は、リースの解除と同じようなことを実現するためにどうするかということで考えておりまして、まずは、売り手を地方公共団体に限定す る。所有者の方から企業が買うとしても、一旦は所有者の方から地方公共団体が買った上で企業に対して販売する、こういう形をまずとっていただく。その上 で、企業がきちんと使わない場合には、農地の所有権を、地方公共団体に特に所有権を移転する、戻す、こういう体系をつくっているわけでございます。
このときに契約の中身をどうするかは当然あるわけでございますので、その中身として、原状回復の責任、あるいはきちんとやらないときの損害賠償、こういったことも当然その契約の中で決められる、こういうことだというふうに考えております。
○畠山委員
奥原局長、長く御答弁いただいたんですけれども、最初の九五%ぐらいは知っていた上で質問しているんです。
最後は結局、言われたように、契約によって決まるんだということですから、企業は必ずしも原状回復の責任は問われないということも理屈としてはあり得ますね。
農水大臣に確認したいんですけれども、通告としては、これは大臣に実は御答弁いただきたかったので、今の点、もう一度確認します。
○森山国務大臣
今委員御指摘のとおり、契約によって行われるわけでありますから、当然のこととして、地方自治団体は、契約を結ぶときに契 約の内容をしっかりと精査しながら契約をしていただけるものだと思っております。ですから、原状回復のためにどういう措置をとるかということはいろいろな やり方があるんだろうと思いますが、そこはそれぞれの自治体で責任を持って対応していただくというスキームでございます。
○畠山委員
今回のこの法案は、地方公共団体に責任を委ねるということが強調されていると思うんですね。先ほどから、いろいろな経過が今回の法をつくるに当たって出されていたことが背景にあるんだろうとは思うんです。
しかし、これも先ほどから議論がありましたが、例えば、地方公共団体がまず農地を買いますよね。その買った額と企業へ売るときの額に差が出ることが考え られます。これは、SBSのお米じゃないけれども、同時にやるわけじゃないんだから、そのときの時間のラグが結局金額のラグになる可能性はもちろんあるわ けで、逆に、地方公共団体が買い戻す際に、売った額との差が出ることもあり得ます。これは、地方公共団体からすれば、原資は税金になるわけですから、せめ て適正な売買価格にならなければいけないと思うし、やはり議会の承認にとっても重要なことになると思うんです。
今回の法案においてその保証はどこにあるかとなったら、先ほど来あったように、地方公共団体が契約のときにやってください、つまりそういうことなんですね。もう一度確認します。
○森山国務大臣
こういうことだと思います。
地方団体は予算を計上しなければ買うことができませんので、予算を計上することによって議会に審議を委ねるということになります。そこで予算が成立をし ますと一定の価格が決まってくるんだと思いますが、そこの価格の決め方というのはいろいろな考え方があるんだろうと思います。そこの自治体の発展をどう考 えるか、また、そこに何を期待するのかということもあるんだろうと思います。
そういうプロセスを経ていきますので、地方自治体がやはりしっかりと対応していただくということが大事なことだと思いますし、また、そのことによって地方自治体の政策方向性というものも決まってくるのではないかなというふうに考えております。
○畠山委員
今回の法案は、企業が農地を所有することの是非という問題もあるんですけれども、同時に、地方公共団体にこのような性格の中身 を委ねていいのかということが、もう一つ問題があると思うんですよ。だから、法律の中身を見ても、該当企業と地方公共団体が書面で契約を結ぶに当たり、国 に認定を求めるという仕組みになっていますよね。これは区域計画の中身のことなんでしょうか、ちょっと事実として確認します。違うんでしょうか、これは違 いますか。通告していませんが、わかれば。
○奥原政府参考人
ちょっと今、質問の御趣旨がよくわからなかったんですけれども……(畠山委員「契約を国が認めるというふうな法律条項はありませんか」と呼ぶ)
そういうスキームじゃありません。農業委員会が許可をする、そのときに、地方公共団体とそれから企業の間でこういう契約がきちんと結ばれていることを確認する、こういうスキームでございます。
○畠山委員
では、そのスキームであることを確認いたします。
いずれにしても、地方公共団体において、今ありましたように、原資が税金であるという中で、原状回復の責任もまたどうなるかよくわからないということ で、実際こんな中身で本当に、兵庫県の養父市以外のところで広がっていく条件とか可能性とか、そういうところに手を挙げるということがあり得るのか、言っ たら疑問なんですよね。
というのは、結局、今回の法案の立法事実にかかわる問題で、なぜ企業が農地所有を求めるのか、そして今回のような形になったのかということがやはりよくわからないんです。
それで、確認しますけれども、私は日本不動産研究所の農地価格は持っているんですが、どこの価格でも結構です、当面、この間の直近で、十アール当たりの農地価格と、それから同じく賃貸料について答弁してください。
○奥原政府参考人
これは平成二十四年の全国農業会議所の調査の結果でございます。
都府県における田の十アール当たりの平均売買価格は百三十一万円でございます。これに対して、田の平均年間賃料は一万三千円というふうになっておりま す。それから、都府県におけます畑の十アール当たりの平均売買価格は九十三万円でございます。一方で、平均の年間賃料は約一万円。これがデータでございま す。
○畠山委員
田んぼだけで例に挙げれば、百三十一万円に対して賃貸料一万三千円ですから、ちょうど百倍ぐらいのものになるわけです。ですか ら、先ほどからありましたけれども、リースでも最大五十年というふうにもなりますけれども、それどころか百年規模の農地価格であるわけなんですよね。
では、何でそうなるんだ。それぞれの企業の経営判断だと言われればそれまでなんですけれども、やはり、何でそこまでして農地を企業が所有したいのかというところの疑問が解けません。
それは、先ほど来から石破大臣がいろいろと答弁をされていますけれども、例えば、長期的な安定事業のために必要だと判断があるだとか、あるいは耕作放棄 地の解消であるとかいうことが先ほど来の議論の中で御答弁がされています。しかし、耕作放棄地の解消ということなどであるならば、中間管理機構の今のス キームなどもあるでしょうし、なぜこういう形で農地を求めることになるのか、先ほど来からの議論を聞いてもやはり私もよく理解できません。
もう一度答弁してもらえますか。
○石破国務大臣
我が国の私法上、所有権絶対ということになっておって、学校時代に、所有権はオールマイティーだということを習いました。 それはもちろん、公共の福祉の用には供さなければいけないのですが。とすると、所有権を持つということによる安定感、安心感というものはあるんだと思いま すね。
そして、それがずっと長期に保有できることによって、いろいろな農地の活用の仕方というものを企業の大勢の人たちの知恵を使って積極的に展開をすること ができる、それはひっきょう六次化というものにもつながっていくものでございましょう。所有権というものを得ることによって、農地の持っている潜在的可能 性をフルに引き出して、その活用を最大限に図っていき、農地を活用し、農業所得を上げていき、地域の利益に資するということを考えている企業があるのだと 私は考えております。
○畠山委員
農地が持っている潜在的な可能性を生かすためには企業の農地所有もあり得るという趣旨の答弁だと思うんですよね。
ただ、そうであるならば、最初に、企業がリースにおいても三つの要件が課されているということで、解除要件を私は詳しく聞きましたけれども、では、何で この解除要件が必要になっていたんだということになるんですよね。何で今回、解除要件を解除しなければいけなくなるのかということで、そもそもこうやって 企業への責任を盛り込んでいた理由が消えちゃうということになりはしないのかと思うんです。それで、企業がそういうような要件を三つ課されているうちの一 つが外れた。
今回、企業についても、農地取得の要件は課しても、その企業自体の条件がないと思うんです。例えば、わかりやすく言えば、外資の子会社であったり系列会 社であったり、あるいは外資に吸収合併されることなども懸念の一つとして出されていると思うんですよね。この外資の規定についても特段定められていること はありませんよね。これをちょっと確認します。
○奥原政府参考人
今回の国家戦略特区で企業が農地を取得する場合につきましても、農地法の第三条第二項第一号、これの要件がかかってまい ります。これは何が書いてあるかといいますと、企業が取得する農地の全てを効率的に利用して耕作または養畜の事業を行うと認められる場合に限り許可をす る、これをかぶっております。
それから、今回の特例の中におきましても、リース方式の場合と同様に、国籍に関する規定をそのまま書いているわけではございませんけれども、地域の適切 な役割分担のもとで継続的、安定的に農業経営を行うことというのと、それから、農業に常時従事する役員等を一人以上置く、これは今回の特区法の中でも書い てあるわけでございます。
したがいまして、地域とのつながりを持って農業を継続的に営めない法人は農地を取得することはできない、こういうことになりますので、外国企業が農地を取得することは基本的には困難であると考えております。
○畠山委員
確かに、困難というふうに言いましたけれども、つまり、結局、今回の要件というのは役員要件と地域調和要件が満たされればそれ でいいというわけですから、事実上困難だということが今局長の答弁でありましたけれども、窓口としてはあり得る、論理的にはあり得るということだと思うん ですね。そのよしあしについてはいろいろ考え方があるでしょう。ただ、そういうことがあり得るということだけは事実として確認をしておきたいと思うんで す。
それで、残り時間はあとわずかなんですけれども、こういう形でいろいろな、今まで書かれていた要件がなくなることで、やはりアリの一穴になりはしないか という農家の不安がなかなか消えないのは、私が冒頭に申し上げたように、リース方式を導入するときにもさまざまな要件をこんなふうにかけていたけれども、 結局それが広がってきた。
私、地元は北海道ですけれども、確かに、企業さんが農地をリースして、地域の皆さんとも調和してされているという話も伺ってはいます。そういう点ではさ まざまな現状は私も理解しているつもりではありますが、ただ、今回の特区の法案というのは、今述べたようにちょっと質が違うんじゃないかというふうに思う わけです。現場の不安が拭えないのは肌感覚であるのではないかと思うんですね。
つまり、今回の特区で誰が喜ぶのかということに問題の焦点が私はあると思います。
国家戦略特別区域諮問会議には、兵庫県養父市長が盛んに要求していた記録が次々出されていまして、第十九回会議で代表例三社の名前が挙げられています。議事録に残っていますので、事実の確認ですから、どこかということを答弁してもらえますか。
○佐々木(基)政府参考人
お答え申し上げます。
今お話ありました、代表例として挙げられた三事業者につきましては、山陽Amnak株式会社、福井建設株式会社アンド株式会社オーク、オリックス株式会社アンドやぶパートナーズ株式会社、以上の三社でございます。
○畠山委員
山陽さんとか福井さんは地元の企業さんであることは私も確認していますが、ただ、オリックスさんはちょっと違うんですよね。
それで、改めて見てみると、その諮問会議の有識者議員の中にこのオリックスの役員を務められている委員がいるかと思うんですが、答弁できますか。
○佐々木(基)政府参考人
お答えいたします。
今お話のありましたオリックス株式会社アンドやぶパートナーズ株式会社のオリックス株式会社につきましては、その社外取締役に国家戦略特別区域諮問会議の有識者議員の一人である竹中平蔵議員が就任されているものと承知しているところでございます。
○畠山委員
そういうことなんですね。地元の要望が出ている、市長さんにはそういう形になるわけですけれども、諮問会議においては、その委 員である竹中さんが役員を務めているオリックスさんがこうやってかかわっているわけなんです。自分が役員をしている企業の農地取得について政府の機関会議 で決定するということが、私は甚だしいことであろうというふうに思っています。
会議録もずっと読みました。読んだら、農家が農地を手放す理由について深めることなく、先ほどもありましたけれども、岩盤規制を突破するんだということ を連呼されているわけです。これが産業競争力会議の正体ではないか。こういう議論の経過があるから農家の皆さんの不安が払拭されないのは当然だというふう に思います。
根本的に耕作放棄地の解消ということであるならば、もちろん、これに対しては担い手を育てていくということが重要だと思います。私も農水委員であります ので、森山大臣ですとか、ずっと委員会の方で、担い手のことについては、酪農であったり畜産であったり、さまざまな方で議論をさせていただいてきました。 ですから、農水省も、政策的な立場や是非はいろいろあったにしても、さまざまな政策を担い手対策としてやってきたんですよね。
ただ、それを今回、法案を読みますと、趣旨としては、従前の措置のみでは解消できないおそれがあるから企業の農地所有を認めると書かれているわけです。 従前の措置のみでは解消できない、つまりこれは、農水省のこれまでの、従前の措置、これまでの政策では耕作放棄地がふえちゃうと言っている論理になるか ら、結局、農水省として政策の自己否定になっちゃうんじゃないかというふうに私は読んだときに思ったんですよ。
大臣、ちょっとこの点、通告していませんけれども、そういうことになりはしないんでしょうか。さまざまな担い手対策をやってきた、これからもやってい く、それは、また企業においてはリース方式とかあるけれども、さまざまな要件もかけてきた。しかし、今回、従前のそのような措置のみではできないと言って いたら、今までの農水省の政策自身が自己否定することを告白しちゃうことになりはしないかと思うんですが、大臣、最後に御答弁ください。
○森山国務大臣
今まで進めてまいりました政策の否定になるかという話でありますが、現実に放棄地がふえてきているという現実があります。ここは我々も、しっかりと今までの政策というものを検証してみる必要はあるのだろうと思っております。
今回お願いをしておりますのは、まさに試験的に行うということでございまして、この結果をしっかり見て、五年間の限定でやってみるということでございます。
私、今ここで委員の御質疑を聞きながら思い出しますのは、先日熊本に参りまして、ベビーリーフの生産を大々的にやっておられまして、大体六百カ所ぐら い、ハウスを全部リースで借りておられます。それで、そこの社長とお目にかかったときに、所有をされる気持ちはないんですかと伺いますと、いえ、我々、こ の仕事は、所有をしては農地の価格が高いから合いませんし、そんなに資金を固定化させては、ほかの方にむしろその資金は使った方がいいという話をされまし た。
ただ、なるほどと思いましたのは、農地を借りに行って、長期で貸してくれと言うと、まず断られるそうです。それで、一年間試しに貸してみていただけませ んかとお願いをすると、ちょっとそれでは集落ともよく話をしてみますのでと言って貸してくださるというのが農村の文化だというのがよくわかりましたと言っ て、その社長が話をしてくださいましたけれども、リースで十分だという認識の方、経営者の方々が多いんだなというのは実感としてわかります。
ただ、養父市さんがこれだけ御熱心にやっておられて、こういう方法もあるのではないかと言われますと、いろいろな条件をつけてやってみるというのは、あくまでも試験的にやってみるということだと思っておりますので、御理解をいただきたいと思います。
○畠山委員
時間ですので手短にしますけれども、先ほど来、該当企業には原状回復の責任もなくてもいい可能性もあるし、外資も含めて参入にも限定はありませんし、繰り返し、農地所有へのアリの一穴となりかねないということを指摘しまして、私の質問を終わります。

第190回国会 農林水産委員会 第4号   平成二十八年四月二十一日

○畠山委員
日本共産党の畠山和也です。
森山大臣とは、連日TPP特別委員会で顔を合わせていまして、毎日厳しい質問をお答えになって、森山大臣もお疲れかなと思っていたんですが、お元気そうなので、きょうも安心して厳しく質問をさせていただきたいと思っています。
きょうは朝から質問がありましたが、規制改革会議のワーキンググループが提言した指定生乳生産者団体制度の廃止問題について、まず初めに質問をさせていただきます。
森山農水大臣が、今月八日の閣議後の会見で、指定団体制度の大きな機能を大体三つぐらいにまとめてお話をされているんですけれども、まず、その三つの大きな機能について確認したいと思います。
○森山国務大臣
畠山委員にお答えを申し上げます。
指定団体制度が果たしている大きく三つの機能があると思いますけれども、一つは、地域の酪農家を代表して乳業メーカーとの対等な価格交渉ができるという ことが一つあると思います。また、効率的な集送乳を行うことによってコスト削減ができるということが一つあると思います。もう一つは、飲用牛乳向けと乳製 品向けの調整をすること等により、消費者の皆さんへ牛乳・乳製品の安定的な供給を図るといったところ、この三つが機能としては非常に重要であると申し上げ たところであります。
○畠山委員
一つに乳価交渉の面、二つに集送乳の面、そして三つ目に需給調整ということで確認をさせていただきます。
このような機能があるということについては、もちろん私も異論がありません。家族経営の多い日本の酪農経営ですから、価格交渉力を強めて、メーカーと交 渉できるようにしなければなりませんし、きょうも朝から北海道の議員が話されているように、遠隔地から早く引き受けていく、品質保持も図り、需給調整もす るということにおいては、団体が果たしている非常に重要な機能だというふうに私も思います。
そこで、規制改革会議のワーキンググループによる廃止の理由を見ると、バター不足云々というのはあるんですが、先ほどの大臣が閣議後会見をされた同じ今 月八日に、規制改革会議の岡議長が会見を行って、五十年間続く制度のもとで酪農家と乳牛が減少したことが見直しの理由だということも述べました。したがっ て、生産者に多様な選択肢を用意するとか、中小メーカーが価格交渉に参加できるようにするなどとしているわけです。
そこで、内閣府に今度は伺います。
仮に、選択肢をふやしたり、価格交渉に参加する機会をつくったにしても、でも、それは今ある指定団体制度を廃止するという理由にはならないんじゃないんでしょうか。今ある酪農家の、岡議長が言うような苦労というのは指定団体制度のせいだという認識なんでしょうか。
○刀禰政府参考人
お答えいたします。
近年、年率四から五%で酪農家の数が減少し、生乳の生産量も約二十年間にわたり低下傾向となっているなど、我が国酪農業は非常に厳しい状況にあると認識をしております。
このような状況を踏まえ、規制改革会議におきましては、酪農家の所得向上を図るとの観点から、消費者ニーズにきめ細かく的確に対応できるよう、より柔軟 な生産、流通システムとし、また、意欲ある酪農家が、量的な制約なく、みずからの経営判断で投資を実行できるようにしていくことが重要であるとの認識に 至ったところでございます。
このような認識のもとで、規制改革会議におきましては、今月八日に、委員からも御指摘がございました意見を取りまとめたわけでございますけれども、全て の生産者が生産数量、販売ルートをみずからの経営判断で選択できるよう、補給金交付を含めた制度面の制約、ハンディキャップをなくすとともに、イコール フッティングの確保を前提とした競争条件を整備するため、現行の指定生乳生産者団体制度については廃止をすることなどを提言したところでございます。
内閣府といたしましては、この意見を踏まえまして、今後の規制改革会議の答申や規制改革実施計画の閣議決定に向けまして、農水省を含めた関係府省との調整を図ってまいりたいと考えているところでございます。
○畠山委員
やはり、何度聞いてもそれはわかりませんね。
選択肢が広がればいいとか、だからといって、廃止する理由が今論理的に何もつながっていないんですよ。
問題の本質は、酪農家の生産基盤が安定しているかどうかではないかと思います。
酪農家の減少の要因は、私たちからすれば、乳製品の輸入拡大とか、生産者価格の抑制とか、飼料価格の上昇とか、規模拡大によって負債も多くなっているなどがあるというふうに思っています。
この点については農水省としての反論もあるかもしれませんが、しかし、問題の本質は団体制度の廃止ではないことを現場の酪農家は肌でわかっているはずです。全く机上の空論だということを言っておきたい。
酪農家の合意もなく、根本的な問題にメスも入れないで、重要な役割を果たしている指定団体制度を廃止するということは乱暴だ。
そこで、農水省にも改めて伺います。
これは、国や指定団体としても、より積極的な役割が求められている状況下にあるという私は認識があるんです。
ほかの国を見てみますと、例えば、アメリカなんかは地域別のメーカーの最低支払い義務の飲用乳価を毎月公定しているといいます。また、カナダでは同じく国の乳製品管理制度があって、これはTPPのときにも交渉では主張されたというのも報じられて、見ています。
そこで、農水省としても、中小乳業メーカーや小売との協力促進とか、加工原料乳補給金制度の充実、これは一貫して我が党も主張してきましたけれども、ま た、多様な経営体も生まれている現実を踏まえて、指定団体制度としての自主的な改革ですとか、そういうことなどは必要性があるのかないのか、ここは農水省 としての考えを伺っておきます。
○森山国務大臣
お答え申し上げます。
指定団体におきまして、酪農家の所得向上に向けて、乳価交渉力の強化、中間コストの削減、流通コストの削減等を計画的に進めていくことは大変必要なことだと考えております。
このために、農林水産省におきましては、昨年七月に生乳取引のあり方等検討会を設置させていただきまして、今後の生乳取引に反映すべき事項を取りまとめ たところでございます。これに基づきまして、本日二十一日から乳製品向けの試行的な入札が開始されているところでもあります。
また、多層にわたっている組織体制の簡素化やさらなる情報開示の推進など、指定団体の合理化や生乳流通の効率化を計画的に進めるように指定団体等に対する指導も行ってきており、また、団体でも御検討いただいているところでございます。
今後も引き続き、消費者ニーズに的確に応えつつ、酪農家の所得向上につながるように、経費削減や集送乳の効率化によるさらなる合理化などに向けた見直し を行い、我が国酪農が長期的に発展をして、酪農家が安心して経営を継続できるように対応していくことが大事なことではないかというふうに考えております。
○畠山委員
今回のワーキンググループが出した提言において、朝からありましたように、現場では大変な混乱あるいは不安などの声が広がって います。根本的なところをやはり改めて捉えなければいけないと思いますし、繰り返しになりますが、酪農家の合意もなく、重要な役割を果たしているこの制度 を廃止するということは乱暴であって認められないということをつけ加えておきたい、強調したいと思います。
次に、TPP特別委員会は開かれているんですが、論点がたくさんあり過ぎる問題でもありますので、改めて本委員会でも若干質問をしておきたいと思います。
きょうは、政府試算の中でも生産額の減少が大きい牛肉について伺います。
牛肉の関税撤廃率は、今、この間、ラインのことは、いろいろ数が動いているということでありますので、きょうは数については問いませんが、とりあえず私 の数え方でいくと、五十一ライン中三十七ラインで関税撤廃がされていると思っています。これは七二・五%ぐらいになります。
詳しい内訳で見れば、牛タンとか牛臓器、あるいは牛くず肉、調製品などがほぼ全部撤廃され、残ったのは牛肉、頬肉という、通称本体というふうにとりあえず言いますけれども、そこの部分だけというふうに思います。
この本体以外、関税撤廃になった理由をまずお答えください。
○今城政府参考人
お答えいたします。
牛肉につきましては、いわゆる本体以外、調製品、内臓等の三十九ライン、これが段階的に関税撤廃ということになっております。
これにつきましては、基本的に、ミートボール等の調製品、これは二十八ラインございますけれども、輸入量が、牛肉全体が五十二万トンに対しまして、七千トンということでわずかでございます。
また、タン、ハラミ等の内臓、これは七ラインございますけれども、輸入品と国産品に鮮度の差があります上、タンについては全体の需要量の国産が約三%、 それからハラミにつきましては全体の需要量に対しまして国産が約一割ということで、国産のシェアが少ないということでございまして、したがって、国内供給 量だけでは需要に対応できていないということでございますので、国産牛肉への影響がそう見込まれないということ。
そのほかに、また、生きた牛というのが四ラインございますけれども、これにつきましては、国内の肉用種の出生頭数、これは年間約五十万頭ですが、輸入されているのは一万頭ぐらいということでございます。
そういうことから、関税撤廃による影響はそう大きくないというふうに判断した、そういうことでございます。
○畠山委員
この間、委員会でも、この撤廃する選んだ基準というのが大体三つぐらいあるんですよね。輸入実績が少ないこととか、輸入依存度 が高くて国産から置きかわりにくいとか、あるいは関税を撤廃した方が農家のメリットになるということも、この間、答弁ではありました。ですから、今、いろ いろな数字なども含めて出されたのはその範疇に入っているものだというふうに思うんですね。
その結果、牛肉は、重要五品目の中で、ほかと比べたら突出して高い関税撤廃率になっていると思うんです。ラインの数え方は、先ほど言ったように、前提は ありますけれども、私の数え方によれば、米二五・九%、麦二三・九%、豚肉六七・三%、乳製品一六・五%、甘味資源作物二四・四%に対して、牛肉でいえば 七割以上の関税撤廃率になるだろうというふうに思います。
牛肉だけがこのような差がついた理由は、今言ったように、多くが、輸入実績が少ない等によるものなんでしょうか。
○森山国務大臣
今委員の御指摘のとおり、牛肉につきましては、タリフライン数が五十三でございますが、撤廃したライン数が三十九でございますので、委員の御指摘のとおりでございます。
これは、牛肉を含む重要五品目のうち関税撤廃したものについては、先ほども局長が御答弁を申し上げましたが、調製品等の貿易の実態等を踏まえまして、一 つ一つのタリフラインを精査して、全体として影響が出ないものを措置したという結果がこういうことになっていると御理解をいただきたいと思います。
○畠山委員
全体として影響の出ないものを積み上げたらこういう数字になったというふうに理解をします。
牛肉の分野は全体として影響が少ないということではあるんですけれども、そもそも、オレンジも含めた自由化の流れの中で大変苦しまれてきた実態は一方にあるわけでした。
牛肉関税を改めて振り返って調べてみたんですけれども、さかのぼれば七五%のときもありました。その後、ウルグアイ・ラウンドで五〇%、三八・五%。そ して今回、TPPで最大というのか、九%ということになるわけです。それ以外にも、BSEですとか口蹄疫とか、さまざまな震災などで御苦労をされて、先日 も伺ってきたんですが、そのときそのときで、今頑張ればよくなるという思いや希望を持ってやってきたけれども、今回のTPPはなかなか希望を見出せないと いう声を伺いました。そこで、今回、七二%ぐらいが関税撤廃をされ、残りの本体も九%まで下がることになれば、また同じような苦しみが繰り返されるのかと 農家が思うのも当然だと思います。
そこで、伺いたいことがあります。
こういう話をしたら、畠山さん、ところで、何で九%なんだと聞かれたんですね。切りのいい一〇だとか、末広がりの八だとかいう数字じゃなくて、何で九な んだろうと。いや、秘密交渉というんですから、交渉の中で何か決まったんじゃないんですかねということぐらいは話したんですけれども、でも、現場の農家か らすれば、一つ一つやはりこういう素朴な疑問があるんですよね。
私たちもそうですけれども、生産額が何億円減少するとか、大きな数字で議論をしがちなんですけれども、やはりお一人お一人、農家からすれば、こういう、 何でなんだろうという素朴な疑問があるし、政府からすれば、説明責任はこういう農家に向けて行うということが大事だと思います。
そこで、何で九%なんでしょうか。
○森山国務大臣
牛肉につきましては、輸入牛肉の大半を占めるTPP諸国との厳しい交渉の結果でございまして、最終税率を九%とさせていただき、十六年という長期の関税削減期間を確保したところでございます。
どういう交渉の経過であったかということにつきましては、外交交渉という性格上、御理解をいただきたいと思っております。
畠山委員、ちょっと私は今非常に心配をしておりますのは、アジアにおける牛肉の需要というのが非常に伸びるという予測になっておりまして、今、アジアに おける牛肉の需要というのは二百十四万トンぐらいだと言われております。十年前に比べますと、これは一五八%伸びておりますから、これも十年前からすると 大変な伸びなんですけれども、今後十年間でどれぐらい伸びるかといいますと、アジアにおいて三百三十四万トンぐらいになるんだろうと言われております。今 よりもまだ五六%ぐらい伸びるということなものですから、ここは本当に国内生産をしっかりやっておかないとえらいことになるなと思っております。
先生御承知のとおり、中国がアメリカにあるパッカーを買ったりニュージーランドにあるパッカーを買ったりしておりますので、それぞれの国は長期の見通し に立ったいろいろな対応をしております。我々も、やはり国内対策をしっかりやらせていただいて、再生産を確保していくということが非常に大事なことだなと いうふうに考えております。
○畠山委員
国内対策は、TPPの有無はともかくとして、しなければいけないということはもちろんだと思います。ただ、私が聞きました、なぜ九%かということについては、やはり結論は、交渉過程におけることなので答えられないので御理解いただきたいという旨だったと思うんですね。
それで、いろいろ考えたんですよ。いろいろな本を読んだりしましたけれども、よくわからないんですが、そのヒントは政府の影響試算にあったのかなとちょっと先日思ったんです。
確認します。試算は関税率一〇%以上の品目や十億円を線引きとしてしているわけですよね。関税率一〇%と、一〇で線を引いた理由はなぜなんですか。
○佐藤(速)政府参考人
お答え申し上げます。
今回の農林水産物の試算につきましては、農林水産物全体への影響度合いを考慮しながら、前回、三年前でございますが、平成二十五年三月の試算とも比較で きるようにするために、前回と同様に、関税率一〇%以上かつ国内生産額十億円以上ということで、三十三品目を試算対象といたしました。
関税率が一〇%よりも低い農産物につきましては、為替の影響も大きい、また、この影響試算に先立ちまして昨年十一月に行いました定性的な影響分析におき ましても、関税撤廃の影響は限定的あるいは見込みがたいというふうに分析をしておりますことから、関税率一〇%ということで対象品目を画するというふうに いたしたところでございます。
○畠山委員
つまり、一〇%で線を引いて、それより低いというのは大体為替の影響の範囲だ、したがって影響も限定的で見込みがたいというのが今の答弁でした。
確かに、一桁台の関税率が撤廃されたときには、為替の影響で余り今と変わらないみたいな答弁は、この間、さまざまな品目においてされてきました。つま り、一桁台、九%というのはあってなきがごとしと言ったらちょっと言い過ぎでしょうか、ほぼ関税撤廃に匹敵するものという理解になるのかと思ったんですよ ね。
つまり、関税撤廃というTPPの大原則と、日本政府としては交渉によってかち取ったよという名目とを、ちょうど九%で折り合ったというふうに考えたんです。邪推だというなら邪推でも結構なんですが、一体、この九%という数字の真実は、そういうことなんですか。
○森山国務大臣
そういうことではないと思います。
農林水産省の影響試算の対象を関税が一〇%以上のものとしているのは、あくまでも現状の関税率のことであって、関税削減の期間等の要素を考慮する必要があると考えております。
牛肉の関税につきましては、実際に関税が九%になるのは十六年目であり、長期にわたって体質強化を図ることが可能であるというふうに考えております。加 えて、生産者の不安に寄り添い、確実に再生産が可能となるように、牛マルキン制度の充実と法制化を図ることとしておりますし、またさらに、TPP交渉の結 果、アメリカ等への輸出の機会が拡大をするということもあるわけでございますから、将来にわたって生産者が未来に希望を持って生産を継続するということが 可能になるというふうに考えているところでございます。
○畠山委員
本来でしたら、これはTPP特別委員会で石原大臣も交えて質問したいところなんですけれども、先ほど言ったように、論点がたく さんあり過ぎて、またの機会には、ちょっとこの問題も含めて、交渉経過はこの間さまざまな議論もされてきましたので、追及したいというふうには思っていま す。
ただ、途中で述べましたように、多くの農家の心配に対して、中身はいろいろ不安はありますけれども、素朴に、一体この数字は何で生まれてきた数字なの か。政府は、その後、経営安定対策や体質強化策をやるから大丈夫と言われても、それは農家としても不安は払拭されないですよね。特別委員会で私も紹介しま したが、この間、不安が払拭されていないと、アンケートの調査は、含めれば九割以上という現実があることを、改めて政府として受けとめるべきであることを 強調しておきたいと思います。
最後に、セーフガードについても一言伺います。
関税は下がるけれどもセーフガードはかち取ったということがこの間の話です。セーフガードは、簡単に言えば、基準を超えて急激に輸入量がふえたときに関税を戻す仕組みであります。
まず、これは事務方で結構ですが、今回の牛肉セーフガードの発動基準についてお答えください。
○今城政府参考人
お答えいたします。
現行の牛肉関税緊急措置、これは、発動水準が、前年比、数量で一七%増と現行の制度はなっておりますが、一方、今回TPPにより合意された牛肉セーフ ガードの発動基準数量、これはあらかじめ数量が合意で決まっておりまして、発効一年目は、近年の輸入量の約一割増に相当する五十九万トンという数量を超え たときに発動する。
二年目から十年目までは毎年二%、これは年で、数量でいいますと一万一千八百トンずつこの枠が増加いたしまして、十年目には六十九万六千トン。
それから、十一年目から十五年目までは毎年一%ずつ、これは毎年に直しますと五千九百トンですけれども、増加しまして、十五年目に七十二万六千トン。
十六年目、七十三万八千トンになりますけれども、それ以降は毎年二%、一万一千八百トンずつ増加していく、かような仕組みになっております。
○畠山委員
ひとまず、十六年目までで七十三・八万トンということは確認しておきます。
それで、現在の牛肉の輸入数量及び国内生産というんですか、自給率ということになるでしょうが、その数字もあわせて答弁してください。
○今城政府参考人
お答えいたします。
まず輸入量でございます。これは部分肉ベースでございますが、過去、BSEの前の二〇〇〇年度の七十三万八千トンというのが過去最大でございますけれど も、その後、BSEの影響により減りましたという事実がございます。近年では、二〇一三年度は五十三万六千トン、二〇一四年度は、米国、豪州等の主な輸入 先国の干ばつ等の影響により一時的に減少したため、五十一万七千トンという数字でございます。
生産量、これも部分肉ベースでございます。国内生産量でございますけれども、二〇一四年度は三十五万二千トンとなっておりまして、大体、近年はおおむね三十五万トン前後で横ばいで推移しております。
自給率は、二〇一四年度は四二%、これは重量ベース。カロリーベース、これは餌をカウントしますので一二%というふうになっておりまして、近年、それぞれおおむね四〇%強、それから一〇%強で推移しているという状況でございます。
○畠山委員
重量ベースで四一、二%ぐらいということで、輸入量と合わせると、つまり、国内で消費される需要でいえば八十七万トンぐらいということになろうかと思います。
それで、今後なんですけれども、これは、日本が人口減少になると総理みずから述べているわけですから、仮に牛肉の需要、消費が変わらないとして、十六年 目発動基準の七十三・八万トンまで仮に輸入が進んだとすれば、国内消費を今の消費の段階が変わらないとすれば、八五%を輸入で占める規模だということに計 算上はなります。つまり、裏を返せば、自給率はそのときはもう一五%ということに計算上はなります。
ということは、もうこの時点では既に畜産農家が経営ができない状況が広がっているという中でセーフガードが発動されるということになるのではないでしょうか。こんな条件のもとでセーフガードを発動することに一体何の意味があるのかと素朴に思います。
そういうことにならないんでしょうか。発動したときにはもう遅いということになりはしませんか、大臣。
○森山国務大臣
お答え申し上げます。
関税撤廃が原則というTPP交渉の中で、特に農業分野につきましては、国会決議を後ろ盾に粘り強く交渉をさせていただいて、その結果、牛肉については、十六年目に九%という関税撤廃の例外をしっかりと確保したところであります。
また、先ほど申し上げましたとおり、アジアにおける牛肉の需要が急激に伸びてきております。他の牛肉輸入国との買い付け競争が激しくなる可能性を踏まえますと、当面、牛肉の輸入急増というのは見込みがたいというふうに考えております。
このような中で、万が一の輸入急増に備えるために、今回のTPP交渉におきましては、これまで米国が主要国とのEPAで関税撤廃をする場合にしか認めてこなかった品目別のセーフガード措置を牛肉については獲得できたということでございます。
これにつきまして申し上げますと、先ほども御答弁したかと思いますが、初年度の発動水準が五十九万トンと、近年の輸入量の約一割増となっております。また、前年比一七%の牛肉輸入増で発動する現行制度に比べて発動しやすくなっていると考えております。
また、関税削減の最終年度である十六年目まで、発動水準が過去最大輸入量の七十三・八万トン以下に抑えられておりますから、輸入急増を抑制する効果というのはあるのではないかと考えているところでございます。
○畠山委員
時間ですので終わりますが、今、畜産クラスターも含めてさまざまな支援策をやっていますけれども、投資が過大になれば、十年、 二十年単位で返済するということの見通しから、農家は考えるんですよね。そのときに、実際、今、十六年目の話ですけれども、セーフガードを発動されるとき には、そうはいっても自給率一五%の状況だとなれば、不安が強まるのは私は当然だと思います。
申しわけありませんが、今の答弁でも不安は払拭されていないということを強調して、私の質問を終わります。

第190回国会 環太平洋パートナーシップ協定等に関する特別委員会 第7号  平成二十八年四月十九日

○畠山委員
日本共産党の畠山和也です。
昨日も述べましたが、熊本県を中心とした九州地方での地震にて多くの被害が出ております。改めて、私からも、心からのお見舞いと、また、亡くなられた方や御家族に対してお悔やみを申し上げたいと思います。
きょうの委員会では、先ほどからありましたように、重要な答弁がありました。重要五項目のタリフラインで、いわゆる無傷と言えるものはないということでした。
きのう、私はこの場で、国会決議との整合性について、これまで、米など重要五品目が除外または再協議の対象となり、決議にも書いているにもかかわらず、 TPPにはその区分さえなく、政府は最初から守る気があって交渉したのか疑問だとただしました。それで、きのうは、どういう交渉をしたのか、初めからわ かっていたことなのか途中からわかったことなのかは具体的な答弁はありませんでしたが、しかし、政府が結果を見てくれと言ってきたその結果を見ても、きょ うの委員会では、重要五品目で無傷なものはなかったということでした。この点は、私からも改めて確認をしておきたいと思います。
それで、きょうは、国会決議との関係で、繰り返し石原大臣も例外をかち取ったという答弁をされていた、例外の問題について少しただしたいと思います。
まず、事実の確認をしたいと思いますが、その例外の中身というのは、先ほどからありますが、協定文書の書かれているところは、第二章四条二項、別段の定めがある場合を除くというところでよろしいですね。
○石原国務大臣
委員の御指摘のとおりだと思います。
○畠山委員
それで、その例外を確保したということでありますが、協定文書の農業分野にかかわる規定には、その例外さえも見直す仕掛けが幾つもあるのではないかということを、私、きょうは聞きたい。
お手元の資料とともに、本当はきのう使うつもりでいたパネルで、せっかくつくったものですから、きょうはこちらにも持ってきましたが、こちらの資料をごらんになってください。
例えば、第二章十八条には、物品の貿易に関する小委員会が設置されると書かれています。その任務は、締約国間の物品の貿易を促進することで、しかも、括弧書きでわざわざ、関税の撤廃時期の繰り上げというものが入っています。
二つ目に、農業貿易に関する小委員会も、第二十五条によって設置をされます。その任務も、農産品の貿易の促進ということが明確に書かれています。
この二つとも、効力発生の後最初の五年間、少なくとも年一回会合するということもきちんと書かれています。
そして三つ目に、第二章附属書二―Dにある、いわゆる七年後の再協議規定です。これは、日本と、オーストラリア、カナダ、チリ、ニュージーランド、そして米国の要請に応じて行うものと規定がされています。
確認しますが、これら三つの、委員会や再協議規定において、先ほど大臣も認められた別段の定め、いわゆる例外は、協議の対象となりますね。
○石原国務大臣
委員の御指摘のとおりだと思います。
○畠山委員
協議の対象であるということを確認します。
それで、その例外がきちんと例外として確保されていくのかということが次に問われなければなりません。この仕組みそのものを、きちんと中身を見なければいけないと思っています。
政府は、この間の答弁で、このような見直しや再協議の規定というものはどの条約にもある一般的なものと答弁をしてきました。しかし、例えば二つ目にある農業貿易に関する小委員会というのは、これまで日本が結んだFTAやEPAにはありません。TPPしかないはずです。
通告していませんが、その点、一回確認します。事務方でも結構ですが、ほかにはありませんよね。
○澁谷政府参考人
TPPは、物品貿易の章に、農業貿易というサブセクションがございますので、小委員会を設けることといたしましたが、他のEPAにおいては、物品貿易に関する小委員会が同じ内容を扱う、そういう理解をしております。
○畠山委員
ないんです。
七年後の再協議についても、日本以外に五カ国の名前が出てきますが、日本以外の国同士、例えばオーストラリアと米国とか、ニュージーランドと米国などの 再協議がされるということは、私、英文の条文を見ましたけれども、ありません。つまり、五カ国と日本だけとの再協議規定ということになります。
つまり、二番目の小委員会についても、あるいは三番目の七年後の再協議についても、一般的と政府は言うけれども、そう言えるのか。関税の撤廃時期を早め ることが、あるいは農業の物品貿易を促進することが書かれているこれらの小委員会が定められ、つまり、さらなる関税撤廃を求めるためのこれらの規定ではな いのか、一般的なものと違うんじゃないかというふうに私は思うのです。それが違うと言うんだったら、これらは何のための委員会や再協議規定なのかというこ とを問いたい。
一体これらは何のためのものですか。
○石原国務大臣
畠山委員から三点の御指摘がございましたので、三点ごとにお話をさせていただければと思います。
まず一点目、物品の貿易に関する小委員会。これは、物品貿易の章のところで規定されている事項について検討することを目的として設立されております。大体、過去のEPAにおきましてはこういうものが設けられているということは政府委員から御答弁をさせていただきました。
二番目、農業貿易に関する小委員会。これは、第二章二十五条で規定されております、農業に関する規定の実施及び運用について監視したり協力を促進したりすることを目的としてつくられております。
先ほどもう既に御答弁をさせていただいておりますように、関税撤廃の例外となる措置について、両小委員会における検討の対象となり得ます。これはもう既に御答弁をさせていただいたわけでございます。
しかし、これらの小委員会の意思の決定は、議題設定も含めて、いずれの国からも反対がないことが条件になっております。我が国の意向に反する決定がなされることは結果としてない、しかし議論をすることはあるというふうに解しております。
そして三番目、七年後の再協議。附属書二―D、日本国の関税率表、委員が御指摘されたところでございますが、これも委員の御指摘のとおり、日本と豪州、 日本とカナダ、日本とチリ、日本とニュージーランド、日本と米国の五カ国、協定発効から七年がたった後に相手国からの要請に基づいて協議を行うことに合意 した国、今の五カ国でございます、との間で再協議の規定を相互に設けさせていただいております。
その再協議に当たっては、これもまた先ほどの二つの小委員会と同じでございますけれども、関税撤廃の例外となる措置についても対象となり得ると認識をしております。
しかし、TPPの交渉は、これまでもお話をさせていただいておりますとおり、関税だけではなくて多くの分野について、この五カ国につきましても同時並行で交渉を行いまして、全体の分野で各国が合意できるぎりぎりのところで合意に至ったものでございます。
したがいまして、三番目に御指摘をされております再協議にしても、そのバランスが崩れるような形で合意を得るということはありませんし、また、日本国も国益を害するものについては合意する考えは全く持っておりません。
○畠山委員
私が一般的な聞き方をしたのでそうなったので、少しわかりやすく言えば、つまり、七年目の再協議規定に限って言えば、相手の国 からは、日本が例外としたものをテーブルとするということが要求されるのは間違いないのではないかということを問いたいわけです。この点、どうですか。
○石原国務大臣
委員の御指摘のとおりだと思いますが、裏から読みますと、七年間はこの話はないというふうに御理解をいただきたいと思います。
○畠山委員
そこで、七年までの間にこの小委員会が、先ほども述べたように、年一回の会合を行っていくということですから、これは、先ほど 大臣から答弁があったように、ここも協議の対象にもなり得るわけです。ただ、そこで政府は国益に反する合意はしないなどということを、この間、いわば言葉 の担保として言ってきました。
しかし、結局、では何でそういう規定をここに置いたのかということの根本的な疑問が私は残るんですよ。ほかの国、十一カ国全部に幅を広げれば、農産物の関税撤廃率は九八・五%となります。日本風に言えば、守っているものはほとんどないということとなります。
そして、これは私は、前の農林水産委員会のときだったか、同じく、七年目の再協議規定がなぜ置かれたのかという問いをしたことに対して、高鳥副大臣から、相互主義に基づくものであるのだという御答弁がありました。
攻めと守りをお互いに再協議するということであるならば、例えば豪州を例にとったときに、農産物も、あるいは全品目に広げても、豪州については関税撤廃 はほぼ一〇〇%なんですね。であれば、日本からは何を要求するのか。結局、豪州から要求されるというだけの規定になるわけですよ。
そこで、日本から要求する品目がないのに、では何でこれが置かれたのかということになるわけです。
このような規定が置かれた理由というのは、石原大臣が繰り返し何度も言ってきたように、TPPは、そもそも原則は関税の撤廃です。そして、きのう来議論 になっているように、除外や再協議の区分がないので、例外というものを政府がかち取ろうとした。そのセットで、そのかわり、こういうふうに協議の規定をつ くりましょうということが考えられるんですが、違うんですか。
ここの協議の規定が置かれた交渉過程、それはなぜですか。
○石原国務大臣
ここも大変苦しい答弁なんですが、セットで結果として出てきたということは、私も委員の御指摘のとおりだと思います。
しかし、先ほども政府委員の方から御答弁させていただきましたとおり、大体のEPA交渉には物品貿易に関する小委員会というものがあります。もちろん物 品の中に農産物も入りますから、そこで議論をされる。しかし、今回は、こういう形に、セットで出てきているというふうに御理解をいただきたいと思います。 (発言する者あり)
○畠山委員
委員長、済みません、一回、定足数を確認していただけますか。
○西川委員長
大丈夫だな。
○畠山委員
大丈夫ですか。
今、石原大臣から、結局、原則関税撤廃ということと、したがって例外はかち取られたが、一緒に、再協議についてはセットであるということも委員の考えるとおりだということが言われました。私は、これは大事な答弁ではないかというふうに思います。
つまり、七年目の再協議というのは、裏を返せば、原則関税撤廃、だからこれを置かざるを得なかった、だから協議の対象として全品目入ることになっている、そういう理解でいいんですね。
○石原国務大臣
私は、セットという意味は、結果としてこれがセットになっているという意味でございまして、というのは、どこどこでどうい う交渉、相手国がどういうことを言ったからこの何々ができたということについては、経緯でございますので、この場でお話をすることができない、制約がある ということはぜひ御理解をいただきたいと思います。
例えば、一番上でございますか、御指摘をされております物品貿易小委員会、これは他のEPAにもあるということは先ほども政府委員から御答弁をさせてい ただきましたけれども、締約国間の物品の貿易を促進すること、貿易促進のためにこの小委員会というものが設けられている。
その中で特にどんなことを議論するかと申しますと、非関税措置の適用に関する障壁について対処し、適当な場合には、これらの事項を検討のために委員会に 付託することができると。どちらかと申しますと、非関税措置の適用に関する障壁についての対処ということがこの委員会の主なる任務となっております。
また、二番目の農業貿易に関する小委員会についてでございますけれども、この規定は、締約国間の農産品の貿易及び適当な場合にはその他の事項を促進する こと、そして、この規定の実施、運用、規定する食料の輸出の制限の通報を含むについて監視し、及び協力を促進することと。スムーズにいっているかいってい ないかということを監視するということが重立ったる任務である。
そういう形でこの二つの小委員会ができていると御理解をいただきたいと思います。
○畠山委員
これは、きちんと仕組みの問題で改めて議論したいと思うんですよ。
小委員会は、もちろん、この章だけでなく、さまざまなところに置かれています。この小委員会、どういう人が委員となるかということもまた問題です。そして、これを全体としてつかさどるTPP委員会がまたあります。
これらの仕組みによって、先ほどから言っているように、ほかの国々は原則もう関税が撤廃されている状況のもとで、日本に要求されることは、例外として政府が言ってきたことを対象として協議されるということは想像にかたくありません。
ですから、この点、改めてまた議論したいと思いますけれども、その点で、政府が例外と呼ぶものも守られ続ける保証があるのかという疑問を強く述べておきたいと思います。
時間がきょうは少ないですので、政府の影響試算と米について、一言、二言だけお聞きしておきたいと思います。
TPP発効後に、米については初年度に、米国に五万実トン、豪州に〇・六万実トンの輸入枠を設けています。徐々にふえて、十三年目以降は、今でさえミニ マムアクセス米として七十七万トンを輸入しているわけですが、それに加えて、米国から七万実トン、豪州から〇・八四万実トンを輸入ということになります。 そして、政府は、その分の国産米を備蓄米として買い入れるから、価格への影響も生産額の減少もない、ゼロだという試算をしています。
これに対しては、本当に影響がゼロだと言い切れるのかという強い心配の声が上がっています。これは、政府の試算を農家だけでなく自治体もまた信用していない状況があるんですね。大臣御存じだと思いますが、さまざまな県が試算を行っています。
今回輸入するものについてはSBS枠として、これは主に中食、外食など業務用に使われているお米ということは、前回どこかの答弁で大臣も答弁されていました。
その業務用米の生産が多い青森県の試算では、米生産額は二十三億円減ると試算しています。福井県でも、同じく、業務用米の価格低下に引っ張られて、米生 産額が十五億二千万円減ると試算しています。熊本県でも、同様に、十三億六千万円の米生産額減少です。この三県だけでも五十一億八千万円も減少すると試算 しているんですね。これは、政府試算の生産額の減少ゼロとは大きな違いです。
県の試算が間違っているというんだったら間違っているとはっきり言わなければいけないし、ゼロだというのであるならばその根拠を明確に説明しないと、これはいつまでも心配は解けません。
一体、この違いは何から生まれるんでしょうか。
○森山国務大臣
畠山委員にお答えをいたします。
冒頭の御発言で誤解があるといけませんので少し御説明申し上げておきますが、私が玉木委員に御答弁をいたしましたのは、我が国の譲許表では、WTOの水 準に従うもの、すなわちTPPでは変更を加えなかったものを単純に数え上げれば、重要五品目五百九十四ラインのうち百五十五ラインであるということでござ いますので、そこは先ほど答弁を申し上げたとおりでございますが、御理解をいただいておきたいと思います。
まず、三十六の道県が行った試算においては、米につきましては、大半の道県で、二十九の道県でございますが、政府の試算と同様の影響額はゼロという結果 になっておりますけれども、一部の県においては、特定の銘柄の米の価格とSBS輸入米との価格を比較し、その価格差分、当該県産の米の価格が下がるという 仮定によって影響額を試算しておられると思われる県が七県ございます。今先生が御指摘になった県でございます。
これまでSBSで輸入される米の価格は、輸入米に比べて圧倒的に多く流通しております国産米、約八百万トンでございますけれども、この価格水準を見据え て形成をされ、主に業務用に用いられる国産米とほぼ同等の水準で流通をしております。今までのSBSの結果がということでございます。
政府としては、新たに国別枠が設けられた場合でも、その数量規模が数万トンと、これまでの状況と基本的に変わらないと考えておりまして、この前提で影響試算を行っているところでございます。
いずれにいたしましても、政府としては、政策大綱に基づきまして、国別枠の輸入量に相当する国産米を備蓄米として買い入れ、国別枠の輸入量の増加が国産 の主食用米の需給及び価格に与える影響を遮断することによって、確実に再生産が可能となるようにするということを大綱で決めさせていただいております。
合意内容、国の試算の考え方、対策の内容やその効果についても、今後とも、各地域に対しまして丁寧に説明をいたしまして、農業者の皆さんの不安と懸念の解消に努めてまいりたいと考えております。
○畠山委員
先ほどの玉木委員の発言のことについて言われましたが、議事録できちんと精査したいと思いますけれども、先ほど来の答弁で確認されたことを私も改めて確認したいというふうに思います。
それで、今答弁ありましたけれども、私が県名を挙げた三つの県ともに、政府の対策を前提とした試算を行っているわけです。一体何が違うのかということ は、現場ではかなり、わからない、不安だということがどんどん出てきているわけですよ。そうでなくても米の価格が、さまざまな要因はあったかもしれません が、ミニマムアクセス米など輸入がどんどん広がり、それにあおられる形で価格が下がってきたということを体験的に多くの農家が知っている中で、政府の試算 がどうして信用できるかということになるのは、私は当然の思いだと思うんですね。
それで、日本農業新聞のモニター調査でも、政府の試算は影響を少なく見過ぎていると答えた方が七六・七%もいる。全然納得していないんですよ。
私は、もう一回きちんと試算をやり直す必要があると。この米の問題についても、これだけさまざまな県が、対策を、同じことをやると言っているのに違うんだから、きちんとやり直すべきだと思います。
最後、答弁してください。
○森山国務大臣
例えば、先生、青森の場合でございますが、先ほど委員御指摘のとおり、米への影響額というのは二十三億円というふうになっ ておりますけれども、考え方として、青森県の「まっしぐら」とか「つがるロマン」という価格がSBSの輸入米の価格まで低下するという仮定が置いてござい ます。低下する価格にそれぞれの銘柄の県産量を乗じての計算になっております。
青森県産の個別銘柄の価格、青森県の「まっしぐら」とか「つがるロマン」というのは、相対取引の価格ということを考えますと、そういうことにはならない のではないか、そう考えておりまして、それぞれの県の試算と我々の考え方についても精査をいたしておりますので、よく御説明を続けてまいりたいと考えてお ります。
○畠山委員
時間ですので、終わります。

第190回国会 環太平洋パートナーシップ協定等に関する特別委員会 第6号  平成二十八年四月十八日

○畠山委員
日本共産党の畠山和也です。
熊本県熊本地方を中心に襲った連続的な地震で多くの被害が出ている状況に胸が痛みます。心からのお見舞いを述べますとともに、哀悼の意を表したいと思います。
政府を挙げて震災対応に当たるときではないのでしょうか。理事会でも私は発言しましたけれども、TPPのこの特別委員会の場で片手間のように審議する問 題ではありません。災害対策特別委員会や予算委員会などを開いて、与野党挙げて被災者の苦難に応えた対策を話し合うべきではないのでしょうか。
TPPの質問の前に、私からも、震災に対する政府の対応について初めに伺います。
今もなお余震が続いております。長引く避難生活、不自由な生活、そして先の見えない状況など心身ともに苦しい状況に置かれている中で、被災者に対する医療の提供体制の確保が必要なのは間違いありません。
例えば、南阿蘇村はもともと医療過疎ともいうべき状況で、落橋した阿蘇大橋の山側にいる方は橋を渡って病院に行っていたというふうに聞きます。今後は迂 回して病院に行かなければならなくて、透析を受けるためには当面村外へ移ることも考えなければならないような事態になっています。
また、慢性疾患を抱えている被災者からは、一週間分の薬がなくなったらどうしたらいいのかと深刻な声も聞かれます。南阿蘇村は、主要な交通路が断たれて、薬剤師などの緊急配置を含めた医療の提供体制が緊急に必要となっています。
そこで、先ほど笠井議員からも指摘がありましたが、総理は先日の非常災害対策本部会議で次のように述べています。食料や水の支援も倉庫に届くだけでは役 に立たない、被災者一人一人の手元に届かなければ全く意味はない。そのとおりだと私も思います。そして、この考えは、水や食料の支援にとどまらないで、医 療においても同様ではないのでしょうか。
そこで、一人一人の被災者に対する医療の提供について政府はどのような対策を講じようとしているか、まず答弁してください。
○安倍内閣総理大臣
詳細が必要であれば、厚労大臣から答弁をさせていただきたいと思います。
医療機関については、十カ所程度の病院で、建物の倒壊リスクやライフライン途絶などにより他病院への入院患者の搬送が必要となりましたが、既に大半の病 院で搬送を完了しております。また、災害拠点病院などにおいて被災した患者の受け入れを行っておりますが、全国から災害派遣医療チーム、DMATが続々と 派遣され、状況はかなり改善しているという報告を受けております。
避難者の心のケアにつきましては、保健師等が避難所等を巡回して支援に当たるとともに、専門的な心のケアについて、災害派遣精神医療チーム、DPATの派遣により支援を行っております。
引き続き、医療機関、自治体と協力をしつつ、被災者の医療の確保に万全を期してまいりたいと思いますし、また、今は病院等とこちらのDMAT、DPAT 等についてお話をさせていただきましたが、と同時に、やはり各避難所におかれて不安な生活を強いられている方々に対してきめ細かく対応していきたい、この ように思っております。
慢性疾患の方々にとっては、お薬が切れたら慢性疾患が重篤になるという危険性と直面をされるんだろうと思いますし、精神的に、私も慢性疾患を持っており ますから、常に毎日飲んでいなければいけない、それが切れたらどうしようという不安な気持ちに、あした一日分だけにならなくても不安になるということだろ うと思います。そうした対応もしっかりとやっていきたい、このように考えております。
○畠山委員
不安が尽きないわけですよね。余震も続いているし、今、交通路についてもさまざまな問題を抱えています。現場では、不眠不休の医療、看護体制で被災者を支えている状況もあります。全国的な支援も呼びかけて、万全の対策を講じるよう求めます。
そこで、厚生労働大臣に二、三確認したいことがあります。
被災者の中には、住宅が全壊、崩壊したですとか、避難所に避難し続けて保険証が手元にないという方も少なからずいます。保険証がなくても受診できるようにしているはずですが、被災者や関係自治体へ、テレビを通じてわかりやすく説明してください。
○塩崎国務大臣
今御指摘のように、保険証がなくてもこういった事態の際には医療機関に診ていただいて、通常どおりの、保険証を使っての医 療と同じようにできるということ、既に通知を私どもは出しているわけでありますが、それが現場にしっかりと伝わること、つまり、医療機関にももちろん伝わ り、一方で、一番大事なことは、やはり避難をされている方々がそれを理解していただくことだというふうに思っております。
既に新聞、テレビ等でも繰り返し報道していただいておりますけれども、これに加えて、私どもとしても、医療機関に毎日二回、集中的に、約六十ぐらいの病 院には、今回の被災を受けたところには電話をしております。既にもう、それを周知徹底するようにということを申し上げている。
とともに、これはやはり河野大臣と連携をして、それぞれ避難所におられる十万人を超える方々に伝わるように、避難所でそれが掲示をされるなりなんなりの 形で周知徹底が行われるということが大変大事なことだというふうに思っておりますので、しっかりと河野大臣と連携をしてこれを周知徹底して、保険証がなく ても通常どおり医療を受けられるということを徹底してまいりたいというふうに考えております。
○畠山委員
今、大臣から二つのことが答弁あったんですけれども、一つ一つ確認したいんですね。
まず、通知の問題です。
大事なことは、こういう際に通知を出すに当たって、関係自治体が判断に迷わないで、ちゅうちょなく判断できるようにすることが大事だと思います。
政府の側からすれば、集団的に検討もしてあれこれと通知を出すんだけれども、受ける自治体の側では、ただでさえ少ない職員で、混乱の中で判断しなければいけないという状況があります。わかりやすく端的にということを通知においても原則にするべきだと思います。
平たく言えば、財政なども心配しないで、国が後で対応するから救命救援を最優先にやってください、そういうようなことが通知でもきちんとわかっていけば、現場でも心置きなく対応できるのではないのでしょうか。
そこで、東日本大震災のときの通知や事務連絡を見ると、例えば東日本大震災のときは三月十一日に事務連絡が出ていまして、「氏名、生年月日、被用者保険 の被保険者にあっては事業所名、国民健康保険及び後期高齢者医療制度の被保険者にあっては住所を申し立てることにより、受診できる取扱いとする」というの を出されているんですね。その後にもQアンドAを政府が出して、対象地域は限定されているかなどの問いに、特段その対象地域は限定していないなどの回答を 出しているわけです。
しかし、今回は、先ほど大臣が出されたという通知が、平成二十五年、二〇一三年五月二十三日での事務通知を再周知しますとして、その中身を読むと、「被 保険者証等を紛失した場合等の取扱いについても、申請に応じ速やかに再交付を行うなど、適切に対応されたい」というふうに書いている調子なんですよ。申請 主義でもあるし、中身は、先ほど東日本大震災のときのものを読み上げましたが、詳しくもなっていない。
先ほど塩崎大臣が答弁されたように、わかりやすい通知を出してもらえませんか。
○塩崎国務大臣
今お話がございましたようなものは、日付だけ、かつてのものを引用するという、そのやり方のものは再交付の場合のことを指 しておりまして、今回は四月の十五日付で各都道府県に、ですから、熊本を中心として出しているものについては、先ほどお読み上げをいただいたような形のも のがそのまま行っております。
つまり、被用者保険の被保険者にあっては事業所名、国民健康保険、後期高齢者医療制度の云々という、お読み上げをいただきましたが、それを言っていただ いておりますので、いずれにしても、こういったことを言っていただければ、申し立てることによって受診できるという取り扱いだというふうになっておりま す。
そこは、改めて、県やそういった行政だけがわかることではなくて、一番大事なのは、患者の皆さん方、国民の皆様方、被災者の皆様方が理解をしていただい た上で医療機関に行っていただくということが大事で、保険証がないから行けないというふうに思われないで、どうぞ行っていただきたいということを私どもと して周知徹底をしていかなければならないというふうに考えております。
○畠山委員
もちろん、被災者本人が理解していただくということは大事なんですけれども、役所に聞いたりするわけですよ。そこで役所が、正 確に理解できて、ぱっと言えるという状況においては通知の意味は大事なわけであって、先ほど答弁ありましたが、保険証等がなくてもきちんと受けられるとい うことを改めて周知していただきたいと思うんですね。
それで、もう一つ、実際の被災者にわかりやすく明確に届かないといけないというふうに思います。
先ほど大臣が述べられたように、避難所へ掲示をするだとか、あるいは、人通りが多いところで目につく場所に張っておくだとか、あるいは、避難所に来られ ない方がいますので、広報車で言って回るだとか、例えばですよ、そうやって端的に知らせる活動もやる必要があると思います。避難所などで、先ほど、午前中 にも、電源車の配置の話がありましたよね。テレビが足りなかったり、情報が足りないので、そういうテレビやラジオで広報テロップみたいな形で暮らしの情報 を流すとか、いろいろやりようはあるわけですよ。
こういう手だてを、知恵を絞って、政府みずからが、被災者が本当に医療で困らないように、今やるべき瞬間だと思うんです。
こういうような被災者への周知について、今、私はさまざまな提案もしましたけれども、さらに具体的に検討して、早くやっていただけませんか。
○塩崎国務大臣
結論的に申し上げれば、やれることは何でもやっていかないといけないと思っております。
今、お話が少し出ましたけれども、災害支援のナースのチームが、特に被害がひどかった益城町の八カ所で現地に常駐をしています。それから、今、都道府県 から保健師のチームの皆さん方が入ってきて、被災地を回っていただいていますので、そういう形で、避難所にそういうことでまた徹底していただくというよう なことを含め、そしてまた、誰でも見られるようなテレビ等々のことについても、河野大臣とよく相談をして、一日も早く、一刻も早くこの情報が伝わるように してまいりたいというふうに思います。
○畠山委員
情報を出すことは当然大事なことです。繰り返しありましたように、問題は、一人一人に届くかどうかであります。
どんどん必要な情報を出すべきだと思いますし、被災者が困っていることに対して、迅速にそれを掌握して、それを伝え切るということを改めて求めたいというふうに思います。
救命救援活動にはあらゆる手だてが必要ですが、同時に、余震が今続発している状況で、先日、雨も降ったために地盤が緩んで、二次災害のおそれにも注意をしなければなりません。それは、民間の方の支援だけではなく、政府自身の対応においても必要なことだと思います。
まず、政府において、二次災害の危険性を現状はどのように認識しているでしょうか。
○河野国務大臣
大変強い地震が繰り返し起きておりますし、雨も降っておりますので、二次災害の危険性は極めて高いと思っております。
今、気象庁におきましては、震度五以上の地震が起きた熊本県内の場所では、大雨警報の発出基準を通常の七割あるいは八割の基準に下げて、早目早目に警報を出していくということになっております。
また、自治体におかれては、空振りを恐れず、必要だと思えば、避難勧告、避難指示を前広に出していただきたいというお願いをしております。
また、国土交通省が現地に専門の調査チームを派遣して、土砂災害の起きそうなところを点検し、情報を発出していただいております。
自衛隊、警察、消防においては、救命救急、救命救助の活動をする際に、合同調整所において土砂災害の危険性の高いところの情報をきちんと共有しながら作業を進めていただいております。
○畠山委員
作業を進める上で二次災害は注意しなければならないんですが、そこで確認したいことがあります。
支援物資輸送のために、昨日、十七日の朝八時半ぐらいでしょうかの時点で総理が会見したときに、米軍による支援の申し出がございますが、現在のところ、今直ちに米軍の支援が必要であるという状況ではないと述べています。
その後、昼の記者会見、十一時過ぎだったと思いますが、そのときには、米軍の支援につきましては、米国からの申し出を受けて、並行して調査を行ってきたとして、航空機による輸送支援が実施可能との連絡を受けて、実施したい旨を総理は述べています。
この米軍の支援を受けるという点で、まず、朝と昼の時点で言っていることが変わったんですけれども、これは何が変わったためなのでしょうか。
○安倍内閣総理大臣
昨日も申し上げたところでありますが、今般の地震へのこれまでの初動対応については、自衛隊、警察、消防などにより全力で対応してきたところでありまして、米軍からの支援についても同時に、米側からの申し出を受け、並行して調整を行ってきたわけであります。
ですから、午前中のお答えにつきましては、一番最初の発災以降、その直前までの間についての初動の段階においては、我々のいわば今申し上げました自衛隊 や警察や消防や、あるいは医療部隊等において対応しておりますということを申し上げたわけでありまして、今すぐに直ちに米軍に要請をしなければいけないと いう状況ではないということは申し上げておきました。
しかし、当然こうした輸送等の能力は高ければ高いほどいいわけでございまして、米軍からの申し出があり、実際のニーズと合うかどうかということも含めて 調整を行ってきたところでございますが、昨日、防衛大臣より、米国から航空機による輸送支援が実施可能であるとの連絡があったとの報告を受けまして、これ は大変ありがたい申し出であり、速やかに具体的な輸送ニーズを調整し、整い次第、実施に移すよう指示をしたところでございます。
○畠山委員
我が党は救命救援に必要な対策はとるべきだと考えるものですが、懸念されるのは、この物資の輸送にオスプレイを活用すると昨夜中谷防衛大臣が発言した点にあります。
というのも、昨年五月二十二日の外務委員会で、我が党の穀田恵二議員が、大規模災害が発生した場合の災害救援活動におけるオスプレイの活用について、一 昨年十月に和歌山県でオスプレイ二機が参加した防災訓練の際、串本町の望楼の芝では、オスプレイの離陸後、排気熱で芝が焼けて、消防団が消火活動に追われ たことを質問しています。
政府も、その事実を聞いていると答弁をして、防衛省からも、下降気流が出ますので、その直下では非常に強い風が起こるということもありまして、そうした 点においては救助の難しさがあったと答弁し、ネパール大地震の救援でオスプレイが民家の屋根を吹き飛ばしたことを承知しているとも答弁しています。
オスプレイが救援活動において有効に働くものなのかどうか、二次災害の危険性はないのか懸念をするわけです。政府としてどう考えていますか。
○安倍内閣総理大臣
ヘリコプターにしろ、オスプレイにしても、下降気流が出るのは事実でございまして、その直下では非常に強い風が起こる ということもありまして、そうした特性を把握して使用していくことは当然でありますが、この一点をもってオスプレイが災害救助に向かないとは考えていない わけであります。
この米軍の輸送機、オスプレイについては、ヘリコプターのような垂直に離着陸できる機能、通常の航空機の長所である速い速度や長い航続距離という両者の 利点を持ち合わせた航空機であり、従来米軍が使用していたヘリコプターに比べると、最大速度は約二倍であり、搭載量は約三倍になるわけでありまして、行動 半径は約四倍であり、高い能力を生かした支援を期待できると考えています。
なお、政府としては、オスプレイが災害救助にも有用であることについては、これまで累次にわたり国会でも説明しているところであります。
また、防衛省が作成したパンフレット、これは民主党政権時代につくったパンフレットでございますが、このパンフレットにおきましても、オスプレイの災害救助における役割について説明をしているところであります。
オスプレイによる輸送協力については、具体的にこれからさらに検討していきたいと考えております。
○畠山委員
いろいろと説明がありましたけれども、先ほど、防災訓練の際に起きた事実ということも政府は認識をしているわけですよね。重要なことは、被災者、被災地の支援を最優先に、これ以上被害を拡大しないことであることを強調しておきたいと思います。
農業被害についても一言伺います。
熊本県は生乳生産量で全国三位の県です。しかし、地震による牛舎、畜舎の倒壊で、牛が死んだり、負傷して廃用せざるを得ない牛もあると聞きます。また、 強いストレスや飲み水の不足で、生き残った牛も乳が十分に出ない状況もあります。無事だった農家でも、県酪連の牛乳工場の被災や、交通網が遮断されて生乳 を出荷できない地域もあると聞いています。
水を使えないということが酪農家においては非常に大変なことでして、大臣御存じだと思いますが、搾乳においても、パイプですとか機械を洗浄することができなくて、自家発電機で搾乳した後に廃棄しているということも伺いました。
そこで伺います。急いで現状を把握して、緊急対策はもちろんですけれども、その後の経営再開資金などの具体化も急いで検討して、農家を支え、励ますことを今政府が発することが大事だと思いますが、いかがですか。
○森山国務大臣
お答えいたします。
農林水産省といたしましては、被害の状況の正確な把握を行った上で、早期の復旧と被災農家の経営再開に向けて必要な対応を関係省庁と連携して進めてまいりたいと考えております。
○畠山委員
森山大臣、もう少しやはり政府としての決意を示していただきたいんですよ。
というのは、BSEとか口蹄疫が発生したときも、その後の再建には随分長い時間がかかりましたよね。当たり前の話だけれども、牛は一頭ずつしか出産でき ませんで、急速にふやすことなどできません。この間、口蹄疫や震災の影響などもあって子牛価格が高騰してきているというようなことが、また同じように起き かねないわけじゃないですか。
これまでの教訓を生かして迅速な対応を求めたいと思いますが、大臣、もう一言きっちりと、政府としての支援を検討する旨答弁してください。
○森山国務大臣
被災農家の皆さんの不安に寄り添って、しっかりとした対応をさせていただき、準備を始めたいと考えております。
○畠山委員
準備をするということはよくわかりました。先ほどから述べているように、さまざまな苦労を農家も持って、今、前向きに営農しようという思いでいるわけですよ。きっちり受けとめて、対策をとることを強く求めます。
冒頭に述べましたが、今、政府を挙げて震災対応に当たるときです。TPP特別委員会の場で片手間のように審議する問題ではないことを重ねて指摘し、残りの時間で、TPPについては、国会決議との整合性について、幾つかのことだけお聞きしたいというふうに思います。
国会決議の第一項目は、守るべき対象として米、麦、牛肉・豚肉、乳製品、甘味資源作物を重要五品目として、引き続き再生産可能となるよう除外または再協議の対象とすることと定めています。
まず、農水大臣に確認します。
この重要五品目は、守るべき対象として、除外または再協議扱いとなったのでしたでしょうか。
○森山国務大臣
お答え申し上げます。
TPP協定では、関税に係る約束について、除外、再協議という区分は用いられておりません。
ただし、国会決議を後ろ盾にして交渉した結果、協定上認められている別段の定めとして、約二割の農林水産品について関税撤廃の例外措置を確保しているところであります。
なお、これら例外措置については、相互に約束をした五カ国との間で七年後に再協議することが定められております。
以上であります。
○畠山委員
今、重大な答弁だと思いますよ。
お手元の資料をまずごらんください。
一枚目に、政府はこれまでの貿易協定で重要品目は除外または再協議としてきて、この資料にあるように、米はいずれの場合も除外、麦や牛肉、豚肉も除外や 再協議として、協議の対象とはしてこなかったはずです。それを踏まえて、国会決議では除外または再協議の対象とするとしたのではなかったのでしょうか。
それなのに、今大臣が答弁されたように、TPPには除外や再協議の区分がない、前に定義がないという答弁もどこかでしたことがあったかと思いますが、いずれにしても、そのようなことは当初からTPPにはないということではありませんか。これをお聞きしたい。
それでは、除外や再協議が初めからないとわかって交渉に参加したんですか、それとも途中からわかったのか、どちらでしょう。
○石原国務大臣
ぜひこのTPP協定のそもそもを御理解いただきたいんですが、原則撤廃、ゼロなんですね。そんな中で、例外として、私ども は、今委員が御指摘になりました重要五品目を中心に、農産品についておよそ二割の例外をかち取ることができた。他の国々は、大変この部分はパーセンテージ が小さいわけでございます。例外としてとったというふうに御理解をいただきたいと思います。
○畠山委員
石原大臣、それはごまかしですよ。例外と除外は明確に違うわけです。
もう一回聞きます。除外や再協議という区分がないという答弁がありましたが、それがわかったのは、では、いつの時点ですか。
○石原国務大臣
本当に恐縮なのでございますが、交渉の経過についてはお話しをできないということでお許しをいただきたいと思います。
○畠山委員
いや、それはちょっとだめですよ。
だって、これは時間系列、たしか総理が交渉参加入りをして、後に決議を上げて、そして、この決議を後ろ盾にして交渉してきたという答弁を何度もしてきた じゃないですか。しかし、実際は除外や再協議というものは区分がありませんということであるならば、何を後ろ盾にして審議してきたんですか。ここは大事な ところですよ。
もう一回聞きます。除外または再協議という区分がない、定義がないとわかったのはいつですか。
○石原国務大臣
御満足いただける回答にならないかと思うんですけれども、結果を申させていただきますと、全ては交渉議決時に決まった、そして、決まったことが全てであるというふうに御理解をいただきたいと思います。
そして、日米の共同声明が二月二十二日にあるのでございますけれども、日本が環太平洋パートナーシップ交渉に参加する場合には、全ての物品が交渉の対象 とされること、このように、全ての物品が、委員が御指摘のような除外ですか、ということに関係なく、最初はテーブルに上がっているというふうに御理解をい ただきたいと思います。
○畠山委員
今の答弁、よくわかりません。
もう一度聞きます。同じことで聞きますので、きちんと答弁してください。
例外と除外は、まず違います。そして、除外または再協議ということは、政府は、これまでのEPAなどで、きちんと明確に区分してやってきました。国会決 議でも、それに基づいて決議が上がり、政府は、後ろ盾にして交渉してきたと正式に何度も答弁してきました。しかし、先ほどは、除外または再協議の区分はな いという答弁がありました。
後ろ盾であると言いながら、実際はそういう結果になった。では一体、どこで区分がないことを政府は認識したんですか。もう一度聞きます。
○石原国務大臣
先ほど御答弁をさせていただきましたけれども、日米の共同声明、二〇一三年の二月二十二日でございますが、この中で、日本が環太平洋パートナーシップ交渉に参加する場合には、全ての物品が交渉の対象とされること、これは確認をさせていただいております。
そして、今、TPP協定に除外という区分はないんじゃないかという御質問だというふうに聞かせていただいたわけでございますけれども、平成二十五年二月 の日米首脳による共同声明で、今お話をさせていただいた、全ての物品が交渉の対象とされる、TPP交渉参加に際し、一方的に全ての関税を撤廃することをあ らかじめ約束することを求められるものではない、これはすなわち聖域なき関税の撤廃。その上で、全ての物品を交渉のテーブルにのせ、交渉が行われた。政府 としては、国会決議を踏まえてぎりぎりの交渉を行ってきた結果が、除外ではなくて例外というふうに御理解をいただきたいと思います。
一方では、別段の定めにより、関税撤廃の例外を設ける措置を協定上認められた。これによりまして、日本の農産物の五品目は守られたというふうに私どもは理解をさせていただいております。
○畠山委員
今、二月二十二日の日米の交渉の話をしましたけれども、このとき決議は上がっていませんよ。おかしいですよ。(石原国務大臣「いやいや、時系列に言っている」と呼ぶ)時系列で言ったら違うじゃありませんか。
もう一回聞きますよ。除外または再協議、区分がないとわかったのはいつですか。もう一度聞きます。
○石原国務大臣
これは、先ほどもお話をさせていただいていますように、交渉がまとまったときに決まったわけでございます。
そして、先ほど来時系列のお話をされておりますけれども、私が申しておりますのは、二十五年二月の日米首脳会談がそもそものスタートで、そのときには、全ての物品が交渉の対象ということでありますので、重要五品目も入ってしまう。
岸田大臣が平成二十六年五月二十八日の衆議院の予算委員会で答弁をされておりますけれども、除外、再協議、こうした定義について確立したものはない、これはそれぞれの交渉の中で決まっていくもの、このように政府は考えております。
○畠山委員
委員長、ちょっと今、答弁、きちんと私が質問したことに答えていないですよ。
きちんと整理して、もう一度答弁するように、委員長からも求めてください。
○西川委員長
石原大臣に申し上げます。
質疑者畠山和也君が、答えが、私が求めていない、こういう発言がありましたので、十分対応していただくようにお願いを申し上げます。
○石原国務大臣
御満足をいただける回答ではないという前提をつけさせていただいております。
全ての交渉は、決着時に決まったわけでございます。ですから、例外ということも、全てそのときに決まったと御理解をいただきたいと思います。
そして、先ほど来、岸田外務大臣の平成二十六年五月二十八日衆議院予算委員会の答弁を私どもは政府の答弁の基本にさせていただいておりますが、除外、再 協議、こうした定義について確立したものは承知していない、それぞれの交渉の中で決まっていく、これが今回の交渉結果であると御理解をいただきたいと思い ます。
○畠山委員
私は、除外または再協議という区分がないのはいつわかったのかと聞いたわけです。そういうものを承知していないのは五月の時点で言ったということならば、それは初めから国会決議を守る気などなかったんじゃないですか。
この問題、また改めて別の機会に問いただしますよ。
時間もないから進みますが、国会決議のその後、一には、続けて「十年を超える期間をかけた段階的な関税撤廃も含め認めないこと。」と書かれています。
これは事務方で結構です。十年を超える期間をかけた段階的な関税撤廃の品目はありましたよね。何でしょうか。
○大澤政府参考人
お答えいたします。
TPPの合意につきましては、農産物でいきますと、五品目の一部、例えばホエー、林産物の一部、合板、それから水産物の一部、アジ、サバなどにつきまして、十年を超える関税撤廃期間というふうになってございます。
長期の関税撤廃を確保することにより、体質強化等を行うに必要な期間が確保できたと考えております。
○畠山委員
聞いていないことは答えないでください。
除外や再協議の区分もない、十年を超える期間をかけた段階的な関税撤廃も、乳製品のホエーが挙げられましたが、幾つもあるじゃありませんか。ソーセージなどの加工品も約三割は関税撤廃ですよ。明らかに決議に反していますよ。
そこで、総理、総理は、国会決議の趣旨に沿うものと評価していただけると言ってきました。今、この間ずっと議論する中で、国民からの疑問に対しても明確 に答えられない状況が続き、実際の品目を見ても、十年を超える段階的な関税撤廃がされていく品目もあります。これでどうして決議の趣旨に沿うものと評価で きると総理は言えるのですか。
○安倍内閣総理大臣
TPP交渉では、他の交渉参加国から関税を撤廃すべしとの強硬な主張が延々と繰り返される中、全ての物品を交渉のテー ブルにのせた上で、国会決議を背景に粘り強く交渉を行い、重要品目について関税撤廃の例外をしっかり確保するとともに、国家貿易制度の堅持やセーフガード の有効な措置を獲得したのは事実であります。
そもそも、全ての物品についてテーブルの上にはのせなければならない。そこから、それを下へおろしてくる努力をし、そして事実、我々はそれをなし遂げているわけでございます。
それでもなお残る農業者の方々の不安を受けとめまして、昨年十一月に総合的なTPP関連政策大綱を決定し、昨年度の補正予算を通じて緊急対策を講じたわ けであります。重要品目が確実に再生産可能となるよう、交渉で獲得した措置とあわせて、引き続き万全の措置を講じていく考えであります。
例えば、米については、国家貿易制度を維持し、国家貿易以外での輸入に課される高い枠外税率を維持し、そして、合計で七・八四万トンという日本の米の生 産量の一%程度の量の国別枠の設置にとどめたわけであります。さらに、この国別枠の輸入量に相当する国産米を政府が備蓄米として買い入れることとし、輸入 量の増加が国産主食用米の生産や価格に与える影響を遮断することといたしました。同じ量を政府米として購入することによって、これは遮断をいたします。ど うかその点は政府を信用していただきたい、このように思います。
そして、交渉結果が国会決議にかなったものかどうかは、これはまさに国会がお決めになることではありますが、政府としては、国会決議にかなうものである、このように確信をいたしております。
○畠山委員
政府を信用してくださいと述べられました。
資料の二枚目をごらんください。パネルにもしてあります。
しかし、とりわけ農家、農業者は信用していないんじゃないんですか。ごらんください、日本農業新聞、三月三十一日付では、約千人の農業者を中心としたモ ニター調査を行いました。TPPの合意内容と国内対策を踏まえて、不安が払拭されたかを聞いたものです。全然払拭されていないと答えた方が実に七一・ 二%、少し払拭されたが、まだ不安という方が一九・九%、合わせたら九〇%を超える圧倒的な方が政府のこの間の答弁を全く信用していないんじゃないか。不 安は払拭されていないと答えていますよ。総理が国会決議の趣旨に沿うものだといいながら、現場ではこのような状況にあることを率直に認めるべきです。
総理からは、国内対策云々かんぬんということは今ありましたけれども、セーフガードとか米の問題は、この後徹底的に審議させていただきます。
一月の予算委員会で、私はこの場から総理に対して、国内対策をすれば決議を守れたかのように言うのは、対策がなければ決議を守れていないということの告白じゃないかと言いました。
最後に問います。
先ほどからあったように、除外または再協議についても区分、定義はなかった、そして十年を超えた段階的な関税撤廃だってあるじゃないか、そしてこのよう に多くの方が不安を抱えている、対策がなければ決議は守れていない告白じゃないか。総理、こういう、農家、農業者が不安が払拭されていないことに対してど う答えますか。
○安倍内閣総理大臣
先ほど、委員の御質問と石原大臣との議論を聞かせていただいたわけでありますが、委員は何か、交渉の中においてあらか じめ除外とか再協議というものがどこかで約束された、それは動かせないものだということについて、ではいつなんだという質問をしておられたんだと思います が、しかし、それは、石原大臣が答えたように、まさに交渉の中で最終的に決着をするものでありまして、最後の最後まで私たちは交渉し、そして例外をかち 取ったんですよ。ほかの国々は、ほぼ一〇〇%、完全になくなったんですね。我々は、約二割、例外をかち取っています。そして、セーフガードもかち取ってい るんです。
交渉というのはそういうものでありまして、交渉を続けていって、最後の最後まで、国会決議を背に、強い交渉力を持って私たちは例外措置をかち取ったんだということは御承知をいただきたい。
さらに、再生産が可能となるように、そして、農業が競争力を持って、しっかりと若い皆さんが頑張って将来に夢を持てるように、我々は対策を行っているところでございます。
○畠山委員
先ほどから私が事実で述べているように、国会決議に反していることは明確だと思いますよ。
先日、北海道当別町に私は行ってきました。泥炭地を大規模に土地改良して有数の米産地となり、それを町民の誇りとしている町の歴史がある中で、ミニマム アクセス米などで輸入が続き、安い米が市場に流れて、米をつくっている多くの農家が苦しんでいる、この価格が続けばもう米はつくれないという悲鳴の声が上 がってきました。
国会決議を守っているのか、こういう農家の声をきちんと政府は受けとめるべきだと思いますし、私たちは、今回の審議でもさらに厳しく問題点を指摘して、批准など認められないことを最後に述べまして、質問を終わります。

第190回国会 農林水産委員会 第2号   平成二十八年三月九日

○畠山委員
日本共産党の畠山和也です。
昨日、TPP承認案と関連法案が閣議決定をされました。本委員会は、TPPに対して決議を上げた委員会です。この決議を守れたかどうかの論証は本委員会で行うべきと思い、きょうはその点を、短時間ですが、質問を行います。
高鳥副大臣にきょうはお越しいただいております。TPP本体では、TPP委員会のもとで、協定発効の日から三年以内に締約国間の経済上の関係を見直すこ とや、改正または修正の提案を検討することが明記されています。第二章の物品市場アクセスでは、小委員会のもとで、協定発効後最初の五年間、少なくとも年 一回会合するとされています。発効後直ちに見直しが始まるということだと理解します。
一方、米に関する関税割り当ての運用に関する米国との交換公文がありますね。これによれば、米国からの米輸入は、三年度中二年度で数量が消化されなかった場合に、SBS方式における最低マークアップを一時的に一五%引き下げることで合意をしています。
このような二国間の合意内容、いわゆるサイドレターですが、これはTPP本体の方にある見直し協議の対象となるのかどうか。確認ですので、副大臣にお伺いします。
○高鳥副大臣
畠山委員にお答えをいたします。
交換公文でございますが、TPP協定とは別個の国際約束であるために、TPP協定の規定の対象とはならず、再協議の対象とはなりません。
○畠山委員
別物であることを確認します。
TPP本体は、先ほど確認したように、発効後直ちに見直す規定があり、それに対して政府は、この間、日本の国益を害するものについては合意しないと答弁をしてきました。先ほども森山大臣から紹介がありました。
では、仮に交換公文でもその内容を見直すとなった場合、同様なのでしょうか。副大臣、お答えください。通告していますよ。
○高鳥副大臣
お答えいたします。
我が国といたしましては、交換公文の再交渉に応じる考えはございません。
○畠山委員
では、さらに具体的にお聞きします。
今度は、本体の方の附属書二―Dの日本国の関税率表、一般的注釈9の(a)についてですが、次のように書いてあります。オーストラリア、カナダ、チリ、 ニュージーランドまたはアメリカ合衆国の要請に基づき、途中略しますが、関税、関税割り当て及びセーフガードなどの検討をするために、締約国について効力 を生ずる日の後七年を経過する日以後に協議する。この間随分議論された、七年後の再協議の規定です。
これは事務方で結構ですが、この同じ項目で、日本文は今のように書いてあるんですが、では、オーストラリアは日本以外のほかの国と協議することになっていますか。
○澁谷政府参考人
豪州の関税率表では、協議の相手国となっているのは日本のみでございます。
○畠山委員
同じように、ここの日本の文書に書かれている、ほかのカナダ、チリ、ニュージーランド、アメリカについても同様に、日本以外のほかの国と協議することは書かれていますか。
○澁谷政府参考人
御指摘の四カ国につきましても、豪州と同様、協議の相手国となっているのは日本のみでございます。
○畠山委員
つまり、この項目というのは、七年後の再協議という期間の問題だけでなく、日本を含めて六カ国の名前が出てくるわけですが、マルチの再協議ではないんですよ。日本と五カ国それぞれの個別協議というのがこの項目です。
農産物関税撤廃率が日本に次いで低いのはカナダ、九四・一%ですが、そこも含めて、日本のような複数国と見直しの要請を約束している国というのはほかに ないんですね。何で日本だけこんな個別協議をすることになったんですか。どんな交渉をした結果か。これは高鳥副大臣、答弁してください。
○高鳥副大臣
お答えいたします。
相手国との関係もございまして、交渉経緯の詳細については申し上げられませんけれども、全体の分野を通じたバランスに配慮したぎりぎりの交渉の結果、相 互主義のもとで、相手国からの要請に基づき協議を行うとの規定を、当該内容に合意した国との間で相互に設けることにしたということでございます。
○畠山委員
いや、相互主義になっていないんですよ。先ほど言ったように、これはマルチの問題ではなくてバイの交渉になっていて、当時の報 道にもありましたけれども、米豪とか米・ニュージーランドとか、さまざまな問題があったかと思うんですが、それでも結局、七年後の再協議のこの規定は日本 とそれぞれの国だけの規定になっているんです。おかしいじゃありませんか。
こんなことだから、国益を害するものについては合意しないと政府が答弁をされても、農家の不安が消えないわけです。議論だって、こうやって秘密だとなったら進んでいかない。
五カ国いずれも農産品輸出大国です。政府は関税撤廃等で例外を確保したと盛んに言いますが、関税が残った四百四十三ラインというのは全て農林水産物です ね。確保した部分が相手からすれば交渉のターゲットに文字どおりならざるを得ません。日本へさらなる関税削減や撤廃を迫る以外にあり得ません。
そこで、最後、森山大臣に伺います。
日本の農林水産業に責任を負う大臣として、本委員会での決議についての情報公開にかかわって認識を伺います。
このように決議には書かれています。「交渉により収集した情報については、国会に速やかに報告するとともに、国民への十分な情報提供を行い、幅広い国民的議論を行うよう措置すること。」これが本委員会の決議です。
交渉の経過が答えられないという答弁が先ほどありました。決議に反していると私は思いますが、大臣は今この間のやりとりを聞いて、決議に反していないかどうか、認識をお答えください。
○森山国務大臣
TPPに関する説明につきましては、交渉中も秘密保持の制約がある中で国会等における丁寧な説明を心がけてきたところでありますが、大筋合意後は、その直後から、関税交渉の結果や協定本体及び附属書、さらには交換文書の概要資料などを公表してまいりました。
御指摘の交換文書につきましては、大筋合意した直後の昨年十月六日に内閣官房が案件一覧を公表いたしましたし、また十月八日には農林水産省が農林水産分 野の内容を公表しました。また十一月五日には内閣官房がより詳細な内容を公表させていただき、ことしの二月の四日に内閣官房が全文を公表しているところで あります。
また、公表した資料に基づき、現在まで四十六回にわたりまして、大筋合意の内容についても説明会を各地で開催させていただきまして、国民の皆さんへの丁寧な説明に努めてきたところであります。
今後とも、現場からの要請を踏まえつつ、全国各地においてきめ細かく丁寧な説明を行っていく考え方であり、国会決議に沿ってしっかりと対応してまいりたいと考えております。
○畠山委員
時間ですのでもう終わりますけれども、私は情報は明確に公開されていないというふうに思います。批准を求める審議の大前提がこの交渉経過も含めた情報公開であるからこそ、このような委員会の決議が上がったのではなかったでしょうか。
改めてその点を強く指摘して、私の質問を終わります。

第190回国会 本会議 第13号      平成二十八年三月一日

○畠山和也君
私は、日本共産党を代表して、二〇一六年度一般会計予算外二案に反対する討論を行います。(拍手)
予算案の審議を前に、内閣を代表して経済演説を行った閣僚が口きき疑惑で辞任したことは極めて重大でした。いまだ疑惑は解明されていません。問題の根本にある、パーティー券を含む企業、団体からの献金を全面禁止することを求めます。
以下、予算案に反対する理由を述べます。
第一に、本予算案は、国民の中に広がる貧困と格差の是正どころか、大増税を押しつけ、財界、大企業の利益優先へ大盤振る舞いとなっている点です。
総務省の家計調査で、二人以上世帯のうち勤労者世帯の実質可処分所得が、三十年前以下の水準に落ち込んでいることが明らかになりました。消費税率八%への引き上げで、消費者物価指数が二〇一五年に一〇四・六まではね上がり、物価上昇は過去最高の水準となりました。
同じく、総務省の労働力調査では、安倍政権の三年間で、正社員が二十三万人減った一方、非正規雇用の労働者は百七十二万人ふえています。
ミニ経済白書では、パート労働者だけでなく、一般労働者も実質賃金が低下していることを認めています。
安倍首相が言う経済の好循環どころか、国民にとっては悪循環が続いているのではありませんか。
消費税一〇%となれば、政府試算でさえ、国民一人当たり年間二万七千円、一世帯当たり六万二千円もの大増税が押しつけられます。将来の引き上げも政府は 否定せず、与党幹部からもインフラ整備ができたなどの発言があり、軽減税率は、さらなる増税の布石となっています。暮らしと経済に取り返しのつかない打撃 を与える消費税一〇%は、きっぱり中止するべきです。
政府は、決まって、消費税増税分は社会保障の充実へ回すと述べますが、予算案に盛り込まれているのは、診療報酬の実質減、高齢者医療の窓口負担増、介護 保険利用料の倍化、生活保護の加算、扶助減額見直しなど、負担増と給付減の徹底というべく、全面改悪です。政府が昨年出した改革工程表に基づき、社会保障 自然増を半減以下にばっさり削減したためです。どこに社会保障の充実があるのですか。
国民には負担増を求めながら、法人実効税率を二〇一八年度まで二・三七%引き下げるなど、史上最高の利益を上げている黒字大企業へ一・六兆円もの大減税 を行い、その穴埋めとして、外形標準課税の拡大で中堅企業への増税を行うなど、言語道断です。この間の優遇税制によって、結局は、大企業の内部留保が大膨 張しただけではありませんか。
今、政府がなすべきは、長時間・低賃金労働の是正など、安心して働ける環境をつくることです。元請大企業と下請企業の公正取引へ、国が監視と指導を強めることが必要です。
社会保障充実の財源は消費税増税に頼らず、応能負担の原則に基づく税制改正によってつくり出すべきです。家計に重い負担となっている教育費の軽減へ踏み出すときです。
この際、民主・維新・無所属クラブによる編成替え動議について触れておきます。
貧困と格差を是正する点で、部分的ではありますが、返済不要の給付型奨学金の創設、介護・障害福祉従事者、保育士等の給与の引き上げなどは必要なことであり、賛成を表明するものです。
反対理由の第二は、地方創生と口にしながら、一層地方の疲弊を加速させる点です。
予算委員会の地方公聴会では、その懸念の声が相次ぎました。香川県高松会場では、地域経済の落ち込みやTPPへの痛烈な批判が出されました。福島県郡山会場では、今の内閣は被災地に寄り添っていないとの表明もありました。
そもそも、地方創生を言うのなら、農林漁業に大打撃を与えるTPP批准などやめるべきです。各県やJAの試算では、政府試算を超える農業被害が示され、 不満と不安が広がっています。予算案には、TPPへの対応として、規模拡大や輸出促進に重きが置かれていますが、農家が切実に求める価格安定対策や、三 九%まで下がった食料自給率の向上こそ、急がれるものではありませんか。
安倍首相は有効求人倍率がふえたと盛んに言いましたが、では、なぜ若者が都市圏へ仕事を求めて来るのでしょう。最低賃金に大きな格差があるからです。中小企業への支援強化とあわせ、全国一律時給千円以上の最低賃金制度の確立に今こそ足を踏み出すときです。
五年目を迎える東日本大震災の被災者が、なお十七万人も避難生活を強いられている中、暮らしとなりわいの再建は急務です。住宅再建へ被災者生活再建支援金を五百万円まで引き上げることや、被災自治体の独自支援策を応援する立場こそ、求められます。
福島第一原発事故の被害の実態に応じた、支援と賠償へ国が責任を果たすときにもかかわらず、福島の願いに背を向けて、全国で次々と原発を再稼働するなど、到底許すことはできません。
反対理由の第三は、安保法制、戦争法を強行成立させたもとで、五兆円を超える軍事費を盛り込み、アメリカの戦争支援体制を強化している点です。
新型ステルス戦闘機F35や新型空中給油機、イージス艦、オスプレイ等の軍備拡大は、周辺諸国との緊張関係を高め、東アジアの平和環境づくりに逆行するものです。後年度負担が膨れ上がり、中期防衛力整備計画をも大きく上回るペースです。
新たな日米合意に基づき、思いやり予算を百三十三億円も増額し、米軍への施設提供整備に、最低でも毎年二百六億円を積算根拠も示さないまま支出するとし ています。米軍が配備を進めるF35戦闘機についても、日本政府による財政負担で新たな重整備拠点を置くとしています。対米従属もきわまれりではありませ んか。
沖縄の民意を無視して、代執行訴訟にまで踏み切り、辺野古への新基地建設を強行するなど、とんでもありません。普天間基地は、移設条件なしの閉鎖、撤去こそ要求するべきです。
民意を無視した安保法制、戦争法の強行採決から間もなく半年がたつ中、国民の怒りはおさまるどころか拡大し、安倍政権をかえようとのうねりが全国に広 がっています。この三月に戦争法は施行されようとしていますが、日本の自衛隊が戦後初めて外国人を殺し、戦死者を出すという現実的な危険が生まれていま す。
改定PKO法において、自衛隊は新たに任務が拡大し、任務執行のための武器使用も認められました。国連PKO自身が交戦主体となっている現実のもと、内 戦状態に陥っている南スーダンで自衛隊が武力行使する可能性について、政府は明確に否定しませんでした。また、駆けつけ警護の一部として、狙撃、射殺前提 の作戦があることについても、政府は検討していることを認めました。重大です。戦闘の当事者になるのは避けられないではありませんか。
我が党は、先月十九日、他の四野党とともに安保法制を廃止する法案を提出しました。日本共産党は、国民との共同をさらに強め、憲法違反の安保法制、戦争 法を廃止し、集団的自衛権行使容認の閣議決定を撤回し、安倍政権打倒と、日本の政治に立憲主義と民主主義を取り戻すため全力を挙げる決意を表明して、私の 反対討論を終わります。(拍手)

第190回国会 予算委員会第二分科会 第1号 平成二十八年二月二十五日

○畠山分科員
日本共産党の畠山和也です。
きょう、私で十九人目ということで、本当に大臣、お疲れと思うんですけれども、元気そうにも見えますので、厳しく質問をさせていただきたいと思っています。
初めに、遊休農地の課税問題について伺います。
遊休農地については、農業委員会が年一回、農地の利用状況を調査して今後の利用意向を尋ねるとしています。意思表明から六カ月経過しても耕作されないと きや、耕作の意思がない、あるいは意思表明がない等の場合は、農地中間管理機構との協議を農業委員会が勧告するという枠組みになっていますね。
そこで、まず総務省に確認をします。
勧告を各農業委員会に任せるとなれば、団体ごとに違いが出ることも予想されます。課税の公平性という原則から見てふさわしいやり方と言えるんでしょうか。
○青木(信)政府参考人
お答え申し上げます。
遊休農地の有効利用を図るため、今回の改正案におきまして、農地法に基づき農業委員会から農地集積バンクと協議すべきことを勧告された遊休農地について、平成二十九年度から課税の強化を行うこととしております。
この課税の強化の対象は、農業委員会が農地法に基づく手続を適正に行った上で勧告に至った遊休農地としたところでございます。また、農地の評価において 乗じられる割合を、勧告を受けた遊休農地について乗じないこととしているわけでございますけれども、この割合は農地売買の特殊性を考慮したものでございま して、農地として耕作されていない遊休農地に乗じないということについては合理性があるものと考えております。
○畠山分科員
合理性は農地の特殊性においてあるんだという答弁ですけれども、しかし、同じ農地でも使用状況によって税額が変わることにな るのは事実であります。しかも、今言ったように、農業委員会や課税当局の判断で変わり得ることがあるので、私は、原則から外れているというふうに考えま す。
そこで、農地中間管理機構に勧告がそれでもされて、そして、機構は裁定の申請を出して、最終的に都道府県の知事が裁定すれば、課税対象の遊休農地がふえるということになります。
今度は農水省に伺います。
直近の、機構で、この勧告の件数について答弁してください。
○山北政府参考人
先生御指摘のとおり、二十六年四月の農地法の改正で、先ほど先生がおっしゃったような仕組みができたところでございます。
それで、現在、機構との協議の勧告まで至っている件数でございますが、平成二十七年の実績で四百十六件となっているところでございます。
○畠山分科員
四百十六件というのは、勧告まで至って、勧告をしたものですか。もう一度確認します。
○山北政府参考人
四百十六件が、勧告をしたものでございます。
○畠山分科員
その四百十六件なりの勧告したものが、今度は、課税も含めたものになっていくわけですから、つまり、農業委員からしてみれ ば、今度、勧告の行き着く先に、課税強化となる可能性がある勧告となるわけですよね。ですから、農業委員からすれば、課税の責任の一端を負わせられるとい うふうになるわけです。
ですから、不在地主がいるとか、所有者不明の農地があってその特定に時間がかかるとか、自治体合併によって調査の範囲が広がって、今でさえも時間が足り ないとかいう状況の中に、こういう状況がさらに加わるわけですから、現場の混乱が起きるんじゃないかと私は思うんですね。何でそこまでしてこの課税強化策 をする必要があるのか、私は根本的な疑問があります。農水省、もう一度お答えください。
○山北政府参考人
お答えいたします。
農地中間管理機構を使いまして、遊休農地の解消、担い手への農地の利用集積ですとかあるいは集約化を進めていくということは、農業を成長産業化していく上で極めて重要な課題だというふうに我々は考えております。
機構の発足によりまして、近年停滞しておりました農地の流動化、これも再び動き出したというところではございますけれども、十年間で担い手の農地利用面 積のシェアを現状五割のところを八割に引き上げるという目標を達成するためには、機構を早期に軌道に乗せていく必要があるというふうに考えているところで ございます。
機構の初年度の実績から見ました問題点の一つでございますが、農地の所有者が、みずから耕作できない農地につきましてもなかなか貸し付けに踏み切れない ということがございまして、税の仕組みも使いまして、所有者の機構への農地貸し付けのインセンティブを強化する必要があるというふうに考えているところで ございます。
このため、今回の法案につきまして、まずは、農地法に基づきまして農業委員会が所有者に対して機構と協議すべきことを勧告した遊休農地の課税強化と、あ わせまして、所有する全農地を機構に十年以上の期間で貸し付けた場合、固定資産税の課税標準を二分の一にする措置、言ってみれば軽減措置でございますが、 セットで講じることとしております。
課税強化の対象でございますが、農業振興地域内の遊休農地、十万八千ヘクタールあるわけでございますが、そのうち、言ってみれば、農業委員会による協議 の勧告が行われたものということでございますので、実際に課税強化がされるものは、機構への貸し付けの意思表明もしない、あるいはみずから耕作の再開も行 わないということで、遊休農地を放置している場合に限定されるということでございます。
いずれにしても、大切なことは、この機会に地域の農業者がよく話し合っていただいて、遊休農地を発生させない、あるいは放置しないということで、機構へ の貸し付けを活用していただくことによりまして、人、農地の問題を解決していくことにあるというふうに思っているところでございます。
○畠山分科員
限られた時間ですから、聞いたことだけお答えください。
遊休農地の解消といって、インセンティブという言葉を使いましたけれども、それなら政策減税だけでやればいいのに、課税をするというのはディスインセンティブだということから説明はずっとしているじゃないですか。だめですよ。
農水省が昨年十二月に出した「「日本再興戦略」改訂二〇一五 KPIの進捗、及び施策の実行状況について」の中に、「農地中間管理機構の機能強化」とい うページがあります。そこには、「機構を軌道に乗せるための方策」として、「遊休農地等に係る課税の強化・軽減等」とある。遊休農地の解消が目的じゃなく て、機構の実績を上げるための課税ということが農水省自身の文書の中にあるわけですよ。遊休農地の活用という理由は後づけなんじゃないですか。とんでもな い。撤回を求めます。
また農水委員会でも、私は委員でもありますので、農地問題については今さまざまな問題が出ていますので、今後取り上げたいというふうに思っていることを表明しておきます。
きょうの本題に入ります。北海道夕張市の財政再生問題について伺います。
きょうはほかの委員からも質問が出ていますので、さらに私から、掘り下げて質問したいと思っています。
財政再生団体に移行して十年となりました。実質赤字三百五十三億円に対して、返済は、今年度で約九十二億円になるというふうに現地で私も伺ってきました。
まず、この十年間の法的仕組みを確認しておきます。いわゆる自治体財政健全化法のもとで、夕張市は、財政再生計画を総務大臣に協議してその同意を求める、つまり、国の同意のもとで行財政が執行される関係になったという基本的な考え方で間違いありませんね。
○安田政府参考人
お答えいたします。
夕張市は、平成十九年三月に旧再建法に基づく財政再建団体となり、その後、新たに制定されました地方公共団体の財政の健全化に関する法律に基づきまし て、健全化判断比率が財政再生基準以上であるため、平成二十二年三月に財政再生計画を策定し、総務大臣の同意を得たところでございます。同法に基づきまし て、同計画を変更する際にも大臣の同意が必要であるとされているところでございます。
○畠山分科員
それで、夕張市の今のこの状況を見回せば、今年度で財政の市税収入は八億円程度とされていて、ただ、先ほど言ったように、今年度は二十一億円ぐらいになるのかな、返済の見込みだという話です。今後も、毎年約二十六億を返済することになっています。明らかに巨額です。
この返済の原資は何に依拠してきたと考えますか。
○安田政府参考人
お答えいたします。
夕張市におきましては、財政再生団体移行当時に約三百二十二億円の解消すべき赤字額があったわけでございますが、この赤字額につきましては、再生振替特例債という赤字特例債に振りかえて償還を行っていただいているところでございます。
この償還につきましては、歳入歳出両面ございますけれども、歳入でございますと、例えば、市税の税率の引き上げ、これは市民税の均等割でございますとか 所得割、固定資産税、軽自動車税といったもの、それから使用料、手数料の見直し。あるいは、歳出でございますと、人件費の見直し、現在でございますと、基 本給が平均一五%削減されております。また、職員数も大幅に削減されております。また、施設の統廃合、小学校六校が一校、中学校三校が一校。こういった取 り組みによりまして生ずる財源により返済を行っているものと承知しております。
総務省といたしましては、この再生振替特例債の償還に係る利子につきまして特別交付税措置を行っているところでございます。
○畠山分科員
そのようなことで、これからも同じ金額を返済し続けるということになるならば、市民の総人口や労働力人口、そして市の職員も同数いないとできない、そういう原資になっているわけですよ。
これは数字だけ端的にお答えいただきたいんですが、十年前、そして直近の夕張市の人口、あわせて、国立社会保障・人口問題研究所の二〇一五年予測での夕張市の人口について答弁してください。
○安田政府参考人
お答えいたします。
夕張市の財政再建団体移行前でございます平成十七年、二〇〇五年の国勢調査における人口は一万三千一人、また、まだ北海道の独自の発表でございますけれども、平成二十七年、昨年二〇一五年の国勢調査速報値による人口は八千八百四十五人となっていると承知しております。
国立社会保障・人口問題研究所の推計によりますと、二〇二五年には六千七百七人、二〇三五年には四千六百七十五人となる見込みが示されていると承知しております。(畠山分科員「二〇一五年、そう私は聞きました」と呼ぶ)二〇一五年でございますか……
○石田主査
もう一度答えてください。
○安田政府参考人
まず、二〇一五年、平成二十七年につきましては、既に北海道が独自に発表しております。これは……(畠山分科員「そうで なくて予測」と呼ぶ)予測値でございますか。済みません、今手元に人口問題研究所の二〇二〇年の数字があるのでございますが……(畠山分科員「それじゃ結 構です」と呼ぶ)はい。
○畠山分科員
事前に通告していますから、お願いします。
二〇一五年予測は九千二百五十八人だったはずです。いずれにしましても、予測を超える人口減少です。
そこで、資料をごらんください。二月六日付の北海道新聞で、鈴木直道市長がインタビューに次のように答えています。財政再建だけ取り上げれば優等生としつつ、副作用が出ています、人口の減少ですと答えております。
めくっていただいて、二枚目ですが、全国や北海道の近隣自治体と比べても減少幅が大きいことを、私の事務所の責任でグラフとしました。このように、大幅に右肩下がりであります。
五歳以下の人口を見ても、二〇一五年四月現在、百八十人なんですね。五年前は二百六十一人といいますから、人口も子供の数もそろって三割減少です。これほど減少している自治体は、国内でほかにないだろうと思います。
夕張市は、大臣は昨年来られたので御存じだと思いますけれども、東京二十三区とほぼ同じぐらいの面積を持っているにもかかわらず、先ほどあったように、 行政サービスの削減の中で、小中学校が一校になり、あと、市民会館、図書館、美術館が廃止、公園や体育施設も一部閉鎖、下水道使用料は六六%の値上げ。
大臣に伺います。このような環境の中で、夕張に移住して子育てするというのはやはり厳しいと思うんですよ。同じような認識をお持ちになりませんか。
○高市国務大臣
実際に六月に夕張市を訪れまして、鈴木市長初め市民の皆様の、特に子育て環境の充実に対する要望の声を伺いました。
やはり若い方々がどんどん市の外に出ていかれる、これをどう食いとめるか、むしろふやしていくかということを考えると、働く場所、それから子育て環境だ と思います。それでなくても、税金が上がったりしてなかなか暮らしにくくなっている中で、行政サービスの充実も図っていかなきゃいけないし、財政再生を図 りながら働く場所をつくっていく、子育て環境を充実するということだと思います。
○畠山分科員
子供の減少がとりわけ、その町に住む子育て世帯の減少にもなっているわけですよね。ですから、税収が減る要因にもなります。これが、この間、国のもとで行われた財政再生の十年の結果だと私は強調したい。
どうするか。資料の三枚目をごらんください。これは、夕張市内の事業者に、市外から通勤、勤務している方へアンケートをとったものがあるんですね。そん なに多くないので、例えば二十歳代は三十五人とかいうふうになっていますけれども、夕張市でいえば大きな数字です。これによれば、上の方のグラフですが、 夕張市への居住意向で、居住条件が満足できれば住んでもよいという方は、二十代、三十代でも二割から三割います。その条件を聞いたものが下のグラフです が、身近で買い物ができる、住宅が確保されている、除雪がしっかりされ冬の生活に困らない、あるいは医療や福祉の支援が充実しているの順で、過半数となっ ています。
つまり、これまで削られてきた住民サービスを戻すことが一番の解決策なんですよ。巨額の返済額が現状のままでいいと私は思っていないけれども、少なくとも、今、十年を経て、財政再生計画を柔軟に見直す必要が示されているんじゃないかと思うんですが、大臣、いかがですか。
○高市国務大臣
一つずつ進めております。例えば、就学前の児童の医療費無料化についても、これは平成二十五年ですが、市からの要望を踏ま えて、財政再生計画の変更に同意をしております。また、保育料などに関しても、近隣市町村よりも高い水準になっていますから、この格差というのがやはり市 外に子育て世代の方々が流出する原因の一つでもあろうと思いましたので、これも、市の要望を踏まえまして、平成二十八年度より保育料の引き下げを実現し て、近隣市町村と同水準とすることとしました。
今後もさまざま、先ほど私が申し上げましたように、今度は稼ぐ力もつけていくということも含めて働く場所をふやしていく、そのための取り組みもあわせて 必要でございますので、これは市のお声を伺いながら、協議会、三者の協議の場がございますので、しっかりと協議を進めてまいりたいと思います。
○畠山分科員
財政再生十年の大きな副作用がもう一つあるというふうに、夕張の鈴木市長さんの新聞を読んで私は思いました。それが市の職員の減少です。
これは、資料の最後の四ページ目をごらんください。時間がありませんので、端的に二つ指摘しておきたいと思うんです。
一つは、大幅な職員減少によって、派遣職員なしでは成り立たなくなっている。今年度を見れば、百十九人の職員のうち派遣が二十二人で、既に二割近くに なっています。十年前は予測しなかった、それこそ、今進められているマイナンバーなどの業務がふえているので、派遣しても追いつかない状況が生まれている と私は思うんです。
それからもう一つは、若い職員の年度内退職が相次いでいることです。この五年間で見ても、二十九歳以下が六人、三十歳代が二人などに、これに年度末の退 職者も加わるわけです。給与の削減とか、若い職員ですから、もちろん子育て環境とか、あるいは自治体職員としてのやりがいが得られにくいなどの要因が考え られます。これは昼に大臣からも答弁がありました。
それで、今働いている職員の多くは、財政破綻当時の管理職ではないんですよね。既に当時の職員の七割超は退職済みであります。どこまで自分たちが責任を負うのかと悶々としながら職員が働いているだろうということは想像にかたくありません。
そこで、大臣に伺います。このままでは、返済が完了しても行政機構の継続性が成り立たなくなる心配が私にはあります。プロパー職員が育たない。この認識を共有されますか、どうされますか。
○高市国務大臣
その話も鈴木市長から伺いました。やはり給与の引き下げ等、これは再生していかなきゃいけないわけですから、本当に必死で やってこられたわけですけれども、それによって士気が下がっていること、優秀な人材の確保が難しくなっていること、それに加えて、やはり離職される方が多 いということについても切実なお声を伺いまして、多少の改善をしたことにつきましては、昼の答弁、御承知のことと思います。
夕張市の再生方策に関する検討委員会の設置がありましたので、今議論がなされていると伺っております。間もなくその報告書も出てくるかと存じますので、今後も、市からもよく御意見を伺いながら、また三者協議の場で市、北海道と協議を進めてまいります。
○畠山分科員
私は、北海道比例の選出でして、当時から夕張の現状を聞いてきた者の一人という思いがあります。国として、ぜひ今の夕張の現 状に危機感を持って踏み込んでほしい、踏み込まないとだめだと私は思っているんですよ。住民サービスが削られても、あるいはこんなふうに給与が削減されて も、町に残る市民や市の職員は十年間、複雑な、時には理不尽な思いを持ちながら責任を果たしてきたという思いがあるんですよね。
ここまで市民が責任を負うべきなのかという気持ちが出るのも当然だと私は思います。
だって、夕張市民というのは、御存じのように、さまざまな国の政策によって市民生活が左右されてきた歴史があることは、大臣も御承知だと思うんですよ。
まず、エネルギー政策の転換で炭鉱が閉山されて、炭鉱会社の土地、社宅、病院などを買い取った際の市債の発行が三百三十二億円でした。
次に、国が旗振りをしたリゾート開発政策で、これに対する市のやってきたことについてはいろいろ意見もあるでしょうが、いずれにしても、事実としてあっ たのは、進出した松下興産が早々に撤退して、ここでも市が、市民の働く場を維持するために、スキー場やホテルを買い受けた。金融機関もどんどんどんどん貸 して、結局、道庁に債権をつけかえて回収して、責任を金融機関がとらなかったということも、市民は目の前で見てきています。
そして、追い打ちをかけたのは国の行財政改革だと私は思います。交付税において産炭地補正がなくなった後、三位一体の改革で地方交付税も削減されて破綻に至ったというのが、歴史を追った順序ではなかったでしょうか。こういう歴史の中に市民が生きてきたわけです。
これまで我が党は、国の責任については何度かただしてきました。二〇〇八年五月二十一日、参議院の決算委員会で、当時の増田総務大臣は、「国に責任がな いというようなことを申し上げるつもりはございません」と答弁しました。二〇一〇年三月十九日の参議院総務委員会では、政権は違いましたけれども、当時の 原口総務大臣は、我が党の指摘に、「委員がおっしゃっている認識は正しい」と、認めています。
そこで、十年たった今、夕張市は市民とともに財政再生計画をきちんと実行してきました。今度は国が応える番だと私は思います。現状のままでは、今後の返 済の土台さえ崩れようとしている。現実的に考えたときにも、債務返済の圧縮とか期間の短縮とか、これは一例ですが、柔軟に考える時期ではないのかと思いま すが、大臣、いかがですか。
○高市国務大臣
私が夕張に伺ったときに一番心に残っている出来事が、役場の方に参りましたときに、たくさんの御高齢の方々が出迎えてくだ さいました。自分たちの世代に責任がある、一時行政が思ったような方向じゃない方に走ってしまってこうなってしまったとおっしゃったのを聞いて、本当にも う涙が出ました。
確かに、国のエネルギー政策の転換やそういったものに翻弄されてきた。一時は、やはり行政が必ずしも正しくない方向だったのかもしれません。いろいろな 事情が重なっていて、でもそれを、ごくごく普通に暮らしていらっしゃる市民の方々が、そういう行政を選んでしまったのも自分たちの責任だ、自分たちの世代 の責任だ、若い、子供たちの世代に苦労をかけたくないというようなことをおっしゃった。それが一番私にとって悲しくて、つらくて、せつない出来事でござい ました。
今度、もう委員は十分御承知だと思いますけれども、二回も土砂災害の原因になった、炭鉱から出たズリを積み上げた山も、ようやく調整炭として新たに売り物になる、そういった形ができてまいりました。
これから、総務省も、ローカル一万プロジェクトもやっておりますし、また、いよいよ来年度から事業化も始まりますけれども、再生可能エネルギーのインフ ラプロジェクトもございます。いろいろな、これからやはり富を生み出していく、若い方々が希望を持って働く場所ができていくような、そういう支援をしたい なと考えております。
○畠山分科員
市民だって、ただ我慢に我慢を重ねているわけじゃないんですよね。
私、先日夕張に行ったときに、あるNPOの団体の方をお伺いしました。小学校の跡地で、障害児支援とかあるいは子供の放課後支援などを地域や保護者の協 力で行っていました。それだけじゃなく、調理免許のある六十代の方が、小さいものですけれども、パートでレストランをそこでやっていたりとか、炭鉱から出 る湧水を使った小水力発電や、堆肥熱を活用して体育館の中にハウスをつくってチコリとかホワイトアスパラなどもつくっているんです。理科室は陶芸場、そし て視聴覚室は高校生などのバンド練習など、市民自身による新たなまちづくりの努力も夕張では始まっているんですよね。
債務の見直しといったときに、重い負担の解消だという面と、このような市民の努力を後押しするという面とがあると思うんですよ。債務の見直しは、決して否定的な意味じゃなくて、積極的な意義があると私は訴えたい。
自治体財政健全化法の第二十一条には、「国及び他の地方公共団体は、財政再生団体が財政再生計画を円滑に実施することができるよう配慮するものとす る。」と書かれています。配慮というと、何か国が上から配慮してやるみたいな言葉で私は余り好きじゃないけれども、しかし、現状は、今この規定に基づく精 神を国が発揮するときだと私は重ねて訴えたいんですが、大臣、いかがですか。
○高市国務大臣
鈴木市長からの御要望を受けて、私のできる範囲内で、必要な変更についてはしっかりと認めさせていただきます。そしてまた、前向きな応援、とにかく働く場所を生み出す、子育て環境をよくするための応援をさせていただきたいと思っております。
○畠山分科員
今、先ほどからあったように、夕張市も十年を契機にした第三者の検討委員会を立ち上げました。検証結果を持って、来月になる んでしょうか、多分市長さんが大臣にお会いに来るのではなかろうかと思うんですよ。その中身をぜひ正面から受けとめていただきまして、言葉だけの激励でな くて、今私がずっと三十分間言い続けたように、具体的な施策に踏み込んで示してほしいというふうに思います。何よりも、先ほど紹介したように、夕張が国策 によって随分と苦労をし、その責任を過去の大臣もそれなりのそれぞれの表現でしてまいりました。
最後に、私、市民から聞いてショックだった話を一つだけ訴えたい。子供たちへの影響です。
この十年間で生まれた子供たちには何の責任もありません。しかし、近隣自治体の子供たちから、おまえの町は貧乏だとからかわれたんです。町は貧乏でも家 は金持ちだと大見えを切った子供もいれば、何も言えなかった子供もいたというんです。どうしてこれで夕張に誇りを持てると言えますか。
本当にこういう子供たちや市民を応援するために、国が今こそ力を発揮してほしい。町に誇りを持っている住民の力で地域社会は成り立っていますし、炭鉱で 多くの労働者が犠牲になった中でも、夕張が好きで残っている今の市民を励ます立場に国が立つべきだということを最後に強く強調して、私の質問を終わります。

第190回国会 予算委員会 第14号    平成二十八年二月十八日

○畠山委員
日本共産党の畠山和也です。どうぞよろしくお願いいたします。比例北海道の選出です。
時間に限りがありますので、早速質問をさせていただきます。
私からお一人ずつ伺って、まず蓮井会長さんからよろしくお願いいたします。
先ほどの景気情勢の中で、個人消費の持ち直しという表現がございました。きのう総務省が発表した総世帯の二〇一五年家計調査によれば、物価変動を除く実 質ベースで前年比二・七%減になったということであります。先ほどからあるように、マクロと地域ごとのさまざまなことはあるでしょうけれども、現状、この 家計消費、一般的には消費の落ち込みや停滞がかなり景気の足を引っ張っているのではないかというふうに思います。
その上でお聞きしたいのは、来年四月に消費税の一〇%が計画をされています。先ほどの景気情勢の判断と、この消費税一〇%との関連で御見解があれば、お聞きいたします。
○蓮井明博君
先ほどの家計調査は前年比でマイナスだという話は、マクロの全国の話ですけれども、恐らく、比較するその前の年が、前回の消 費税引き上げ前の駆け込みもあった時期を含んでいますので、そこと比較するとそういった部分の要因もあるのではないかなと見ていますが、いずれにしても、 私はそういう分析をする立場じゃありませんので、この地域の消費動向を申し上げますと、やはり二極化しているように思います。厳しいところは厳しい、大分 よくなっているところはよくなっている。特に、やはりインバウンドで、外国人観光客に来ていただいているような先は比較的余裕ができ始めてきている、そう いうことだろうなと思っております。
したがいまして、これからはやはりそういう消費に対する後押しができるような政策、あるいは、将来不安を解消できるというか、県民の方々が将来不安を持 たないようにできるだけ将来が見通せるような施策、この辺を打っていただくというのがいいのではないかな。そこが、消費税の問題がどう絡んでくるかという ことだろうと思いますけれども、それはもう少しいろいろな多角的な検討が必要かなと思っております。
ただし、一般論からいえば、将来不安をなくしていくというのが本当にやはり大事だろうなというふうに思います。
以上です。
○畠山委員
ありがとうございました。
続けて、尾崎会長さんにお伺いいたします。
同じく消費税なんですが、中小企業などにとっても、価格への転嫁やさまざまな問題で御苦労はこの間もされてきたと思います。同じく来年のこの一〇%引き 上げに対する御所見とともに、もう一つ尾崎会長さんにお伺いしたいのは、先ほどの陳述の中で、使い勝手のいいいわば補助金、交付金のお話がありました。
それで、二〇一四年度の予算だったと思うんですが、地域住民生活等緊急支援のための交付金というのに国が二千五百億円つけまして、これはかなり自由度の 高い交付金だったと思います。それぞれで、福祉事業の方に振り向けた自治体もありましたし、住宅リフォームなどの助成に活用した例もあるというふうに伺っ ています。
このように、それぞれの地域が自由度の高い補助金、交付金の必要性は実績としてもあると思いますし、先ほど来尾崎会長さんから出されていることかと思うんですが、もう少し具体的な中身で、御要望などがあればお聞かせください。
○尾崎勝君
消費税の転嫁、これもやはり事業者によって異なってくるかと思います。ほぼほぼ、製造業あるいは建設業という形でやっておられる事業者の方で、当管内で見ても、消費税の転嫁がままならないというのはそんなに多く見受けるものではないというふうに思っています。
ただ、では、小売あるいはサービス業というか、そういうところの実態というのは、私も管内の数字をきちっと把握はでき得ていないんですが、従前の五パー になったとき、あるいはそれ以前のときほどの転嫁ができないというものではなくなってきているのではないかなという気はしています。
ただ、消費税が導入されることにおいて、経済に影響ということなんですが、どうしてもやはり駆け込みが発生し得るんですね。これは、リーマン・ショック 後の、家電製品に補助金を出すようなことから始まって、あるいはエコカー減税もそうなんですが、ここ数年来の経済の運営の中で相当先取りをしていく経済の 導きなんですね。そのときに何か潤っているようなことになるんですが、それが一巡してしまうと、需要をどんと先取りしていますので、その後の景気はどんと 落ちる。
これもある先生なりにお聞きしたことがあるんですが、いや、そのときの施策としてはやむを得なかった、そういう施策を打っていなければもっと経済は落ち込んでいたということにおいて、正当化されておられたやにそのときお話を聞いたんですが、もう少し平準化するというか。
ですから、消費税は一つの国策として、社会保障費云々ということにおいてこれはもうやむを得ない議論だろうというふうに思いますので、まだ私どもなんか は、逆に軽減税率ということの中で、少しまた方向性が変わってしまっているみたいなところは一体どうなんだろう、もともとの大義は何だったのかと。せっか く国民は痛みを享受してそこに協力しようという姿勢になっているにもかかわらず、ちょっとまたお小遣いが出ますよみたいなことを言われると、それはいただ けるものはいただきますよという話になってしまうので、何かこの辺も行ったり来たりの非常に曖昧なものになっているのではないかなというふうに思います。
先ほどの補助金に関連してですが、これは端的な内容でいいますと、要するに、どういう事業に対して補助金を出すか、ここのスクリーニングは相当厳しくし ていただいたらいいと思うんです。この事業は補助金に値するという事業に対しての補助金は、もうその補助事業者に対して全て任す。どこかに補助金を悪用す るやからがいるかもわからない、がゆえに、固定資産に置きかえてくださいと。要するに、人件費に流用というと、通常、運転資金に入れてしまう事業者もいる かもわからないし、材料費でいくと後の検証ができないということになるわけですね。ですから、実はスクリーニングのところをもっとやはり厳密にすること で、選択された事業に対しては、用途についてはもう事業者に任す。
ですから、詳しくは知りませんが、山中教授がiPS細胞を使っていろいろな事業をするということに相当な額の補助を出すわけですが、では、あれが実はま た税金として還流させるようなことになっているのかというと、あの事業自体がやはり国として推進していく事業だということにおいて、事業体の方にお任せと いうことに多分なっているのではないかと思うんですね。
ですから、例えば経済産業省なんかでいうと、予算をつけたから、その予算は全部補助金として出し尽くすということに一生懸命頑張られるんです。ですか ら、ある年度で、お電話がかかってきまして、ちょっと予算が余っているので手を挙げていただけませんか、ほぼほぼ通しますのでと。手を挙げて、後に税務当 局が来たときに、これは税金として徴収させていただきます、もういいかげんにしてくださいという。
ですから、もう少し入りのところ、ありようを変えることで、実は使途についても余り制限を構えるのではなくフリーにしていただく。要は、満遍なくやろう とするがゆえに今の制度にやはりなってしまっている。もう少し労力をかけるんだったら、入りのところでもっと労力をかけていただいて制度化していただけれ ば、もっと使いやすいものになるのではないかなというふうに思います。
以上でございます。
○畠山委員
ありがとうございました。
続いて、古川理事長さんにお伺いいたします。
商店街の活性化や人口減少に対応したまちづくりというのは、どこでも御苦労をされているというふうに思います。先ほど私は比例北海道選出と述べました が、北海道でも同様に、大型店等の出店などにより、駅前商店街などが御苦労されているという事例をたくさんお聞きもしてきました。
その中で、やはり総量規制などの話は必ず出てくるんですが、先ほど印象的だったのは、古川理事長さんのお言葉で、このままだと出店した側も地元も共倒れ になってしまうということがすごく本質を言い当てているんだろうなというふうに思いました。いわば、私風に言えば、共存共栄のための規制ということに政治 の側が知恵を発揮しなければいけないのかなというふうに思って伺いました。
改めて、この規制にかかわって、先ほど言い足りなかったこともあろうかと思いますので、もう少し御所見をお伺いしてよろしいでしょうか。
○古川康造君
ありがとうございます。
今の共倒れというお話ですけれども、実は、商店街というのは本当に社会の縮図みたいなところでありまして、基本的に、商店街の商売人の人たちは全員仲が悪いんですね。全員が商売がたきです。しかも、先祖伝来の恨みを抱えている人たちなんです。
今回私どもがやった土地の共有化というのはまさにそういう話でありまして、要は、一軒一軒自分たちの権利を一生懸命主張してこのまま座して死を待つばか りがいいのか、それとも、皆さんで共有して利益をシェアした方がいいのかということに皆さん気づいたわけであります。したがって、土地を共有して、その上 にもう一度商業を活性化させた利益を配当させようというふうな新しい町の仕組みをつくったわけであります。
まず、大型店との関係でいうと、地域経済は、今は地域の経済循環は極端に疲弊していますので、恐らくこれは表に出ていないんですね。それから、郊外店で 地域の人たちは快適にお買い物をしています。ところが、ふと気がつくと亭主の職がなくなっていたというのが地方の実体経済なんです。
このように、地方の経済循環が非常に薄れた中で、地方の人たちはどんどん利益を失っていって、郊外店でお買い物をしているうちに、ふと気がつくと亭主の 職がなくなっていた。そうするとお買い物はできなくなる、大型店も売り上げは上がらなくなる、そうすると撤退してしまうというのが大体の構図なんですね。 そのときに、出店のときにかなりの数の小売店を彼らは痛めてきましたから、撤退したときに何にも残っていないというのがまさに私どもの主張した焼き畑商業 というものでございまして、稼ぐだけ稼いで、稼ぎ代がなくなると次に移転していく。
やはり、こういう社会の構図にどこかで歯どめをきかせていかないと、明らかに人口は減っていくわけですから、一年間に食べる量も限界がありますし買う量 も限界がある中で、この有限の需要に無限の供給、売り場がついて回るなんという社会は、誰が考えてもあり得ないですね。先に待っているのはまさに破綻しか 僕たちの目には見えないわけです。
したがって、やはり、こういう社会の仕組みにどこかで歯どめをかけて、できるだけ地域で経済循環がされるような新しい社会の仕組みにつくり変えていかな いと、今までの前例はもう通用しない時代がやってきているということですね。これはまさに、人口減、高齢化社会、しかも経済マイナス成長という大地殻変動 の中で、新しい仕組みが望まれているということだと思います。
以上でございます。
○金田座長
時間が迫っていますから、どうぞ簡単に。
○畠山委員
どうもありがとうございました。
最後に、三谷社長さんに一言お伺いいたします。
TPPとかかわって食料自給率の低下などが懸念されますが、政府の試算では、国による対策で自給率は変わらないということで発表されています。
実は私、妻、酪農を営んでいたところの娘と結婚いたしまして、酪農家の苦労を目にしてきた者として、先ほどの三谷社長さんの話は胸を痛めながら伺わせていただきました。
酪農家の一つの経験として、ガット・ウルグアイ・ラウンドのときがあるかと思います。一九八〇年に社長さんは入社されたというふうに経歴で拝見いたしま したが、当時も、国の政策として、規模の集約ですとか、今と通ずるような中身があったかと思います。しかし、あのときも同じように自給率は低下をいたしま した。
当時と比べて今回のTPPをどのように考えて、我が党としてはTPPについて反対の立場をずっととってきたんですが、当時と比べての御所見があれば、お伺いしたいと思います。
○三谷廣君
TPPは非常にいろいろな意見があると思います。これはどちらから見るかによって大きく違うんですが、私から見ますと、まず、 この中にアメリカや日本が入ってきたことそのものが間違っておるんですけれども、今さらそれを言ってもしようがないから、では、一番影響力を持っているの はどこだろうということは、アメリカでしょう。
アメリカのカーギルという世界最大の穀物商社があります。ここへ、二十数年前から、ある縁があって私は出入りすることができております。非常にプライ ベートな会社ゆえ、なかなか情報を出さないんですけれども、そこは基本的に、TPPに賛成ではないんです。世界最大の穀物商社が賛成ではないんです。彼ら は、穀物は穀物としてやはり大事にしたいんです。エタノールなんかにしたくないんです、本当は。だけれども、前の大統領がそれを決めてしまったからしよう がないですね。
そういうことで、本当は日本とアメリカというのはうまくいけるはずだったんだけれども、実はそこに、どうしてもこれを売らなきゃやっていけないという国 が出てきたんですね、ニュージーランド。このニュージーランドという国は、人口が少なくて内需がない。これは、サウジアラビアその他の油屋さんと一緒で す。自分のところでも使用ができない、輸出しかできないという国です。
ところが、アメリカのカーギルという会社は、世界じゅうにネットワークを持っております。その会社いわく、穀物というのはTPPというものにのせたらい かぬと。これはなぜかというと、自由というのは、その国が自主的に意思で決めて、そして、これはやろう、これはやったらいかぬといって、いいものを出して くる。それで、国同士が自由であって初めて成立するので、ある団体とかあるいは政治団体とかその他が無理やり強制的に決めるものではないというふうに、今 の会長は言っております。これは新しいニュースでございます。
そんな中で、先ほど言ったように、中西部で水が枯渇しようとしております。御存じのとおり、ちょっと西の方にはオガララ水系といって、アメリカに日本に 近いぐらいの地底湖があります。その東側の大穀倉地帯には水が豊富だと言っていたんです。それが枯渇しているというのがきのうの朝の話なんです。したがっ て、これは穀物が、今、三ドル六十セントとか八十セントとかいうトウモロコシがどういう価格にはね上がるかわかりません。そうなったら、これはTPPその ものも大変な状況になって、そんな簡単な話ではおさまらないと思います。
これは私、何度も言いますけれども、ウルグアイ・ラウンドはいいんです。ドーハ・ラウンドは困るんです。その中で、皆さん御存じのとおりTPPに含まれ ていますよ。だけれども、黙って言わないですよね。農家に対する補助は徐々に減らして最後ゼロにしましょうというのが含まれておることをなぜ言わないか。 だから、私はTPPは嫌いなんです。
以上です。
○畠山委員
貴重な御意見をありがとうございました。終わります。

第190回国会 予算委員会 第4号     平成二十八年一月十三日

○畠山委員
日本共産党の畠山和也です。
TPPが日本に何をもたらすかについて質問いたします。
政府はTPPが決まったかのように補正予算や対策などなどをこの間述べてきていますが、まだ最終文書もサインされていませんし、国会での批准もまだまだです。アメリカでも、次期大統領候補からは反対や慎重の声が相次いでいます。
日本共産党は、全国各地で農家や農業関係者との懇談や調査を行ってきました。どこでも共通していたのは、TPPへの不安とともに、安倍政権の農政に対する不満です。
資料をごらんください。
ことし一月四日の日本農業新聞によれば、JA組合長へのアンケート結果で、TPPの国会決議が守られていないと答えた組合長は九二%に及んでいます。多くの農家も同じ気持ちでしょう。
そこで、まず総理に伺います。
これだけ農業関係者から、国会決議が守られていない、このように突きつけられて、総理はどう答えますか。
〔委員長退席、平沢委員長代理着席〕
○安倍内閣総理大臣
このアンケートについては、我々がまとめました総合的なTPP関連政策大綱をお示しする大分前からアンケートをとり始めていたわけでございまして、十分に反映されていない、こう考えております。
我々はしっかりと農業者の皆様に御説明をし、再生産が十分に可能である、安心して再生産に取り組むことができるように、我々もしっかりと説明を全国で展開していきたい、こう考えているところでございます。
○畠山委員
政策大綱、対策や補正予算をまとめれば決議を守れたというふうに言うんでしょうか。つまり、対策や予算がなければ守れていないということの告白じゃないですか。
もう一つ、資料をごらんください。
農産物の関税撤廃ですが、全体で八割にとどめたと言いますが、八割、千八百八十五品目に及びます。米、麦など重要五品目は決議で引き続き再生産可能とな るよう除外または再協議の対象とすることとしていたにもかかわらず、うち約三割もの品目は関税撤廃です。トマト、カボチャ、キャベツなどは即時撤廃、タマ ネギ、サツマイモなどは最大で十一年かけて、全ての野菜が関税ゼロとなります。果実、果汁も同様です。
その上、協定の第二章第四条には、関税撤廃の品目について前倒しして議論すると定められています。米国や豪州など五カ国とは七年目の再協議も規定されています。どんどん輸入がふえるのは明らかではないでしょうか。
そこで、きょう私がまず問いたいのは、食料自給率がどうなるかです。これまでも、農産物の輸入の増加に合わせて食料自給率は下がってきました。
総理、確認しますが、今の日本の食料自給率は御存じですね。
○安倍内閣総理大臣
我が国の食料自給率は、平成二十六年度において、カロリーベースで三九%、金額ベースで六四%となっております。
○畠山委員
今答弁がありましたように、三九%です。つまり、約六割は外国に食料を依存しているというのが日本の現実です。その結果、日本の農産物輸入がどのような状況に置かれているか、総理は知っているでしょうか。
世界人口比の一・八%である日本が、小麦でいえば全世界の輸入量の三・七%、トウモロコシでは一二・六%を輸入しています。配付資料にまとめています。 その結果、サウジアラビアやエジプトなどのアフリカ諸国や、人口が最も多い中国を抑えて、日本は穀物輸入量で堂々の世界一です。これこそ爆買いです。
総理、これは異常な状況だと思いませんか。総理の認識。
○森山国務大臣
お答えをいたします。
委員御承知のとおり、穀物輸入の中で一番多いのはトウモロコシでございます。これが千百四十万トンでございます。飼料の関係がありますので、飼料として の穀物の輸入が多いということが典型的ではないかと思っております。あと、もう少し小麦の輸入ももちろんありますので、これについても、今後もしっかりし た対応をしていくということは大事なことだと思っております。
○畠山委員
この状況を異常と思わないかと、私は総理の認識を聞いたんです。TPPでさまざまな経済効果については誇らしげにいつも言うけれども、この自給率の状況を異常だと思わないか。TPPでその悪化がさらに進むと懸念されているのに、総理から聞いたことは私はないんですよ。
食料自給率のこの状況、現状を異常だと思いませんか。
○安倍内閣総理大臣
私は、食料自給率、食料の安定供給を将来にわたって確保していくことは、国民に対する国家の最も基本的な責務であり、国内農業生産の増大を図って食料自給率を向上させていくことが重要であると考えています。
このため、安倍内閣では、昨年三月に閣議決定した食料・農業・農村基本計画において、農業の成長産業化を実現するための多様な施策を講じることによって 食料自給率を引き上げ、平成三十七年度において、カロリーベースでは四五%、金額ベースでは七三%とする目標を設定したところであります。
なお、今般の基本計画においては、食料安全保障の議論を深める観点から、国内の農地を最大限活用した場合にどこまで供給できるかをあらわす食料自給力指 標を新たに示しております。この指標は、食用とならない花やカロリーの少ない野菜のかわりに米や芋類を作付した場合に得られる供給可能なカロリーを、栄養 バランスも考慮した複数のパターンに分けて示しています。この数値の方が、食料の安全保障という観点からは、より正しい実態を示す数値になるのではないか と思います。
これは、一定の仮定を置いて試算したものであることから自給率のように目標とすることにはなじみませんが、我が国の食料の潜在生産能力を示すものとして、食料自給率とあわせてその向上を図っていくことが重要であると考えております。
○畠山委員
今、私は、食料自給力の話は聞いていないんですよ。TPPとなれば、食料輸入がさらに進んで自給率が下がることになるんじゃないかという不安が全国各地から聞かれているわけです。
これまで日本がFTA、EPAを結んだ国々のうち、二〇一二年の日本の農林水産物輸入額上位五カ国を調べました。配付資料にあります。フィリピンもチリ もマレーシアも、フィリピンでいえば二倍、チリでいえば二・五倍、マレーシアでいえば三・九倍も日本は輸入額がふえています。それ以外の国々も調べました けれども、同じ傾向にあります。
今回は、TPPで、豪州、ニュージーランド、そしてアメリカなどの農業大国が加わるわけです。これまで以上に農産物輸入がふえるのは火を見るより明らかではありませんか。
それでも総理は、先ほど言った自給率目標四五%を上げられると胸を張って言えるんですか。本気で食料自給率を上げるんだったら、このような歯どめなき農産物輸入の拡大を見直すべきではないんですか。どうやって上げるというんですか。答弁してください。
○森山国務大臣
お答えいたします。
先生のお示しいただいている資料でございますけれども、この数字の中には、酒、たばこのような農林水産省所管物以外である貿易額の多いものも含まれております。そしてまた、林産物が除かれているといった問題がございます。
加えて、輸入額を二〇〇二年と二〇一二年で比較していただいているわけでありますけれども、たしか二〇〇二年は対ドルの為替のところは百二十五円ぐらい だったのではないかと思います。二〇一二年はたしか七十九円台だったのではないかと思いますので、為替のこともこれには影響しているというふうに考えてお りまして、過去に締結したEPAの国内農林水産業への影響について、EPA締結後、輸入額の変化は増減さまざまでありますけれども、輸出国の関係や為替 レートの関係も考えられることから、現段階で確たる評価を行うということは困難ではないかというふうに理解をしております。
○畠山委員
そんな逃げの答弁でいいんですか。だって、貿易の自由化がFTAそしてこのTPPでしょう、輸入額がふえるのは当たり前じゃないですか。ウルグアイ・ラウンドの後の四年間でも食料自給率は六%下がった、その事実を何と説明するんですか。
ウルグアイ・ラウンドの対策大綱をもう一度読みましたよ。担い手への農地利用の集積とか、農産物の付加価値向上とか、スケールメリットを生かした畑作経 営の展開とか、今と同じじゃないですか。これらの対策を講じても食料自給率が下がった事実を正面から受けとめるべきです。
対策をとるから大丈夫というのであるならば、それはそもそもTPPでは食料自給率が下がるということの証明じゃないですか。しかも、今回は、過去に例の ないほどの関税撤廃と削減です。自給率を上げるというなら、日本共産党はこの間TPPからの撤退を求めてきましたが、引き続き要求していきたいと思いま す。
話を次に進めます。
TPP対策として政府が掲げているのは農業の成長産業化です。攻めの農業です。政策大綱では、農家の体質強化対策をとって外国にも売れるようにする、そ うすれば農家も所得がふえるかのように言って、今、農林水産物、食品の輸出額一兆円を目標にしていますが、前倒しをするとしています。しかし、その中身は よく見る必要があると思います。
農水省が農林水産物・食品の国別・品目別輸出戦略において目標一兆円を掲げていますが、そのうち多い方、上位三項目は何で、金額は何か。農水大臣、御答弁ください。
○森山国務大臣
平成二十五年度に策定をいたしました国別・品目別輸出戦略、これは二〇二〇年に輸出額一兆円を目標にしているわけでありま すけれども、水産物を除く上位三項目はそれぞれ加工食品であります。一番は、みそ、しょうゆ等の調味料であります。二番は、飲料水、菓子類であります。三 番は、健康食品、レトルト食品、その他加工品でございます。それが一番から三番まででございます。
○畠山委員
今述べたように、清涼飲料水とか健康食品とか、加工品ばかりですよね。菓子類も、中身を見たら、煎餅じゃなくてチョコレートと かキャンディーですよ。みそやしょうゆといっても、今、日本の大豆の自給率は何%ですか。七%でしょう。一体どこに日本の農産物を用いて海外に輸出して、 利益を上げるというふうになるか。それなのに、政府は、昨年は輸出七千億円まで到達しそうだと誇っています。
では、聞きます。
それでは、今度は、純然たる農産物と言えるような米とか牛肉とか青果物、お茶などなどでは、どれくらいの金額が実績なんですか。
○森山国務大臣
重点品目のうち、平成二十七年の一月から十一月までの累計で、多い順に申し上げますと、青果物が百八十六億円でございまし て、前年同期比四一・六%の増加でございます。次が、米、米加工品が百八十一億円でございます。あと牛肉が九十六億円でございます。緑茶が九十億円でござ います。花卉が六十八億円の順番になっております。
先生のお地元であります十勝の川西農協を中心にやっておられます長芋の輸出も随分伸びてきておりまして、二十二億円ぐらいになっていると思います。
○畠山委員
川西長芋のことを宣伝されて結構ですけれども、そのことは聞いていないんです。
それで、今言われたものとか全部足しますと、六百二十一億円なんですね。六千六百九十億円まで来ていると言っているうちの、わずか九・二八%です。一割にも満たない。
輸出一兆円といって、国産農産物を使った食品で占めるんだったらまだ話はわかりますよ。だけれども、今言ったように、純然たる日本の農産物では結局一割 にも満たないというのがこの間の実績じゃないですか。輸出一兆円ということで、それで全ての農家の所得がふえるかのようなことは幻想じゃないですか。
所得を上げるというんだったら、私たちはずっと言ってきましたよ、生産費を補うような補償をするのが一番です。今、農家が何に苦しんでいるんですか。こ れまでの農政のもとで、安い農産物の輸入が拡大して、国産農産物の価格も下がり、生産費も賄えなくなったことでしょう。またTPPで同じことを繰り返すん ですか。
これは、政府が発表した経済効果分析でもこう書いています。関税削減等の影響で価格低下による生産額の減少が生じると認めているじゃないですか。その結果、過小評価だと私は思うけれども、農林水産物は約一千三百億円から二千百億円の減少ときちんと書いていますよ。
それで、さっきの輸出目標一兆円のうち純然たる国内農産物にかかわっては、結局、一割なら一兆円でも一千億円ですよ。一千三百億から二千百億円減少が出るというのと比較したら、生産額の減少分さえ輸出で賄えないじゃないですか。どういうことですか、これ。
○森山国務大臣
先生、加工食品につきましても、データを見ますと、大体原料の七割ぐらいが国産品を使っておりますので、それが全て違うという理屈にはならないのだろうというふうに思っております。
また、加工食品で六次加工をするということは地域の雇用にも影響することでございますから、これはさらに進めさせていただかなければいけないなというふうに思っております。
今後も、政策大綱に示してありますように、体質強化対策を集中的に講じさせていただきまして、生産コストの低減や品質向上を図るということによって、輸 入品との差別化をしっかり図って、収益性の向上を図る等々の政策をしっかり進めさせていただくことが大事だと思っております。
一兆円の目標についても、それはいろいろ考え方はあると思いますけれども、先日、実はシンガポールに国会のお許しをいただきまして出張させていただきま したが、そこの百貨店では、鹿児島県のサツマイモを原料とした煎餅とか、そういうものも売られておりまして、いろいろな分野で輸出食品というのは広がって いるんだなというふうに思いますので、目標達成に向かって努力をするということが大事だと思っています。
〔平沢委員長代理退席、委員長着席〕
○畠山委員
加工の七割は国産とか言いますけれども、私は全部の品目を調べましたよ、清涼飲料水とか菓子類とか。さっき言ったじゃないですか。先ほど言ったように、生産額の千三百億円から二千百億円の減少が出る、それでも純然たる国内農産物で賄えないというのは数字が示しています。
そして、減少額自体も、私は見込み自体が過小評価だと思いますよ。その過小評価でさえ、減少分は輸出で賄えないと。TPPで輸出で稼いで農家に生き残れというようなことを言ってきて、でも本当に生き残れるかと、農家はみんなそれを言っているわけじゃないですか。
総理、今私が数字で示した政府の試算からも、そんなことは言えないじゃないか、農家はそう言っているわけですよ。どう答えますか。
○安倍内閣総理大臣
TPPにつきましては、農林水産品について、国会決議を後ろ盾といたしまして各国と厳しく交渉した結果、重要五品目を 中心に、国家貿易制度の堅持、既存の関税割り当て品目の枠外税率の維持、そして関税割り当てやセーフガードの創設、関税削減期間を長期とするなどの有効な 措置を認めさせたわけでございます。
また、先ほど申し上げましたように、総合的なTPP関連政策大綱をお示ししているわけでありまして、しっかりと農業の再生産に取り組んでいきたい、こう思っているわけでございます。
また、輸出の一兆円につきましては、いわばこの三年間、連続で過去最高を記録して七千億円まで到達したわけでありまして、一兆円は前倒して達成できそうな状況であります。
確かに、中身について今いろいろ御指摘がございました。しかし、その中におきましても、いわばこの分野においても徐々に成果は出てきているわけでありま して、しっかりとしたルール、ルートをまたつくっていく、そしてみんなが意欲を持っていけば、これが大きくふえていくという可能性も十分にあるんだろう。
今、まだその意欲が高まり始めたばかりでございますし、実際にこのTPPが動いて新しい経済圏の中で日本の作物がさまざまな関税障壁がなくなって輸出で きるという状況にはなっていないわけでありますから、そういう中においてしっかりとそうしたものもさらに成果を上げていきたい、こう考えているところでご ざいます。
○畠山委員
そういう話をすればするほど農家の不安が広がっていると今言ったばかりじゃないですか。価格の低下でどれだけ農家が不安に思っているか、わからないんですか。
全国一の生乳生産量を誇る北海道別海町へ調査に行きました。酪農が基幹産業の町で、人口の四割が第一次産業に従事している町です。大規模農家や法人経営もありますけれども、主体は数十頭規模の家族経営です。町も、町営の研修牧場を持っているわけです。
こうした努力で年間三、四戸が就農しても、年間二十戸の離農のペースに追いつかず、六十頭を飼育している農家は、現在の乳価の水準なら夫婦二人の暮らし が成り立つが、五円下がれば生活費がそっくり失われると話して、そして町からも、いつ離農かと待機している農家が百戸いる、離農が波を打って押し寄せると 話しています。
このような、現実に全く向き合わないTPP推進の姿勢を改めて強く批判して、私の質問を終わります。